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告白
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人生は戦いだ。
無論、助け合いなどない。
なら、私はなぜここにいるのだろう。
本条善子、三十代後半。
今年は3人の新人を受け持った。社会に出ると1年1年出会う新人がどんどん宇宙人になっていく。
「メンタル崩壊しました。帰ります。」
ちょっと待て。そう言おうとして私は我に返る。
「ええと、三田さんはこういう作業は向いてないってことかしら?」
「向いてないって言うかぁ、意味不明って言うかぁ…。」
私はこちとら給料払ってんねん。そう言いかけてやめた。
この年も新人研修を受け持ったが、やはり橋口は別格だったな。今もそう思う。
橋口は有能ぶりが認められて本社に異動となった。みかちゃんは最後まで橋口にしがみついていた。
私は胸がキュッと締め付けられる想いで橋口を見送った。
「本条先輩。」
私は聞き覚えのある声がして顔を上げた。
「全然変わってないですね。」
「橋口~、相変わらずのイケメンだな~。」
ええい黙れ、足谷。
「どうしたの?左遷?」
「相変わらず、口の悪さも変わってないんですね。」
先手必勝だ…。
「今日、食事に行きませんか?話したいことがあるんですよね。」
「まあ良いけど。みかちゃんも呼ぶ?」
「ふたりが良いんです。」
「まあ本社の愚痴なら聞くわよ。」
そう言って私達は別れた。
「橋口君戻ってきたんですかぁ~。」
「みかちゃん貴女は既婚者よ。」
「分かってますよぅ~。」
「だいぶストレスが溜まってるんでしょうね。私に愚痴を吐きたいなんて。」
「え、でもさっき話したいことがあるって言ってましたよねぇ…。愚痴なんですか?」
「それ以外に何があるの?」
「まあ無いですね。」
みかちゃんは2年前取引先の好青年に告白され結婚を前提にお付き合いを進め、入籍を果たした。結婚式は今年行う。
「それよりみかちゃん。手が止まってるわよ。」
「やだぁ~本条先輩厳しいなぁ~。」
「フフっ、無駄に年取ってないわよ。」
私達はいつも通り仕事して職場をあとにした。
橋口はホテルのレストランを予約していた。ええい相変わらずのお坊ちゃんめ。
私はそう思った。
「本条先輩。」
橋口がじっと私を見つめる。
随分、大変な現場なのかな、私はそう思った。
「結婚しませんか?僕と?」
「はーーーーーーーーー?」
私は一小節は唱えた。
「冗談も得意になったのねぇ。」
私は余裕綽々に話した。
「違うんです。今年までに結婚しないと親の決めた相手と結婚しないといけないんです。友達に相談したら今まで出会った女性の中で一番自分を出せる人と結婚したほうが良いって言われて…。」
橋口は指輪も用意していた。
どうやって調べたのだろう。サイズはピッタリだ。
「僕と結婚してください!!」
橋口の声に周囲のテーブルから拍手が起こった。
私は今日、夢を見てるんだな、そう思って、家に帰った。
無論、助け合いなどない。
なら、私はなぜここにいるのだろう。
本条善子、三十代後半。
今年は3人の新人を受け持った。社会に出ると1年1年出会う新人がどんどん宇宙人になっていく。
「メンタル崩壊しました。帰ります。」
ちょっと待て。そう言おうとして私は我に返る。
「ええと、三田さんはこういう作業は向いてないってことかしら?」
「向いてないって言うかぁ、意味不明って言うかぁ…。」
私はこちとら給料払ってんねん。そう言いかけてやめた。
この年も新人研修を受け持ったが、やはり橋口は別格だったな。今もそう思う。
橋口は有能ぶりが認められて本社に異動となった。みかちゃんは最後まで橋口にしがみついていた。
私は胸がキュッと締め付けられる想いで橋口を見送った。
「本条先輩。」
私は聞き覚えのある声がして顔を上げた。
「全然変わってないですね。」
「橋口~、相変わらずのイケメンだな~。」
ええい黙れ、足谷。
「どうしたの?左遷?」
「相変わらず、口の悪さも変わってないんですね。」
先手必勝だ…。
「今日、食事に行きませんか?話したいことがあるんですよね。」
「まあ良いけど。みかちゃんも呼ぶ?」
「ふたりが良いんです。」
「まあ本社の愚痴なら聞くわよ。」
そう言って私達は別れた。
「橋口君戻ってきたんですかぁ~。」
「みかちゃん貴女は既婚者よ。」
「分かってますよぅ~。」
「だいぶストレスが溜まってるんでしょうね。私に愚痴を吐きたいなんて。」
「え、でもさっき話したいことがあるって言ってましたよねぇ…。愚痴なんですか?」
「それ以外に何があるの?」
「まあ無いですね。」
みかちゃんは2年前取引先の好青年に告白され結婚を前提にお付き合いを進め、入籍を果たした。結婚式は今年行う。
「それよりみかちゃん。手が止まってるわよ。」
「やだぁ~本条先輩厳しいなぁ~。」
「フフっ、無駄に年取ってないわよ。」
私達はいつも通り仕事して職場をあとにした。
橋口はホテルのレストランを予約していた。ええい相変わらずのお坊ちゃんめ。
私はそう思った。
「本条先輩。」
橋口がじっと私を見つめる。
随分、大変な現場なのかな、私はそう思った。
「結婚しませんか?僕と?」
「はーーーーーーーーー?」
私は一小節は唱えた。
「冗談も得意になったのねぇ。」
私は余裕綽々に話した。
「違うんです。今年までに結婚しないと親の決めた相手と結婚しないといけないんです。友達に相談したら今まで出会った女性の中で一番自分を出せる人と結婚したほうが良いって言われて…。」
橋口は指輪も用意していた。
どうやって調べたのだろう。サイズはピッタリだ。
「僕と結婚してください!!」
橋口の声に周囲のテーブルから拍手が起こった。
私は今日、夢を見てるんだな、そう思って、家に帰った。
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