【完結】白昼夢

九時せんり

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それはある日のことでした。
香山さんと母が彼について話していた時、香山さんは、
「旦那様なら逸見にいますよ。」
と言ったのです。私が初めて聞く地名でした。
スマートフォンを取り出してグーグルマップを選んで逸見と検索すると確かにその住所は存在していました。
それは神奈川県の横須賀市にあるベッドタウンでした。
この頃、日本全体に天災が起こり、どこに行っても安全とは言い切れないようなことが起こっていました。
「修行の足りない神様ばっかりですね。」
と、子どもが拗ねるような口調で、香山さんは話しました。
彼に会えるかもしれない。
私は少ない預貯金と相談して彼に会いに飛行機のチケットを取りました。
神奈川は近代的な街でした。
京急線の沿線ばかりが栄え、JR周辺はパッとしません。私はあちらこちらと駆けずり回り、彼の姿を探しました。
しかしそんなうまいこと彼は見つかりませんでした。
帰りの羽田空港でチェックインの時間を待ちました。この時の私はうなだれて一緒に来た母は眠っていました。
ところがどうしたことでしょう。
ある男性とすれ違った瞬間、母がハッと起きたのです。
「キタって?」
私も周りも何も言ってない中、母はキタと聞こえてきたと言うのです。
私はまだ視界に入る彼を良く見つめました。
ああ、彼だ。その瞬間、私はこの旅行は良いものになった。そう思いました。
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