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25人の妖精〜第九章〜
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「旦那様、すず、お願いがあるの。」
「どうしたんですか一体?」
東京の旦那様の家ではすずちゃんが旦那様と話していた。
「すず、ワンピースとかプリーツスカートが欲しいの。今度陽平君に会う時、それを着ていきたいの。」
「では、私が仕立てましょう。色は何色が良いですか?」
「ありがとうございます、旦那様!!」
「たっ、ちぃばっなぁー!!」
陽平君は書庫室からの帰り、藤崎と藍原に遭遇した。
「ふたりでどうしたの?」
「それがさ、聞いてくれよ。長官の盛喜多さんがさぁ、ずーっと自分語りしてくるんだよ。」
「本当になぁ。」
「13人兄妹の8番目だとかサマンサがあれば生きていけるとか毎回同じ話すんの。」
「へー大変だねぇ。」
「橘はそういうのは大丈夫なのか?」
「うちの部署は鏑木さんくらいかなぁ…。」
「うちの部署の鏑木です。」
「うわっ!!」
陽平君は驚いて書類を落とした。バサバサと書類が宙に舞う。
「田所さんになんの書類を持って来いって言われたんだか…?」
「新年の御唱和に関してです。」
「そんなの見なくても田所さんは御唱和分かってるんだけどなぁ…。」
「僕たち、新人に読むようにって。」
「橘は御唱和に出るのか?」
「神様側近だなぁ…。」
ふたりはため息をつく。
「ところで鏑木さんは何故ここに?」
その瞬間、鏑木さんはピュンと陽平君の後ろに隠れた。
「誰か鏑木さん見ませんでしたかー?」
汗をかきながら田所さんは叫ぶ。
「いいえ見てません。」
鏑木さんは陽平君の声で話す。
「あんの、クソじじい…。」
そう言って田所さんは走っていった。
「何したんです?」
「田所さん家の唐揚げ弁当は弁当屋より美味しい…。」
そうして鏑木さんは楊枝を使い始めた。
「素直に謝ったほうが良いですよ…。」
陽平君は優しい口調で諭す。
「流石に2回目、3回目でもないしなぁ…。」
「いたー!!」
「しまった!!見つかったか!!」
「クソじじいー!!今度こそ捕まえますからねー!!」
そうして鏑木さんはピュンピュンと走り去っていった。
「今日から流鏑馬の練習に入るわけだが、まずは弓を引くことから始める。足は肩幅程度に開いて背筋を伸ばす。息を吐きながら弓矢を引いて目標より高い位置から矢を放つ。いけるか?」
「はい!!やってみます!!」
鹿児島中央の神社では学さんが、新人の流鏑馬指導を始めていた。新人の3人は陽平君ほどではないがそこそこ出来る子達だった。
学さんは今でも時々、魔界の住人相手に泣きながら弓を引きに出て来た陽平君を思い出す。稽古を積んだとはいえ初陣に出るにはあまりに早い歳月だっただろう。今でも胸が痛い。
「向こうまで届かない。」
「弓が引けない…。」
3人は悪戦苦闘しながら弓を引き続ける。
「まあ1年で覚えればいいよ。」
そう言って学さんは笑った。
陽平君が天界警察神官護衛課に戻ると田所さんがサンドウィッチを食べながら鏑木さんに縄をつけて仕事していた。
「毎週水曜日は唐揚げデー…。嫁も学習しないな。」
「今度食べたら丸刈りにしますよ。」
「散髪代浮くなぁ…。」
「おじいちゃん!!」
「はっ!!」
鏑木さんは縄を抜けて屈伸運動をしている。
「年寄りの冷や水…。」
「分かってるなら人の弁当食べないでください。」
「田所さん、これ人数分コピーしてきました。」
「橘は仕事できるよねぇ~。」
「もう目は通したかい?」
「コピーしながら大体は読みました。」
「もうすぐ年の瀬だからね。今のうちに勉強しておかないと元旦に間に合わないからね。」
田所さんは優しく話す。
「こっとしも、御唱和荒稼ぎー。」
鏑木さんはニヤニヤしている。
「言霊で結界を張るんですよね?」
「簡潔に言えばそういうことだね。」
「天界でも下界でも煤払いが終わったら新年の準備は終わりでしょう?そこから結界を張るんだ。」
「それと鏑木さんになんの関係があるんですか?」
陽平君は不思議だった。
「御唱和は結界だから形に残すと偽造されることがあるんだ。だから事前に神様から言霊を聞いて全て暗記して一言一句間違えないように唱える必要があるんだ。」
「そこに呼ばれるのがおじいちゃん。」
鏑木さんがピュンと飛んできた。
「御唱和一回30万。」
「さ、…。」
「その金額で地域の安全が買えるなら安いもんだけどなぁ。」
