12 / 17
本社
しおりを挟む
橋口は当初の予定通り1か月だけ支社で働き、本社に戻った。
親の会社に移るのは未定らしい。
「あ~あ目の保養が…。」
「橋口君カムバーック。」
皆好きなことを言っていた。
「本条さんに仕事振ってもいづれは橋口君家の会社に移るんでしょう?」
この頃、私は社内でも腫れ物扱いされていた。サクサクと案件をこなす橋口と比べて、私は通常通り仕事をしていた。
橋口は是が非でも私と結婚すると言って私に親の会社のパンフレットを渡してきた。
私はここの職場が好きだ。橋口も好きだ。そのどちらも選べなかった。
この頃から足谷は私の体調を気にかけるようになった。
「何ていうか本条、青白くなったんだよなぁ…。」
そう言って顔を覗き込む。私は足谷の心配をよそに地道に仕事をこなした。
しかし、それは唐突にやってきた。
お腹が痛い…。私は脂汗をかきながら早退願いを出した。会社を出ようとすると歩けないほど辛い。すると足谷が救急車を呼んだ。
それから先のことはよく覚えていない。
「子宮筋腫…ですか…。」
病院に着くとストレッチャーに乗せられエコーを見せられた。
「だいたい皆さん良性のものですから大丈夫だと思いますよ。」
「妊娠かと思ってたよ。」
足谷は診察を終えた私と話をした。
「橋口君家の会社にもう移ったらどうだ?」
「足谷先輩…。珍しいですね、個人の話に関わってくるって。」
「まあお前が新人の頃から見てきたからな。」
足谷は車椅子に乗せられた私の顔を覗き込む。
日頃の疲れもあったのだろうと医師から点滴を受けて帰るよう言われたので左手には点滴をしていた。
「嫌がらせはないけど橋口君が戻ってからやっぱり本条、調子悪そうだと思うんだけど。」
「足谷先輩…。」
「俺じゃ話しづらいことなら言わなくても良いんだぞ。」
「私で良いのかなぁって思うんです。」
「本条…。」
「橋口君は私を大事にしてくれます。でも不安なんです。私、年上だし、嫌味もいっぱい言ってきたし可愛げないし…。でもそれが私って言うか。」
「本条、少し落ち着こう。」
私は泣いていた。
「私も橋口君と同じなんです。人を好きになるって初めてなんです。分からないんです。どうこの気持ちと向き合ったら良いのか。」
「本条…紙に書くか?結構楽になるぞ。」
足谷はカバンからノートとペンを取り出して私に渡した。
私はそこに今まで溜め込んでいた橋口との不安を書き連ねていった。
そうして点滴を終えて家へと帰った。
親の会社に移るのは未定らしい。
「あ~あ目の保養が…。」
「橋口君カムバーック。」
皆好きなことを言っていた。
「本条さんに仕事振ってもいづれは橋口君家の会社に移るんでしょう?」
この頃、私は社内でも腫れ物扱いされていた。サクサクと案件をこなす橋口と比べて、私は通常通り仕事をしていた。
橋口は是が非でも私と結婚すると言って私に親の会社のパンフレットを渡してきた。
私はここの職場が好きだ。橋口も好きだ。そのどちらも選べなかった。
この頃から足谷は私の体調を気にかけるようになった。
「何ていうか本条、青白くなったんだよなぁ…。」
そう言って顔を覗き込む。私は足谷の心配をよそに地道に仕事をこなした。
しかし、それは唐突にやってきた。
お腹が痛い…。私は脂汗をかきながら早退願いを出した。会社を出ようとすると歩けないほど辛い。すると足谷が救急車を呼んだ。
それから先のことはよく覚えていない。
「子宮筋腫…ですか…。」
病院に着くとストレッチャーに乗せられエコーを見せられた。
「だいたい皆さん良性のものですから大丈夫だと思いますよ。」
「妊娠かと思ってたよ。」
足谷は診察を終えた私と話をした。
「橋口君家の会社にもう移ったらどうだ?」
「足谷先輩…。珍しいですね、個人の話に関わってくるって。」
「まあお前が新人の頃から見てきたからな。」
足谷は車椅子に乗せられた私の顔を覗き込む。
日頃の疲れもあったのだろうと医師から点滴を受けて帰るよう言われたので左手には点滴をしていた。
「嫌がらせはないけど橋口君が戻ってからやっぱり本条、調子悪そうだと思うんだけど。」
「足谷先輩…。」
「俺じゃ話しづらいことなら言わなくても良いんだぞ。」
「私で良いのかなぁって思うんです。」
「本条…。」
「橋口君は私を大事にしてくれます。でも不安なんです。私、年上だし、嫌味もいっぱい言ってきたし可愛げないし…。でもそれが私って言うか。」
「本条、少し落ち着こう。」
私は泣いていた。
「私も橋口君と同じなんです。人を好きになるって初めてなんです。分からないんです。どうこの気持ちと向き合ったら良いのか。」
「本条…紙に書くか?結構楽になるぞ。」
足谷はカバンからノートとペンを取り出して私に渡した。
私はそこに今まで溜め込んでいた橋口との不安を書き連ねていった。
そうして点滴を終えて家へと帰った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
出向先は恋の温泉地
wan
恋愛
大手の総合レジャー企業。
冴えない主人公は日々先輩から罵られていて毎日心ない言葉を浴びせられていた。
態度悪い人はともかく、そうでないのに悪態をつけられる。憂鬱で、居場所がなく、自ら距離を置いてるが孤独で、味方もいなくて、働きづらくて常にHPが削られていく。
ある日、上司から出向(左遷)されるがしかも苦手な先輩と一緒。地獄へ行くような気分だった。
そこで1人の女性社員と出会う。暖かい眼差しと声に誘われ、一緒に仕事をすることになる。
そこで2人はどんどんひかれ合うのですが、先輩は雲行きが怪しくなり、、、。
飛ばされても、罵られても、サラリーマンとして働く主人公とヒロインとの出会い。ほのぼのしたお話を書いてみたく連載しました。
彼への応援をよろしくお願いします。
営業やイベント企画など私にとって未経験のものですが、何とかイメージして書いていきます。至らない点も多いかと思いますが、読んで楽しめていただければ幸いです。
何か感じたこと、こうしたらいいのでは?何かありましたらコメントよろしくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる