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彼氏と彼女
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雅之と鶴賀はまこちゃんと杏奈が付き合い出したことをお祝いした。
俺は杏奈は杏奈だし、まこちゃんはまこちゃんだったから、これと言って何も思わなかった。
この頃から杏奈は歌の途中で歌詞が飛ぶようになった。
俺はゆっくりやれば良いよ。そう言って杏奈を励ました。
杏奈はまこちゃんと一緒に帰るようになった。
親公認で付き合っているとまこちゃんは笑っていた。
一方で杏奈は塞ぎ込んでいった。
その日はまこちゃんが休みで杏奈は俺の周りをチョロチョロしていた。
「何だ何だ?どうした杏奈?」
杏奈は半泣きで俺と話した。
「まこちゃん軽音楽部辞めたいって…。」
「なんで?」
「獣医になるのが夢なんだって。最初、部活だから入ってみたけどプロになる気はないって。」
「そんな事一言も言ってなかったぞ。」
「お互いにそこまで話し込んでなかったから…。」
杏奈は泣いた。
まこちゃんが抜けると俺たちはやはり何か足りないバンドになる。そう思った。
まこちゃんを説得するか、新しいボーカルを探すか…。
「まこちゃんが入ってからオーディションも通るようになって来てたんだよな。」
「どうしよう?」
「ハイトーンを探そう。まこちゃん以外で。」
そうは言ったものの心当たりはない。
学校から帰る前、音楽室でピアノを弾いた。
一音ずつ上げて、俺がどこまで出せるか試してみた。まこちゃんとは遥かに違う。
やっぱりほかを探すしかない。
俺たちは音楽室を後にして、
「これも俺たちの歴史になるんだよ。」
そう言って笑った。
俺は杏奈は杏奈だし、まこちゃんはまこちゃんだったから、これと言って何も思わなかった。
この頃から杏奈は歌の途中で歌詞が飛ぶようになった。
俺はゆっくりやれば良いよ。そう言って杏奈を励ました。
杏奈はまこちゃんと一緒に帰るようになった。
親公認で付き合っているとまこちゃんは笑っていた。
一方で杏奈は塞ぎ込んでいった。
その日はまこちゃんが休みで杏奈は俺の周りをチョロチョロしていた。
「何だ何だ?どうした杏奈?」
杏奈は半泣きで俺と話した。
「まこちゃん軽音楽部辞めたいって…。」
「なんで?」
「獣医になるのが夢なんだって。最初、部活だから入ってみたけどプロになる気はないって。」
「そんな事一言も言ってなかったぞ。」
「お互いにそこまで話し込んでなかったから…。」
杏奈は泣いた。
まこちゃんが抜けると俺たちはやはり何か足りないバンドになる。そう思った。
まこちゃんを説得するか、新しいボーカルを探すか…。
「まこちゃんが入ってからオーディションも通るようになって来てたんだよな。」
「どうしよう?」
「ハイトーンを探そう。まこちゃん以外で。」
そうは言ったものの心当たりはない。
学校から帰る前、音楽室でピアノを弾いた。
一音ずつ上げて、俺がどこまで出せるか試してみた。まこちゃんとは遥かに違う。
やっぱりほかを探すしかない。
俺たちは音楽室を後にして、
「これも俺たちの歴史になるんだよ。」
そう言って笑った。
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