「じゃあ今日は僕、鏑木さんの奢りで焼き肉なんで…。」
「リボ払いが終わらない…。」
そうして田所さんと鏑木さんは帰っていった。
今年のクリスマスこそ皆に会いに帰るんだ。陽平君はそう思いながら日々の仕事をこなした。年末年始が近いからか神様の護衛の仕事はバンバン入る。ホッカイロ片手に外で待機をする。陽平君は会うたびに綺麗になっていくすずちゃんのことが不安だった。肩まで伸びた髪に大きな黒い瞳、白い肌。旦那様の家で暮らしていた頃は思わなかったが、すずちゃんは美少女何だな、そう気がついた。
早く結婚できる年になって欲しい。陽平君は悶々とした。
成瀬倫也の指名手配は早数年が過ぎていた。
「年内までには挙げたいんですがね。」
斗歩長官の部下が騒ぐ。一連の騒動から、魔界の住人の動きはピタリと止んだ。不気味なほど静かだ。次に何か起こるとすればどこを狙ってくるだろうか斗歩長官は考えていた。
「血気盛んなのはよろしいことね。」
天界警察結界師彩女が笑う。
「外の争いに気を取られがちですけど一連の騒動で貴方を失脚させたい人間も分かってきたのよ。」
そう言って彩女は扇子を取り出して広げた。
「さぁて鬼が出るか蛇がでるか。」
「嫌な感じですね。」
「月末の貴方よりは嫌な感じじゃなくてよ。」
そう言って彩女は高笑いした。
ある日のことだった。弓道場に来ていた陽平君は斗永さんと一緒になった。
「お前さんは接近戦が苦手だなぁ…。」
斗永さんは弓矢を取り出して眺めている。
「柔道ならできますよ。」
「そうじゃない。刀や竹刀だ。」
そう言って斗永さんはタバコの煙をはいた。
「天界の人間が魔界の住人と戦う時、1番厄介なのは穢だ。そこから魔界の住人になる可能性がある。」
斗永さんは自分の拳銃を取り出した。ピタリと陽平君のおでこに当てる。
「弾は入ってない。」
陽平君はじっとり汗をかいた。
「年をとるとだめだな。説教ばかりで。」
陽平君は斗永さんの迫力にたじろいだ。一体どれだけの修羅場をかいくぐって来たのだろう。
「お手合わせ願います。」
「止めとけ。そんな正攻法で戦える現場なんて無い。」
そう言って斗永さんは立ち去った。
「陽平君おかえり~。」
陽平君は日頃の勤務態度が評価されてクリスマスに休みを貰えた。すずちゃんが真っ赤なワンピースを着ていた。透けるような肌によく映えるワンピースだった。
「陽平君、旦那様が作ってくれたの。」
そう言ってすずちゃんはひらひらとワンピースの裾を揺らす。
「よく似合ってるよ。」
そう言って陽平君は皆にクリスマスプレゼントを配った。女の子にはヘアピン、男の子にはカードゲームだ。
「陽平は立派になりましたね。」
旦那様は陽平君の頭を撫でながら穏やかな口調でそう言う。
「最近、どういう仕事したの?」
かどま君達が聞いてくる。
「人間界に降りたんだ。」
「人間界って下界に?!」
「食べ物が凄く臭いんだよ。血の匂いがするんだ。」
「へーそうなんだ。凄いお仕事だね。」
「他にはどんなお仕事があるの?」
皆が集まってくる。千聖ちゃんは相変わらず黙り込んでその様子を眺めている。
「ケーキが出来ましたよ。皆で食べましょう。」
「わーい、ケーキだ!!」
「やったー!!」
皆はポテトサラダやチキン、グラタン、パスタなどを食べてケーキを食べた。
ああ、天界警察に志願してよかったな、陽平君はそう思った。
そして久しぶりに旦那様の家で眠った。
次の日、朝一番に千聖ちゃんと話した。千聖ちゃんは普段からだんまりを決め込むタイプで何を考えているか分からない。
「陽平君が無事で良かった…。」
千聖ちゃんはそれだけ言って涙をこぼした。
すずちゃんが起きてくると千聖ちゃんは慌てて涙を拭いた。
「陽平君は今日はお仕事?」
「半休だから午後からは仕事だよ。」
「なーんだ、もっと一緒に居られると思ったのに。」
すずちゃんが口をとがらせる。千聖ちゃんはいそいそとゴミ出しに向かった。
「千聖ちゃんと何を話してたの?」
すずちゃんは不思議そうな顔でそう聞く。
「仕事の話だよ。」
そう言って陽平君は誤魔化した。自分でも何故誤魔化したのか分からなかったが、すずちゃんには言うべきではない、そう思った。
陽平君は午前中いっぱい皆とゲームをしたり歌を歌って天界警察に戻った。
天界警察では軽快な音楽とともにみんなが大掃除していた。
「毎年、思うんですけどこのBGM苛立ちません?」
「音楽に罪はない。」
「普段からやっとけばいいんですよ。」
田所さんはチャッチャッと掃除を終わらせて通常業務に戻った。
