【完結】古ぼけた時計

お受験

年中の秋からひなこはお受験教室に通い始めた。随分体力がついたのでスイミング教室を辞めて、その曜日をお受験教室にあてた。
小学校のお受験は大嶋家なら当然のことだとおばあさんは言っていた。
ひなこはほとんど見たことないがおじいさんは会社の会長をしていて家では晩酌だけをする。
ひなこは目まぐるしく変わっていく環境に頭がついていけなくなっていた。

ひなこくん。最近は調子が悪そうだが大丈夫かい？

久しぶりに神様のお使いと話した。

なんで大嶋家はそこまで色んな事をさせるんでしょうか？

ひなこは聞いた。

人には役割と言うものがある。大嶋家はたくさんの社員達の生活を支えている。そして、それを続けていく覚悟がある。

覚悟、ですか…。

ひなこはうーんと考え始めた。

覚悟があれば色んな習い事をするんですか？

まあ不思議なものでね、教養を身につける必要があるのさ。

ふーん。

ひなこくんは優秀だよ。ただ、もう少し手を抜いてもいいかもしれないね。

そう言って神様のお使いは飛んで行った。

翌日、バレエ教室とお受験教室に通っている満ちゃんと話した。
「お受験教室って大変じゃない？」
ひなこはそう聞いた。
「私たちはこれから先、受験競争を勝ち抜いて企業に入るの。今からなら周りより苦労しないわ。」
そう言って満ちゃんは鼻高々としていた。
ひなこは思ったような答えをもらえずに悶々としていた。
こんな大変なのに共感してくれる人はいないのか…。そう思った。