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第27話
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「う、ぅ……」
牢の中にぞんざいに敷かれた布団を頭から被り、体の疼きに耐えるように親則は喘ぎを漏らす。
尻に食い込む股縄の結び目は常に後孔を刺激し、陽根の根元に結ばれた革紐は勃起することを許さなかった。
どのくらいこうしているかわからない。
襖で仕切られた部屋は時間の経過を知る術がなかった。
媚薬の混ぜられたまずい粥を無理矢理食わされることが、五、六回はあったように思う。
それから尻を突き出す屈辱的な態勢を取らされ、ずっと親則を苛んでいる股縄をずらすと、あの痒くなる香油を後孔に筆で塗りたくられるのだ。
それからが地獄だった。
鹿島の部下が去って一人になったあとにそれは決まって訪れる。
物を食べると腸が蠕動し、それはやがて便意となって親則を襲った。
直腸内に溜まった便を出そうとどんなにいきんでも、縄の結び目に邪魔されて出すことは叶わない。
そうとわかっていても体は勝手に便を出そうといきむのをやめない。
「あ、ぁっ……!」
陽根や張型を入れられるのも、便が溜まるのも、異物が直腸にあることには変わりない。
それをぎゅうと締め付け、前立腺が刺激されると勝手に快楽を感じ取ってしまう体になってしまったのだ。
そして、いつかは溜め込んだ便を出す羽目になる。それを嫌らしい目をした鹿島に見られるのだろう。
媚薬で体を疼かせ、絶頂を迎えるほどではないゆるゆるとした快楽を与えられ、いつか訪れる恥辱と絶頂を待つしか親則にはできなかった。
突然、部屋に鹿島と勝重、その部下が入ってきた。
部下の手で牢から引きずり出されると高手小手に縛られる。
勝重は何もできずに座り込んでいる親則の前に膝をつくと、親則の顎をつかんで上を向かせた。
「どうだ犬吠森。鹿衛にたんと躾けてもらったか?」
言いながら勝重は親則の尻に手を回し、尻たぶを割るようにかかっている股縄をぐいと引っ張った。
「う、んっ……!」
後孔に強く縄の結び目が押し付けられ、親則は喘ぎを漏らす。
「ほうほう、よい声だ。数日でこれとは、鹿衛も手際がよいのう」
「恐縮です」
言って鹿島は陽根の形をした口枷を手に持ち、親則に噛ませる。
「貴様がどんな風に躾けられたか、これから見せてもらうでな」
勝重は言うと親則の体を突き飛ばして仰向けに転がした。
それから親則の顔を跨ぐようにすると下帯を解き、親則の顔を塞ぐように腰を下ろした。
「んんぅ……っ!」
体重の乗った尻肉が親則の顔面を覆い、丁度鼻に後孔が押し付けられて便臭が鼻につく。
「んんんっ!」
親則は勝重を退かそうともがいたがびくともせず、暴れる足を鹿島に掴まれてしまった。
「何ぞ、太くて臭い糞をひり出して気持ちがよくなるそうだな。臭いというのはこれより臭いのか?」
「んむぅっ……!」
言って勝重は後孔をぐいぐいと押し付けるように体を揺すった。
口枷をされた口ではろくに息も吸えず、鼻から呼吸をするしかない。
他人の後孔から漂う便臭を嗅がされ、逃げ場のない親則はただ勝重が退いてくれるのを待つしかなかった。
「おお、丁度よいところにいいものがあるな」
勝重は親則の胸に手を伸ばし、乳首を摘んだ。
「んんっ……」
突然乳首を弄られて親則はびくりと体を震わせ、上擦った声をあげる。
「なんだ、貴様は尻の匂いを嗅がされているのに乳首を弄られてよくなるというのか」
「んんぅっ……」
勝重は刺激に固くなった親則の乳首をこりこりと摘みながら言う。
鹿島は親則の足首を掴んでいた手を離すと足の間に体を割り込ませた。そして親則の陽根の根元に括られている革紐を解く。
「んっ、んぅ……っ、む、うぅ……っ」
剥き出しの後孔から漂う便臭と乳首からもたらされる快感、そして下腹の疼きに苛まれ、親則はもうどうしたらよいのかわからなかった。
「どうした、触れてもいないのに魔羅が大きくなっておるぞ。変わった奴よのう」
「ぅ、っ……!」
革紐を巻かれたまま数日間放っておかれた親則の陽根は、直接触れられなくとも乳首と後孔への刺激だけで膨張していた。