「破魔矢と御札はそのままでいいですよ。馴染みの神社から届きますから交換します。」
そう言って新人の様子を見た。
「橘君は元は旦那様の屋敷にいたんですよね?」
「流石だなぁ…。」
「橘には敵わないよ…。」
同期がぼやく。
「毎日のように掃除や洗濯はしてきました。旦那様からは石の上にも三年と言われてきました。」
陽平君は元気に話す。
「その三年が長いんだよ…。」
そう言って皆は笑った。
「スメラギ様、大丈夫ですか?」
「憎い…憎い憎い、今こうしてる間にも魔界の幼子は飢えて苦しみ死んでいくというのに…。人間界だ。人間界を取り込もう。」
「戦争になりますよ。」
「日々の魔界が戦争なのだ。大した違いはない。」
「ハハッ、ハハハハハ。」
「矢白木さん!!」
「さっき通報で都内の幼稚園にチェーンソーを持った男が出たそうです。森谷さんのお子さん通ってる幼稚園なんですよ!!」
「犯人の要求は?!」
「愉快犯らしくて、既に負傷者が出ているそうです。」
「ある日~森の中~くまさんに~出会った~。」
男はチェーンソーを動かしながら歌を歌う。
子供たちは先生の影に隠れている。
「冬樹先生が…。」
皆、泣くのを堪えて震えている。
「ああ、美味しそうな匂いだなぁ…。」
そう言って男は冬樹先生の遺体をかじる。バリバリと音がする。
「警察だ!!投降しなさい!!」
「ハハッ、ハハハハハ。」
男はチェーンソーを動かしながらゆっくりあたりを見渡す。
「発砲を許可する!!民間人は避難するように!!」
ドンドン、と音がして男の頭に銃弾が当たる。しかし男は依然として倒れない。
「あー痛いなー。痛いよ痛いよ痛いよ。でも魔界よりはマシだなぁ…。」
そう言って男はチェーンソーを振り回しだした。
「布川です!!魔界の住人が下界に現れました。一箇所じゃないんです!!複数です!!」
「今から天界警察から職員を派遣します!!関係部署に連絡してください。」
「年の瀬にしては礼儀知らずだな…。」
通報を聞いていた斗永さんはゆっくりと動く。
「下界の制服を着用するように!!」
「はい!!」
天界警察からは斗永さん含め20名ほどが派遣された。
「そのうち向こうの総理大臣が出てくるよ。」
そう言って田所さん達はピリピリしている。
「こーんにーちはー。僕は何が好きかなぁ?」
魔界の住人はひとりの子供に近づいた。
「来るなぁ、アッチ行けー!!」
そう言ってその子は先生の後ろに隠れた。
「じゃあ、もう良いかぁ…。」
そうしてチェーンソーを動かしだした。
「警察だ!!動くな!!」
斗永さんだ。ふわりと良い香りがした。
「別の部署から応援で来ました!!」
天界警察だ。下界の警察は気づかない。
斗永さんは2発拳銃を発砲した。
「あれあれ?身体が動かな…。」
そう言ってチェーンソー男は倒れた。斗永さんは足でチェーンソーを押さえて電源を切った。
「他の事件はどこですか?」
「他ですか?私達はまだ聞いてませんが。」
無線を通して次の現場が告げられる。
「負傷者は最低限に抑えるぞ。」
斗永さんはパトカーを走らせた。
「うちの部署は何もしなくて良いんですか?」
「応援要請があればだけどうちはそう言う部門から一番遠いからね。」
「知らなかった…。」
「現場一筋といえば薬莢の斗永だね。斗永さんは絶対に外さないからね。」
陽平君は下界のようすをモニターで見ながら下界の子どもたちの無事を祈った。
都内の幼稚園、保育園、小学校に魔界の住人は出没していた。
「斗永だ。応援要請だ。あと40人ほど送り込んでくれ。年末までには終わらせたい。」
そう言って斗永さんは次の幼稚園に到着した。
闇夜が近づき人間界の街の中に魔界の住人が入り込んできた。異例の事態だ。
「総理!!世間に公表するしかありません!!我々では魔界の住人を倒すことは出来ません!!」
「首相官邸で記者会見を開きます。関係各所に連絡を!!」
「はい!!」
「ここで番組の途中ですが首相官邸より皆様にお伝えしたい事がございます。」
総理は立ち上がってマイクの前に立った。
「我々、人間は神の子として生まれてきました。しかし、その影には常に魔界や地獄がつきものでした。そこで我々人間界の人間は天界の住人と協力し人間界の平和を守ってきました。魔界の住人は妖気をまとい、人間界の刀や銃では倒れません。そのため、大規模な戦が起こるときには天界警察の出動を要請してきました。今、我々は戦わなくてはなりません。」
総理大臣がそこまで言うと画像が乱れた。
