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戦い

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橋口と結婚することになって私はドンドン萎縮していった。
この日は橋口の両親と私が会う日だった。
珍しくピンヒールを履いた私を橋口がまじまじと見つめる。
「何よ。どこかおかしいかしら?」
私はいつものように話した。橋口はニコニコしながら私と手を繋ぐ。
なんだか指輪が手枷のように重たかった。

レストランに着くと橋口の両親が既に待っていた。両家の顔合わせではなかったのでうちの母はいない。
橋口のご両親はたいそうな大学を出ている上にそのご実家も有名な企業だった。
私はいつものように会計を勘定する。
「本条さんって本当に可愛らしい人ね。」
そう言って橋口のお母様は微笑む。
金持ちの上に頭良くて性格も良いんだな、と私は思った。
一方で橋口はソワソワしていた。
「道景。一回りも違う女性をなぜ選んだ?」
「お父さん、それは…。」
「善子さんは仕事も出来て部下のサポートも優しくて更にこんな可愛らしい容姿なんです。」
橋口は話す。
「橋口君のお父様、気を悪くされたら申し訳ないです。私のような行かず後家の女にはもったいないお話で…。」
「本条さん、私は息子と話しているんです。」
まさかのスパルタ父だったか…私は地雷をひとつ踏んだ。
「会社を背負っていくのは僕です。ならばビジネスパートナーになれる善子さんのような人のほうが頼りになります。」
そう言って橋口は私の実績をどこで調べたのかつらつらと話した。
「ライバル企業からうちに変わってくれるんですかね?」
「それは…その。」
「茶番だな…。帰らせて貰いますよ。」
「お父さん!!善子さんは一緒にいると本当に楽しい女性なんです。一緒にいれば分かります。」
「なら、うちの会社に引き抜いて来るんだな。話はそれからだ。」
私はこの時、ぼんやりと皆がお祝いしてくれたあの日を思い出しながら、うっすら泣いていた。何もかもそんな簡単に上手くいくわけないんだ。そう思って橋口の後ろを歩いた。
その時、橋口に抱きしめられた。
「部屋…行っていいですか?」
私は少し嫌な予感がした。しかし橋口のオーラから断ることはできなかった。
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