【完結】古ぼけた時計

九時せんり

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御屋敷

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ひなこがお母さんと退院してお父さんが迎えに来た。それはとても大きい車だった。
ひなこは運転席の後ろのチャイルドシートに座らせられた。
「準備いいじゃーん。」
「大事な嫁と娘を乗せて走るんだからな。」
そう言って、お父さんは笑った。
ひなこは車に乗ると前世の記憶が蘇ってきて不覚にも泣き出してしまった。
「抱っこ紐でもいいよ。まだまだ見慣れない物が怖いんだろうな。」
「大丈夫よー大丈夫。」
お母さんの声でひなこは泣くのをやめた。それでもグズグズとしていた。

お母さんと話せたら…。

そうひなこは思った。ガラガラなるおもちゃを渡されそれをシャンシャンと手で叩く。
前世にはないものだった。
思えばお洋服もキレイで毎日お風呂にも入れる。お母さんはヒステリックに怒鳴り散らすこともないし泣いたらご飯をくれる。

右の扉はたいそう厳しい。

それはどういう意味なんだろうか。ひなこは考えた。ひなこがおもちゃで遊んでいると、車はある御屋敷についた。
「さあひなこ、ここがおうちよ。」
それは古い日本家屋で、大きな古時計があった。
14時を指すとボーン、ボーンと時計がなった。ひなこはその音に驚いて泣いた。
「大丈夫よー、大丈夫。」
中からあの意地悪なおばあさんが顔を出した。
「お疲れ様。お茶の用意はしてあるから入りなさい。」
そう言っていた。
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