「こちら、天界警察です。下界の皆様は速やかに地域の避難所に避難してください。ひとりでは避難しないようにお願い致します。こちら天界警察です。下界の皆様は速やかに地域の避難所に避難してください。ひとりでは避難しないようにお願い致します。」
そうして画面は戻った。
「天界をあまり手薄にするなよ。今魔界の住人に入りこまれたらこちらも終わるんだ。」
根岸と斗歩長官が話していた。
「魔界と人間界の門を閉じるしかありません。ですが妖気に取り込まれて戻ってこれない可能性があります。」
「僕が行きます!!」
陽平君は叫んだ。
「度胸は買おう。だが未来ある若者をそんな任務に出すわけには行かない。」
「じゃあ誰が行くんですか?!」
「それは…。」
「下界には僕たちのお母さんやお父さんがいるんです。僕は戦います。」
「どちらにしろひとりでは魔界の門は閉じられない…。」
「年増なら大丈夫かしら?」
結界師彩女が笑う。
「あともう1名頼んで頂戴。結界師界のトップ彩女が出向くわ。」
「じゃあおじいちゃん行くよ。」
「買い物行くわけじゃないんですよ。」
田所さんがピリピリする。
「魔界の住人とは長い付き合いだ。おじいちゃんが魔界の住人になったら、そん時は田所さん頼むよ。」
「嫌ですからね。無事に帰ってくるって言うまで出しませんよ。」
田所さんは泣いていた。
「唐揚げ弁当は水曜日だなぁ。」
「帰ってきてくださいよ。来週は大盛りで用意しますから。」
「わかったよ。田所。」
そして3人は魔界と人間界の門に向った。
「都内はネズミが住んでるのかと思うほど学校関係が多いなぁ…。」
「斗永さん、銃弾は足りてますか?」
「痛いところつくなぁ…年末年始で神気を入れた銃弾は少ないんだ…。無駄撃ちは出来ないな。」
「到着しました!!」
「夜明けまでの戦いだ!!」
斗永さんは銃をセットして突入していった。
魔界の門にはふたりの番人がいた。鏑木さんと陽平君は銃を構える。
「魔界に還れ!!」
そう言ってふたりを中に押し込み、門を閉じた。
「たぶん応援を呼ぶはずだ。それまでの勝負だぞ。」
鏑木さんは門が開かないように鎖を巻いていく。神気の入った鎖だ。
「彩女、どのくらいかかる?」
「5分でやるわ。全力でサポートして頂戴。」
下界では住民が避難していた。病院や老人ホームでは避難が困難で天界警察が派遣される。
「何が起きているんですか?」
「聖戦ですよ。」
そう言って天界警察は持ち場についた。
魔界の門はドンドンとなっていた。
「ギャヒヒギャヒヒ。」
「5分って意外と長いのねぇー。」
鏑木さんは溜め息を付きながら場を和ませていた。
「橘、しりとりでもするぅ?」
「そんな状況じゃないでしょう?!」
陽平君は必死に耐えた。魔界の門からじわじわと妖気が上がってくる。彩女は順調に結界を結んでいく。
「天界警察です!!応援です!!」
そう言って藤崎と藍原が到着した。
「交通課まで出てくるの?!」
陽平君は焦った。
「志願者を募集してたんだよ。」
「橘とは同じ飯を食った仲だ。ひとりにはさせないからな。」
「ふたりとも…。」
「鏑木長官、帰ったらうな重奢ってくださいよ。」
「今から胃薬用意しとけよ。胃もたれするくらい食わせちゃるわ。」
「これで避難は終了したわね。」
下界には盛喜多さんがいた。
「後は朝を待つまでよ。」
「新年なら区切りも良かったんですけどね。」
「ふふふ。そんな新年の迎え方なんてゴメンだぞ。」
そう言って盛喜多さんは笑った。
「盛喜多さんって昔、神官課に居たんですよね?」
「そうね。もーりーのおばあちゃんは有名な祈祷師だったからね…。昔の話よ。」
そう言って盛喜多さんは子どもたちの元へ向った。
「もーりー縄跳び得意なのよー。」
そう言って二重跳びを始めた。
「出来た!!」
彩女がそう言うと扉から音がしなくなった。
「結界で、魔界と魔界に繋がるようにしてあるから無限ループよ。ここに来た全員、帰ってすぐに禊と祈祷を受けて頂戴。」
妖気に当てられて藍原がガクガクしていた。
「藍原!!」
「だめだな!!橘下がれ!!」
「嫌です!!藍原が何したっていうんですか?!」
陽平君は泣いた。藤崎が陽平君を引きずり倒した。
「嫌だあぁぁ!!」
鏑木さんは藍原を射殺した。
「遺体はこの後回収する。禊と祈祷だ。急げ。」
「あ、お日様だー!!」
下界では朝になり魔界の住人が消滅していった。そして天界警察はその名を知られることになる。
陽平君達は無事に禊と祈祷を済ませ、第一線に復帰した。陽平君はこの頃から僕たちは正しいことをしているのだろうか、そう悩むようになった。
旦那様の屋敷ではすずちゃんが陽平君の次のお休みまで何日あるか数えていた。
