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始まり
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「お母さん、お日様は黄色だよ。」
「どうかしたの?叶太?」
「幼稚園の先生が言ってたよ。お日様は黄色で、お月様は白いんだって。」
幼稚園の帰り、息子の叶太は突然話しだした。
近所のバレエスクールに通いだしてから叶太はよく話すようになった。
女の子が多い環境だからだろうか、通い出して3ヶ月も経たないうちに様々な事を話すようになった。
その中で彼のお気に入りは幼稚園の担任の桃香先生の話題だ。桃香先生はクォーターで日本人とフランス人の血が流れている。
桃香先生の母親は本国フランスでバレエスクールを経営していたので叶太は桃香先生と共通の話題が出来たと浮かれていた。
しかし、桃香先生は時折日本人ではない発言をする。
「お日様は赤じゃないの?」
私は少し意地悪くそういった。
「だって桃香先生が。」
そう言って叶太はオドオドする。
「日本ではお日様は赤、お月様は黄色よ。絵本にもそう描いてあるでしょう。」
そう言って私は小さなおませさんをチャイルドシートに乗せて車を発進した。
帰りは叶太が好きなポテトサラダが売っているスーパーに立ち寄る。
何度か味を似せて作ってみたがどうしてもこの味にならない。それで叶太が野菜を食べない時はお世話になっている。
スーパーに到着してチャイルドシートから叶太を降ろすと彼は元気よくスーパーに入っていく。
「車が来てないか見るって約束したでしょう?」
私は慌てて叶太を捕まえる。
「見ましたー。」
叶太は視線をあわせず私と話す。
「お母さん季節限定のチョコパイだよ。」
彼には既に私が目に入ってない。
「歯磨きサボったらお菓子は抜きでしょう?」
私はそう言って彼にカートを取ってくるように促す。
彼は生返事で、既に面倒くさいと言うオーラを身にまとっている。
学生時代、海外では太陽は黄色、月は白で描くと言う話を聞いたな。私はうっすらそういう話を思い出した。
肌色が、ペールオレンジに変わった時もそんなことまでしなくてもそう思ったのを覚えている。
買い物中、近所の真凛ちゃんのお母さんに会った。真凛ちゃんは1歳年上で幼稚園のスクールバスを使っている。
「そろそろお迎えの時間ですね。」
「ええそうなのよ。でも今日中に材料を用意しないと。」
ああ、真凛ちゃんは明日誕生日だったな、私は思った。
真凛ちゃんのお母さんは手作りに何でもこだわる人でケーキなども家で焼く。叶太はそれを大層羨ましがり、夫にもオーブンをねだったが結局、オーブントースターでクッキーを焼く程度に留まっている。
「真凛は叶太君が大好きですからね~。」
そう言って真凛ちゃんのお母さんは笑う。
私はそこそこ話を受け止めながら真凛ちゃんのお母さんと話す。
雑誌などでママ友は子供だけで繋がっている存在だから子供の成長と共に離れていく。そう書かれていた。私は目の前でこんなに楽しそうに話す人が叶太が居なくなれば目の前から去るのか…。そう思いながらスーパーの買い出しを終えた。
「どうかしたの?叶太?」
「幼稚園の先生が言ってたよ。お日様は黄色で、お月様は白いんだって。」
幼稚園の帰り、息子の叶太は突然話しだした。
近所のバレエスクールに通いだしてから叶太はよく話すようになった。
女の子が多い環境だからだろうか、通い出して3ヶ月も経たないうちに様々な事を話すようになった。
その中で彼のお気に入りは幼稚園の担任の桃香先生の話題だ。桃香先生はクォーターで日本人とフランス人の血が流れている。
桃香先生の母親は本国フランスでバレエスクールを経営していたので叶太は桃香先生と共通の話題が出来たと浮かれていた。
しかし、桃香先生は時折日本人ではない発言をする。
「お日様は赤じゃないの?」
私は少し意地悪くそういった。
「だって桃香先生が。」
そう言って叶太はオドオドする。
「日本ではお日様は赤、お月様は黄色よ。絵本にもそう描いてあるでしょう。」
そう言って私は小さなおませさんをチャイルドシートに乗せて車を発進した。
帰りは叶太が好きなポテトサラダが売っているスーパーに立ち寄る。
何度か味を似せて作ってみたがどうしてもこの味にならない。それで叶太が野菜を食べない時はお世話になっている。
スーパーに到着してチャイルドシートから叶太を降ろすと彼は元気よくスーパーに入っていく。
「車が来てないか見るって約束したでしょう?」
私は慌てて叶太を捕まえる。
「見ましたー。」
叶太は視線をあわせず私と話す。
「お母さん季節限定のチョコパイだよ。」
彼には既に私が目に入ってない。
「歯磨きサボったらお菓子は抜きでしょう?」
私はそう言って彼にカートを取ってくるように促す。
彼は生返事で、既に面倒くさいと言うオーラを身にまとっている。
学生時代、海外では太陽は黄色、月は白で描くと言う話を聞いたな。私はうっすらそういう話を思い出した。
肌色が、ペールオレンジに変わった時もそんなことまでしなくてもそう思ったのを覚えている。
買い物中、近所の真凛ちゃんのお母さんに会った。真凛ちゃんは1歳年上で幼稚園のスクールバスを使っている。
「そろそろお迎えの時間ですね。」
「ええそうなのよ。でも今日中に材料を用意しないと。」
ああ、真凛ちゃんは明日誕生日だったな、私は思った。
真凛ちゃんのお母さんは手作りに何でもこだわる人でケーキなども家で焼く。叶太はそれを大層羨ましがり、夫にもオーブンをねだったが結局、オーブントースターでクッキーを焼く程度に留まっている。
「真凛は叶太君が大好きですからね~。」
そう言って真凛ちゃんのお母さんは笑う。
私はそこそこ話を受け止めながら真凛ちゃんのお母さんと話す。
雑誌などでママ友は子供だけで繋がっている存在だから子供の成長と共に離れていく。そう書かれていた。私は目の前でこんなに楽しそうに話す人が叶太が居なくなれば目の前から去るのか…。そう思いながらスーパーの買い出しを終えた。
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