先走りを零すそれを楽しそうに勝重が見つめていると、別の部下が部屋に入ってきた。
「良晴殿と晴時殿が見えました」
「おう、通せ通せ」
勝重が言うと、程なくして良晴と晴時が通された。
「っ……!」
勝重が縛られた裸の男の顔に跨っている異様な光景を見て、二人は思わず足を止めた。
「これはこれは、良晴殿に晴時殿。待っておったぞ」
言って勝重はやっと親則の顔の上から退いて立ち上がった。
親則の顔が見え、良晴と晴時の二人は勝重が下に敷いていたのがあの親則だとわかると息を呑んだ。
親則のほうも視界に良晴と晴時を認め、身を強張らせた。
「ん、っ……!」
勝重は身を整えると親則の顔を踏みつけ、強引に晴時と良晴のほうを向かせる。
親則はそれに抵抗したが、それよりも勝重の踏みつける力のほうが強かった。
「ほら犬吠森……、おっと、ここにいるのは皆犬吠森であったな。どうだ親則、当代の犬吠森の棟梁の晴時殿と良晴殿だ。いずれも劣らぬ立派な武家、尻の匂いを嗅いで魔羅を大きくする貴様と血が繋がっているとは思えぬ」
「ん、ぐぅ……っ!」
揶揄うように言われ、羞恥と屈辱、怒りに震えながら親則が唸る。
「さあさあお二方、これから鹿衛が面白いものを見せてくれるのだ。座るがよろしい」
言って勝重は部下が用意した座布団を二人にすすめ、座るよう促した。
良晴と晴時は互いの様子を窺うように見合ってから、恐る恐る座布団に腰を下ろした。
勝重は親則の顔から足を退けると、鹿島のほうを向いて言った。
「では鹿衛、あとは任せる」
言うと勝重も良晴と晴時の隣に用意された座布団にどかりと座り込んだ。
「はい、殿」
鹿島は頷くと親則の体を起こし、それを後から抱くようにして座った。
それから鹿島の部下が縄を持って親則に近寄る。
抵抗する親則の足首を捕まえて足首を縛ると縄を首の後ろに通し、その縄をもう片方の足首に括りつけた。それが終わると脇に退く。
「ん、ううっ……!」
足を大きく開いたまま閉じられず、先走りを零しながらいきり勃つ陽根、その根元にある大きく膨らんだ陰嚢、股縄の結び目が深々と食い込む会陰と後孔が丸出しになっている。
秘部をさらけ出した親則は羞恥で顔を真っ赤に染めていた。
「これを解いてあげますね」
言うと鹿島はずっと親則を苛んでいた股縄を解いた。
縄の結び目で隠されていた後孔が露わになり、ぷっくりと肉の盛り上がった後孔は刺激を求めるようにひくついた。
「ほうら、親則殿。良晴殿と晴時殿が、親則殿の恥ずかしいところを見ていますよ」
「ぐ、ぅぅっ、んぅ……!」
親則は顔を横に逸らして二人を視界に入れないようにするが、顔の両脇を鹿島の手に押さえつけられて強引に前を向かされた。
「お二方の前ですが、口枷を嵌めたままで失礼します。何せ親則殿は魔羅が大好きなもので、口を開けば魔羅が欲しいとしか言わぬのです。ですので、こうして魔羅の形の口枷を噛ませているのです。これがあると親則殿も大人しくなります故」
「んんっ! んうっ……!」
親則は鹿島の言葉に異を唱えるように唸って、力の限り首を振った。それも、鹿島の手に押さえられていてはろくに叶わなかったが。
「良晴殿と晴時殿は親則殿の叔父上と従兄弟であらせられると聞きましたが、親則殿が斯様に淫らな御人だと知ってはおりましたか?」
鹿島の問いに、晴時は怯えながら首を横に振ってみせた。下手をすれば自分も同じ目に遭うと思ったからだ。
その答えに満足したように鹿島は笑った。
「そうなのですか。それはよかった。親則殿は高瀬の長としてよく人を導いたようですが、その本性は魔羅のことしか考えられぬ色狂い。棟梁どころか武家の男にあるまじき行い。このような男をよき長などと伝えては犬吠森の家の恥となります」
「そうじゃそうじゃ。この男は犬吠森の恥じゃ」
今まで黙っていた良晴が口を開いた。
「農民の腹から生まれた男が棟梁なんぞあり得んことじゃ! 少しばかり人からよく思われたくらいで思い上がりおって……。此奴が打ち首になって清々したと思っていたら、皆の前で裸になり魔羅を勃てておるとは……。生まれが下劣な者は品性も下劣じゃ」
良晴は忌々しげに吐き捨てた。
「おっと良晴殿、それは言いすぎでは」