早く会いたいな。すずちゃんはそう思いながらお洗濯を始めた。
「どうしたんですか一体?」
東京の旦那様の家ではすずちゃんが旦那様と話していた。
「すず、ワンピースとかプリーツスカートが欲しいの。今度陽平君に会う時、それを着ていきたいの。」
「では、私が仕立てましょう。色は何色が良いですか?」
「ありがとうございます、旦那様!!」
「たっ、ちぃばっなぁー!!」
陽平君は書庫室からの帰り、藤崎と藍原に遭遇した。
「ふたりでどうしたの?」
「それがさ、聞いてくれよ。長官の盛喜多さんがさぁ、ずーっと自分語りしてくるんだよ。」
「本当になぁ。」
「13人兄妹の8番目だとかサマンサがあれば生きていけるとか毎回同じ話すんの。」
「へー大変だねぇ。」
「橘はそういうのは大丈夫なのか?」
「うちの部署は鏑木さんくらいかなぁ…。」
「うちの部署の鏑木です。」
「うわっ!!」
陽平君は驚いて書類を落とした。バサバサと書類が宙に舞う。
「田所さんになんの書類を持って来いって言われたんだか…?」
「新年の御唱和に関してです。」
「そんなの見なくても田所さんは御唱和分かってるんだけどなぁ…。」
「僕たち、新人に読むようにって。」
「橘は御唱和に出るのか?」
「神様側近だなぁ…。」
ふたりはため息をつく。
「ところで鏑木さんは何故ここに?」
その瞬間、鏑木さんはピュンと陽平君の後ろに隠れた。
「誰か鏑木さん見ませんでしたかー?」
汗をかきながら田所さんは叫ぶ。
「いいえ見てません。」
鏑木さんは陽平君の声で話す。
「あんの、クソじじい…。」
そう言って田所さんは走っていった。
「何したんです?」
「田所さん家の唐揚げ弁当は弁当屋より美味しい…。」
そうして鏑木さんは楊枝を使い始めた。
「素直に謝ったほうが良いですよ…。」
陽平君は優しい口調で諭す。
「流石に2回目、3回目でもないしなぁ…。」
「いたー!!」
「しまった!!見つかったか!!」
「クソじじいー!!今度こそ捕まえますからねー!!」
そうして鏑木さんはピュンピュンと走り去っていった。
「今日から流鏑馬の練習に入るわけだが、まずは弓を引くことから始める。足は肩幅程度に開いて背筋を伸ばす。息を吐きながら弓矢を引いて目標より高い位置から矢を放つ。いけるか?」
「はい!!やってみます!!」
鹿児島中央の神社では学さんが、新人の流鏑馬指導を始めていた。新人の3人は陽平君ほどではないがそこそこ出来る子達だった。
学さんは今でも時々、魔界の住人相手に泣きながら弓を引きに出て来た陽平君を思い出す。稽古を積んだとはいえ初陣に出るにはあまりに早い歳月だっただろう。今でも胸が痛い。
「向こうまで届かない。」
「弓が引けない…。」
3人は悪戦苦闘しながら弓を引き続ける。
「まあ1年で覚えればいいよ。」
そう言って学さんは笑った。
陽平君が天界警察神官護衛課に戻ると田所さんがサンドウィッチを食べながら鏑木さんに縄をつけて仕事していた。
「毎週水曜日は唐揚げデー…。嫁も学習しないな。」
「今度食べたら丸刈りにしますよ。」
「散髪代浮くなぁ…。」
「おじいちゃん!!」
「はっ!!」
鏑木さんは縄を抜けて屈伸運動をしている。
「年寄りの冷や水…。」
「分かってるなら人の弁当食べないでください。」
「田所さん、これ人数分コピーしてきました。」
「橘は仕事できるよねぇ~。」
「もう目は通したかい?」
「コピーしながら大体は読みました。」
「もうすぐ年の瀬だからね。今のうちに勉強しておかないと元旦に間に合わないからね。」
田所さんは優しく話す。
「こっとしも、御唱和荒稼ぎー。」
鏑木さんはニヤニヤしている。
「言霊で結界を張るんですよね?」
「簡潔に言えばそういうことだね。」
「天界でも下界でも煤払いが終わったら新年の準備は終わりでしょう?そこから結界を張るんだ。」
「それと鏑木さんになんの関係があるんですか?」
陽平君は不思議だった。
「御唱和は結界だから形に残すと偽造されることがあるんだ。だから事前に神様から言霊を聞いて全て暗記して一言一句間違えないように唱える必要があるんだ。」
「そこに呼ばれるのがおじいちゃん。」
鏑木さんがピュンと飛んできた。
「御唱和一回30万。」
「さ、…。」
「その金額で地域の安全が買えるなら安いもんだけどなぁ。」
「じゃあ今日は僕、鏑木さんの奢りで焼き肉なんで…。」
「リボ払いが終わらない…。」
そうして田所さんと鏑木さんは帰っていった。
