【完結】紡ぎ事〜第二章〜

間違い

橋口とご飯に行った翌日、私は自宅のソファで目を覚ました。
身体が痛い。
するとベッドから橋口が起き上がった。
「えええー！！」
「おはようございます。本条先輩。」
「どういう事？！」
「あーやっぱり覚えてないんですね。からみ酒ですよ。からみ酒。」
橋口は淡々と昨日の夜の話をした。
一軒目のバーでテキーラを飲めるかと言う話しになり私は橋口に負けじとテキーラを煽った。
そして二軒目、三軒目と居酒屋をはしごして橋口を自宅に招き入れた。
「今日休みで良かったですよ。」
橋口はうっすら生えた髭を触りながらあくびをした。
「本条先輩、同棲しません？」
「はい？！」
「だって家事とか全然出来てないんですから。」
私はシンクを見て溜まっていた洗い物が片付いているのを確認した。
橋口よ、なぜお前はそんなにレベルが高い男子なのにこんな底辺御局を口説くのだい？
私はそう言いたかったが自分で自分を底辺と言ったら本当にそんな気がしてくる。
「シャワー借りたいんですけど。」
「あぁちょっと待ってね。」
私は浴室乾燥にかけていた衣服を取り込んだ。
「着替えは…。」
「あぁ、帰って着替えますよ。」
そう言って橋口はシャワーを浴びた。
私は崩れた化粧を落とし部屋着になった。
「本条…。」
それを見た橋口はこう言った。
「すっぴんだと大学生みたいですね。ハハッ。」
私は今日、橋口と新聞に載るのかもしれない。そう思った。
「しみもシワもないんですね。」
あるよ…でも言わないよ。私はそう思った。
「スーパー近いんですよね？僕適当に買ってきますから二千円ください。」
「スーパーって？」
「昨日、近所にスーパーまるまるがあるって言ったじゃないですか？」
思い出せ、昨日の自分。
「あ、僕、自分の分は自分で持ちますよ。」
橋口ってこんな人だったっけ？私は不思議だった。
「昨日は大変でしたからね。本条先輩吐きまくるし。ハハッ。」
「え？」
「トイレ掃除もしましたよ。」
「ええ！！」
「じゃあ僕買い物行くんでその間にシャワー浴びてください。」
ここまでが私の夢だ。そう言えたらどれだけ楽だっただろうか。私は財布から二千円を取り出して橋口に渡した。
間違いだ。きっと間違いだ。
そう思いながらシャワーを浴びた。