嗜めるように勝重が言う。その言葉を聞いて良晴は勝重を睨みつけた。視線を受けながら勝重は眉ひとつ動かさずに続きを言った。
「親則殿とて好きでそうなったのではないはず。親則殿のことは鹿衛に任せておった。鹿衛、親則殿がこちらに来てから何があったか聞かせてはくれぬか。何か間違いでもあったのやもしれぬ」
白々しく勝重は言ってみせた。
勝重に振られ、鹿島は頷いて話を始めた。
「親則殿は鶴木に楯突いた高瀬の長。降伏したとてすぐさま打ち首になるところですが、俺に傷をつけるほどの剣の使い手。話くらいはしてみたいと親則殿にあれこれ聞いてみたのです」
言いながら鹿島は親則の尻に手を伸ばし、尻を揉みしだいた。
「聞けば親則殿は衆道も嗜まず妻も娶らず、養子を迎えて息子にしたといいます。これはもしや、魔羅の使い方を知らぬのではないかと聞いたら、恥ずかしいことに知らぬと言う。ですから魔羅の使い方を手解きしてやったのです」
鹿島はそう言うと尻を揉んでいた手を止め、後孔がよく見えるように尻たぶを広げて見せた。
「見てください、この可愛らしい尻穴を。綺麗な薄紅色をしてふっくらしています。良晴殿も晴時殿も見るのは初めてでしょう?」
「んぅ、ううぅ……!」
親則は嫌がるように身を捩ったが鹿島の体は小揺るぎもしなかった。
「この尻穴に俺の魔羅を入れてやって、こうしてまぐわうのだと教えてやりました。俺の太い魔羅を深々と咥え込んで、生娘のように喜んでいましたよ」
鹿島は指を伸ばして親則の後孔に触れる。それをもっと欲しがるように後孔がひくついた。
「そうしたら親則殿は、自分の魔羅を入れるより尻に入れられるほうが気持ちがよいのだと言いましてね。俺の魔羅が尻に欲しくてたまらないのだと言う。その様子を見ていたら魔羅の味を覚えさせてしまった俺にも責任がある気がしまして、せめて首を刎ねられるまでは親則殿を慰めようと、隙を見ては魔羅を入れてやっていたのです」
「うぅっ! んんぅ……っ! んむぅ、ぅ!」
わかりきった嘘を並べ立てる鹿島の声をかき消すように親則は唸るが、口枷をされていてはくぐもった声しか発することができない。
「しかし親則殿も大層な欲しがりでしてね。俺の精が尽き果てるまで魔羅をやっても足りぬ足りぬと言うのです。俺も親則殿にばかり構っているわけにはいかぬ身、張型や性具をやって一人で慰めるように言いました。そうしたら……」
鹿島はそこで言葉を切り、何も言えずに動けぬままの良晴と晴時に目をやった。勝重はにやにやと事の行方を楽しんでいる。
「そうしたらなんと、入れるより出すほうが気持ちよいと親則殿が言うのです。どういうことかと聞きましたら、これくらいの……」
言って鹿島は尻やっていた手を離し、親指と人差し指で輪を作ってみせた。
「これくらいの球を尻に入れて糞をするようにひり出すと、とびきり気持ちよいのだと。それだけでは飽き足らず、そうして遊んでいたら糞をするのも気持ちがよくなったと言います。親則殿が空言を言うような御人には見えませぬ故、ではやって見せろと言うと、俺の目の前でこういう風に足を広げて……」
鹿島は言いながら大きく広げられた親則の太腿に手を這わせた。
「魔羅を大きくさせ、二寸はあろうかと言うほど太くて臭い糞をひり出して、いったのですよ。子種をいっぱいに吐き出して」
先走りを滴らせながら勃ち上がっている親則の陽根を撫でさすりながら、鹿島は言ってみせた。
「んんっ! んぅ……っ!」
鹿島に有る事無い事並べ立てられ、親則は違うと声を上げる。
黙っていた勝重が身を乗り出し、親則の体をまじまじと見ながら口を開いた。
「鹿衛よ、それは本当か? お前に傷をつけたほどの武人が、そんな色狂いのわけがなかろう。良晴殿、晴時殿もおられるのだ。戯言はよさんか」
勝重の白々しい言葉に鹿島は違うと首を振った。
「いいえ、真にございます。俺も武士です、嘘などつきませぬ。今から証をご覧に入れましょう」
言うと鹿島は部下に目配せした。
竹筒の浣腸器を持った部下が親則の前に来ると、親則は何をされるか察して暴れ出した。
「んぐ、んんっぅ! うっ、んんぅ!」
「おやおや、浣腸されるのが嬉しいのですか、親則殿。そんなに焦らなくてもすぐに入れてあげますよ」