今年のクリスマスこそ皆に会いに帰るんだ。陽平君はそう思いながら日々の仕事をこなした。年末年始が近いからか神様の護衛の仕事はバンバン入る。ホッカイロ片手に外で待機をする。陽平君は会うたびに綺麗になっていくすずちゃんのことが不安だった。肩まで伸びた髪に大きな黒い瞳、白い肌。旦那様の家で暮らしていた頃は思わなかったが、すずちゃんは美少女何だな、そう気がついた。
早く結婚できる年になって欲しい。陽平君は悶々とした。
成瀬倫也の指名手配は早数年が過ぎていた。
「年内までには挙げたいんですがね。」
斗歩長官の部下が騒ぐ。一連の騒動から、魔界の住人の動きはピタリと止んだ。不気味なほど静かだ。次に何か起こるとすればどこを狙ってくるだろうか斗歩長官は考えていた。
「血気盛んなのはよろしいことね。」
天界警察結界師彩女が笑う。
「外の争いに気を取られがちですけど一連の騒動で貴方を失脚させたい人間も分かってきたのよ。」
そう言って彩女は扇子を取り出して広げた。
「さぁて鬼が出るか蛇がでるか。」
「嫌な感じですね。」
「月末の貴方よりは嫌な感じじゃなくてよ。」
そう言って彩女は高笑いした。
ある日のことだった。弓道場に来ていた陽平君は斗永さんと一緒になった。
「お前さんは接近戦が苦手だなぁ…。」
斗永さんは弓矢を取り出して眺めている。
「柔道ならできますよ。」
「そうじゃない。刀や竹刀だ。」
そう言って斗永さんはタバコの煙をはいた。
「天界の人間が魔界の住人と戦う時、1番厄介なのは穢だ。そこから魔界の住人になる可能性がある。」
斗永さんは自分の拳銃を取り出した。ピタリと陽平君のおでこに当てる。
「弾は入ってない。」
陽平君はじっとり汗をかいた。
「年をとるとだめだな。説教ばかりで。」
陽平君は斗永さんの迫力にたじろいだ。一体どれだけの修羅場をかいくぐって来たのだろう。
「お手合わせ願います。」
「止めとけ。そんな正攻法で戦える現場なんて無い。」
そう言って斗永さんは立ち去った。
「陽平君おかえり~。」
陽平君は日頃の勤務態度が評価されてクリスマスに休みを貰えた。すずちゃんが真っ赤なワンピースを着ていた。透けるような肌によく映えるワンピースだった。
「陽平君、旦那様が作ってくれたの。」
そう言ってすずちゃんはひらひらとワンピースの裾を揺らす。
「よく似合ってるよ。」
そう言って陽平君は皆にクリスマスプレゼントを配った。女の子にはヘアピン、男の子にはカードゲームだ。
「陽平は立派になりましたね。」
旦那様は陽平君の頭を撫でながら穏やかな口調でそう言う。
「最近、どういう仕事したの?」
かどま君達が聞いてくる。
「人間界に降りたんだ。」
「人間界って下界に?!」
「食べ物が凄く臭いんだよ。血の匂いがするんだ。」
「へーそうなんだ。凄いお仕事だね。」
「他にはどんなお仕事があるの?」
皆が集まってくる。千聖ちゃんは相変わらず黙り込んでその様子を眺めている。
「ケーキが出来ましたよ。皆で食べましょう。」
「わーい、ケーキだ!!」
「やったー!!」
皆はポテトサラダやチキン、グラタン、パスタなどを食べてケーキを食べた。
ああ、天界警察に志願してよかったな、陽平君はそう思った。
そして久しぶりに旦那様の家で眠った。
次の日、朝一番に千聖ちゃんと話した。千聖ちゃんは普段からだんまりを決め込むタイプで何を考えているか分からない。
「陽平君が無事で良かった…。」
千聖ちゃんはそれだけ言って涙をこぼした。
すずちゃんが起きてくると千聖ちゃんは慌てて涙を拭いた。
「陽平君は今日はお仕事?」
「半休だから午後からは仕事だよ。」
「なーんだ、もっと一緒に居られると思ったのに。」
すずちゃんが口をとがらせる。千聖ちゃんはいそいそとゴミ出しに向かった。
「千聖ちゃんと何を話してたの?」
すずちゃんは不思議そうな顔でそう聞く。
「仕事の話だよ。」
そう言って陽平君は誤魔化した。自分でも何故誤魔化したのか分からなかったが、すずちゃんには言うべきではない、そう思った。
陽平君は午前中いっぱい皆とゲームをしたり歌を歌って天界警察に戻った。
天界警察では軽快な音楽とともにみんなが大掃除していた。
「毎年、思うんですけどこのBGM苛立ちません?」
「音楽に罪はない。」
「普段からやっとけばいいんですよ。」
田所さんはチャッチャッと掃除を終わらせて通常業務に戻った。
「破魔矢と御札はそのままでいいですよ。馴染みの神社から届きますから交換します。」
そう言って新人の様子を見た。
「橘君は元は旦那様の屋敷にいたんですよね?」
「流石だなぁ…。」
「橘には敵わないよ…。」
