【完結】古ぼけた時計

九時せんり

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波紋

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「どういう意味でしょうか?」
その日、ひなこはお母さんと眼科にいた。
「目の使いすぎだと思います。勉学に勤しむのも大切ですが意識して身体を休めてください。」
医師はそう言って処方箋を作り出した。
「お母さん…。」
ひなこは不安そうだ。
「紹介状を書きましょうか?大学病院ならもう少し精密な結果が得られるでしょう。」
「ええ、そうしてください。」

学校の勉強に課題、週5の習い事、趣味の読書…ひなこはなんとも思わなかったが身体は悲鳴を上げていた。
時々、視界がぼやけて文字が読めなくなる。
それでも少し休めばまた文字が見えてくる。
お母さんはひなこを心配していつもと違う人のようだった。
大丈夫、大丈夫。

ひなこはそして大学病院で、精密検査を受けた。
「これは…。」
医師はMRIの結果を見ながら頭を悩ませた。
「お嬢さんは国立大学附属小学校に通われて居るんですよね?」
医師はひなこの制服を見ながらそう話した。
「たまにこういうお子さんが来るんです。勉強量の多さと目を酷使することで目にブレーキがかかるんです。」
医師はひなこの目を見ながら話した。
「眼球そのものには異常はないんです。疲労によるものです。」
「私は勉強や読書が楽しいんです。」
ひなこは口を開いた。
「1日どれくらい勉強してるんですか?」
「2時間もしてません。」
ひなこは毎日1時間ほどの勉強時間を盛った。
「本なら良く読む子です。」
お母さんがひなこの後ろから話す。
「じゃあ読書量を少し減らした方が良いかもしれませんね。」
「ええ?!」
ひなこは声を上げた。
「貴女が良くても眼精疲労は起きているんです。失明することだってあるんですよ。」
医師はひなこを言い含めた。
「1日何冊本を読んでますか?」
「…3冊です。」
「本当は?」
「何で分かるんですか?」
「図星のようですね。」
「5冊から6冊です。」
「明らかに読み過ぎです。出版社にでも勤めるつもりですか?」
「でも読み出すと止まらなくて。」
「では、お母様に管理してもらいましょう。」
「ええ?!」
「しばらく本は2冊までにしてください。状況が変わらないようでしたら眼鏡か、コンタクトレンズを使いましょう。」
「わかりました。有難うございます。」
そう言ってお母さんは医師に頭を下げてひなこと共に診察室を出た。
「早くに見つかって良かったわ。読書はほどほどにね。」
そう言ってひなことお母さんは帰宅した。
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