【完結】君から出た嘘

九時せんり

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正直者

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杏奈は嘘を付くのが下手だった。
みんなで大人に嘘を付く時、杏奈は邪魔だった。その日は隣町にある大きなショッピングモールに皆で行こうと言う話だった。
雅之と鶴賀の親が待ち合わせ場所に来て、ああやっぱり杏奈を誘うんじゃなかった。そう思った。
「ごめんなさい。」
そう言って杏奈は俯く。それにしたってなんだけど、こんな時に杏奈の親は出てこない。遠巻きにうちの杏奈がお世話になってます~とか言って怒ることも褒めることもしない。
そのせいか杏奈は不思議な性格だった。
それでも俺たちは兄妹のように育っていたから杏奈をハブるとかそういう事はしなかった。

中学に上がった頃から杏奈は美人だと周りからは囁かれた。俺たち3人は特にそれを気にすることなく過ごしていた。杏奈は女子特有の妬みや嫉みを含んだ人付き合いが苦手で早々に俺たちのグループに戻ってきた。
俺はこの頃、少ない小遣いとお年玉を貯めてアコースティックギター(いわゆるアコギ)を買った。最初の頃は指先に血豆が出来たりして、諦めようと何度も思ったが杏奈が、俺の声が好きだと言ってくれて有名な曲を何曲か演奏出来るようになった。
その内に雅之はベースを弾き、鶴賀はドラムを叩くようになった。
杏奈はたまに俺の演奏に合わせて歌を口ずさんだ。
俺たちは悪戯や大人の目を盗むような楽しみは捨てて、バンドを組んだ。
この頃の俺は軽音楽部とはバンドを指すのだと初めて知った。
杏奈はボーカルを務めて、小さなお祭りなどで前座として演奏に出かけていった。
俺たちは確かに青春を謳歌していた。
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