同期がぼやく。
「毎日のように掃除や洗濯はしてきました。旦那様からは石の上にも三年と言われてきました。」
陽平君は元気に話す。
「その三年が長いんだよ…。」
そう言って皆は笑った。
「スメラギ様、大丈夫ですか?」
「憎い…憎い憎い、今こうしてる間にも魔界の幼子は飢えて苦しみ死んでいくというのに…。人間界だ。人間界を取り込もう。」
「戦争になりますよ。」
「日々の魔界が戦争なのだ。大した違いはない。」
「ハハッ、ハハハハハ。」
「矢白木さん!!」
「さっき通報で都内の幼稚園にチェーンソーを持った男が出たそうです。森谷さんのお子さん通ってる幼稚園なんですよ!!」
「犯人の要求は?!」
「愉快犯らしくて、既に負傷者が出ているそうです。」
「ある日~森の中~くまさんに~出会った~。」
男はチェーンソーを動かしながら歌を歌う。
子供たちは先生の影に隠れている。
「冬樹先生が…。」
皆、泣くのを堪えて震えている。
「ああ、美味しそうな匂いだなぁ…。」
そう言って男は冬樹先生の遺体をかじる。バリバリと音がする。
「警察だ!!投降しなさい!!」
「ハハッ、ハハハハハ。」
男はチェーンソーを動かしながらゆっくりあたりを見渡す。
「発砲を許可する!!民間人は避難するように!!」
ドンドン、と音がして男の頭に銃弾が当たる。しかし男は依然として倒れない。
「あー痛いなー。痛いよ痛いよ痛いよ。でも魔界よりはマシだなぁ…。」
そう言って男はチェーンソーを振り回しだした。
「布川です!!魔界の住人が下界に現れました。一箇所じゃないんです!!複数です!!」
「今から天界警察から職員を派遣します!!関係部署に連絡してください。」
「年の瀬にしては礼儀知らずだな…。」
通報を聞いていた斗永さんはゆっくりと動く。
「下界の制服を着用するように!!」
「はい!!」
天界警察からは斗永さん含め20名ほどが派遣された。
「そのうち向こうの総理大臣が出てくるよ。」
そう言って田所さん達はピリピリしている。
「こーんにーちはー。僕は何が好きかなぁ?」
魔界の住人はひとりの子供に近づいた。
「来るなぁ、アッチ行けー!!」
そう言ってその子は先生の後ろに隠れた。
「じゃあ、もう良いかぁ…。」
そうしてチェーンソーを動かしだした。
「警察だ!!動くな!!」
斗永さんだ。ふわりと良い香りがした。
「別の部署から応援で来ました!!」
天界警察だ。下界の警察は気づかない。
斗永さんは2発拳銃を発砲した。
「あれあれ?身体が動かな…。」
そう言ってチェーンソー男は倒れた。斗永さんは足でチェーンソーを押さえて電源を切った。
「他の事件はどこですか?」
「他ですか?私達はまだ聞いてませんが。」
無線を通して次の現場が告げられる。
「負傷者は最低限に抑えるぞ。」
斗永さんはパトカーを走らせた。
「うちの部署は何もしなくて良いんですか?」
「応援要請があればだけどうちはそう言う部門から一番遠いからね。」
「知らなかった…。」
「現場一筋といえば薬莢の斗永だね。斗永さんは絶対に外さないからね。」
陽平君は下界のようすをモニターで見ながら下界の子どもたちの無事を祈った。
都内の幼稚園、保育園、小学校に魔界の住人は出没していた。
「斗永だ。応援要請だ。あと40人ほど送り込んでくれ。年末までには終わらせたい。」
そう言って斗永さんは次の幼稚園に到着した。
闇夜が近づき人間界の街の中に魔界の住人が入り込んできた。異例の事態だ。
「総理!!世間に公表するしかありません!!我々では魔界の住人を倒すことは出来ません!!」
「首相官邸で記者会見を開きます。関係各所に連絡を!!」
「はい!!」
「ここで番組の途中ですが首相官邸より皆様にお伝えしたい事がございます。」
総理は立ち上がってマイクの前に立った。
「我々、人間は神の子として生まれてきました。しかし、その影には常に魔界や地獄がつきものでした。そこで我々人間界の人間は天界の住人と協力し人間界の平和を守ってきました。魔界の住人は妖気をまとい、人間界の刀や銃では倒れません。そのため、大規模な戦が起こるときには天界警察の出動を要請してきました。今、我々は戦わなくてはなりません。」
総理大臣がそこまで言うと画像が乱れた。
「こちら、天界警察です。下界の皆様は速やかに地域の避難所に避難してください。ひとりでは避難しないようにお願い致します。こちら天界警察です。下界の皆様は速やかに地域の避難所に避難してください。ひとりでは避難しないようにお願い致します。」
そうして画面は戻った。
「天界をあまり手薄にするなよ。今魔界の住人に入りこまれたらこちらも終わるんだ。」
根岸と斗歩長官が話していた。
「魔界と人間界の門を閉じるしかありません。ですが妖気に取り込まれて戻ってこれない可能性があります。」
「僕が行きます!!」
陽平君は叫んだ。
「度胸は買おう。だが未来ある若者をそんな任務に出すわけには行かない。」
「じゃあ誰が行くんですか?!」
「それは…。」
「下界には僕たちのお母さんやお父さんがいるんです。僕は戦います。」
「どちらにしろひとりでは魔界の門は閉じられない…。」
「年増なら大丈夫かしら?」
結界師彩女が笑う。
「あともう1名頼んで頂戴。結界師界のトップ彩女が出向くわ。」
「じゃあおじいちゃん行くよ。」
「買い物行くわけじゃないんですよ。」
田所さんがピリピリする。
「魔界の住人とは長い付き合いだ。おじいちゃんが魔界の住人になったら、そん時は田所さん頼むよ。」
「嫌ですからね。無事に帰ってくるって言うまで出しませんよ。」
田所さんは泣いていた。
「唐揚げ弁当は水曜日だなぁ。」
「帰ってきてくださいよ。来週は大盛りで用意しますから。」
「わかったよ。田所。」
そして3人は魔界と人間界の門に向った。
「都内はネズミが住んでるのかと思うほど学校関係が多いなぁ…。」
「斗永さん、銃弾は足りてますか?」
「痛いところつくなぁ…年末年始で神気を入れた銃弾は少ないんだ…。無駄撃ちは出来ないな。」
「到着しました!!」
「夜明けまでの戦いだ!!」
斗永さんは銃をセットして突入していった。
魔界の門にはふたりの番人がいた。鏑木さんと陽平君は銃を構える。
「魔界に還れ!!」
そう言ってふたりを中に押し込み、門を閉じた。
「たぶん応援を呼ぶはずだ。それまでの勝負だぞ。」
鏑木さんは門が開かないように鎖を巻いていく。神気の入った鎖だ。
「彩女、どのくらいかかる?」
「5分でやるわ。全力でサポートして頂戴。」
下界では住民が避難していた。病院や老人ホームでは避難が困難で天界警察が派遣される。
「何が起きているんですか?」
「聖戦ですよ。」
そう言って天界警察は持ち場についた。
魔界の門はドンドンとなっていた。
「ギャヒヒギャヒヒ。」
「5分って意外と長いのねぇー。」
鏑木さんは溜め息を付きながら場を和ませていた。
「橘、しりとりでもするぅ?」
「そんな状況じゃないでしょう?!」
陽平君は必死に耐えた。魔界の門からじわじわと妖気が上がってくる。彩女は順調に結界を結んでいく。
「天界警察です!!応援です!!」
そう言って藤崎と藍原が到着した。
「交通課まで出てくるの?!」
陽平君は焦った。
「志願者を募集してたんだよ。」
「橘とは同じ飯を食った仲だ。ひとりにはさせないからな。」
「ふたりとも…。」
「鏑木長官、帰ったらうな重奢ってくださいよ。」
「今から胃薬用意しとけよ。胃もたれするくらい食わせちゃるわ。」
「これで避難は終了したわね。」
下界には盛喜多さんがいた。
「後は朝を待つまでよ。」
「新年なら区切りも良かったんですけどね。」
「ふふふ。そんな新年の迎え方なんてゴメンだぞ。」
そう言って盛喜多さんは笑った。
「盛喜多さんって昔、神官課に居たんですよね?」
「そうね。もーりーのおばあちゃんは有名な祈祷師だったからね…。昔の話よ。」
そう言って盛喜多さんは子どもたちの元へ向った。
「もーりー縄跳び得意なのよー。」
そう言って二重跳びを始めた。
「出来た!!」
彩女がそう言うと扉から音がしなくなった。
「結界で、魔界と魔界に繋がるようにしてあるから無限ループよ。ここに来た全員、帰ってすぐに禊と祈祷を受けて頂戴。」
妖気に当てられて藍原がガクガクしていた。
「藍原!!」
「だめだな!!橘下がれ!!」
「嫌です!!藍原が何したっていうんですか?!」
陽平君は泣いた。藤崎が陽平君を引きずり倒した。
「嫌だあぁぁ!!」
鏑木さんは藍原を射殺した。
「遺体はこの後回収する。禊と祈祷だ。急げ。」
「あ、お日様だー!!」
下界では朝になり魔界の住人が消滅していった。そして天界警察はその名を知られることになる。
陽平君達は無事に禊と祈祷を済ませ、第一線に復帰した。陽平君はこの頃から僕たちは正しいことをしているのだろうか、そう悩むようになった。
旦那様の屋敷ではすずちゃんが陽平君の次のお休みまで何日あるか数えていた。
早く会いたいな。すずちゃんはそう思いながらお洗濯を始めた。
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