鹿島がそう言って親則の体を押さえつけると、部下は親則の後孔に嘴菅を挿して薬液を注ぐ。
「んんぅっ……!」
冷たい薬液が腹に流れ込んでくる不快感と、これから訪れる絶望に親則は呻く。
薬液を全て注ぎ込むと、親則の前に盥を置いてすぐに下がった。
「んぅ、う、んんぅ……っ、んんっ!」
やがて薬が効いて、親則の腹はごろごろと音を立て始めた。
親則の意思とは関係なく便意を催した体は溜まった便を押し出そうといきむ。
「ん、うぅん……っ!」
それを必死に後孔に力を込めて止めようとしたが、親則の漏らす声には明らかに快楽の響きが伴っていた。
媚薬を盛られ続け、何日もお預けを食らっていた親則の体は快楽を貪欲に求めていた。
直腸に溜まった便をぎゅうと締めつけ、前立腺が潰されるように刺激されると嫌が応にもそれを快楽と受け取ってしまうのである。
「ほら、浣腸をされてこんなに喜んでいるでしょう? 親則殿、もう出していいですよ」
鹿島は親則に言うが、そんなことできるわけがない。
人前で便をひり出す、それも自分を目の敵にしていた良晴の前でなど言語道断だ。
「う、んんぅっ! んっ、んん……っ!」
全身から脂汗を噴き出しながら必死に後孔を締め付けるが、それと同じくらい勝手に体はいきんでいる。
「う、んっ! ぐぅ、んんっ!」
「おかしいですね。薬が効いていないのでしょうか」
鹿島は白々しく言うとまた部下を呼んだ。
また浣腸器を持つ部下が目の前に現れたが、もう親則は限界だった。これ以上動いてどこかに力を込めようものなら漏れてしまう。
「んんんっ!」
無慈悲に後孔に嘴管が差し込まれ、また腹の中に薬液を注がれる。
強くなる便意と腹痛に必死に耐えていた親則だったが、やがて限界が訪れた。
「んぅ、んんんんっ……!」
窄まった後孔から薬液が噴き出し、破裂音をさせながら太い便塊が後孔を押し広げて排泄される。
数日に渡って親則を苛んでいた便塊が腸壁と後孔を擦り上げていき、その刺激に親則はついに絶頂を迎えることを許された。
背をのけぞらせて体を震わせ、いきり勃った陽根からどくりと精を吐き出す。
一度いきんだだけでは便は全て出し切らず、二度三度といきんで盥の中に大量の便をひり出し、その度に声を上げながら親則は達する。
やがて太い便塊を出すのが終わり、今度は水気のある軟便がびちゃびちゃと音を立てながら後孔から吐き出され、便塊の上に山と盛り上がった。
「っ……!」
親則は絶頂の余韻が残る体を、皆の見ている前で排便した羞恥に震わせていた。あまりの恥辱に眦には涙が浮かんでいる。
「おお、これは臭いな。こんなに臭いのは初めてだ。襖を開けい」
鼻をつまみながら大仰な言い方をして勝重が言う。
控えていた部下はすぐに襖を開け放ち、便がこんもりと山になっている盥を持って行った。
「どうです、良晴殿に晴時殿。親則殿はこんなに太い糞をして喜ぶような男なのです。皆の見ていた親則殿とは偽り、その本性はとんだ淫乱。このような者を良き棟梁として伝えてはなりません」
鹿島はそう結ぶと、良晴と晴時のほうを見やった。
良晴は何やら俯いて体を震わせている。
そしてついに堪え切れぬと言わんばかりに声を上げて笑い出した。
「親則、どうにも何を考えているのかわからぬ男じゃったが……。そうかそうか、貴様はこういう男だったのだな! 卑しい男じゃ。こんな奴が涼しい顔をして高瀬の長の座に座っていたのは腸が煮えくり返る思いじゃが、それ以上に滑稽じゃ! そうじゃろう晴時、こんなに臭くて太い糞をひり出しながら子種を出しおったぞ。こんなに面白い見世物はない!」
良晴に話を振られた晴時は心底脅えていた。
人一人の心をこうも踏みにじれるものなのかと。
有る事無い事並べ立てられ、それを拒否することもできずに痴態を晒した。
舌を噛んで死ぬことも許されず、名誉すら根こそぎ奪われた。
こんなことをする人間がいるのかと思うと恐ろしかった。
いや、こんなものは人間のすることではない。悪鬼のすることだ。
そして、今は親則に向けられている悪意が、何かの間違いで自分に向けられたらと思うと生きた心地がしなかった。
何があっても鶴木と良晴の機嫌を損ねてはならない。
皆の目がこちらをじろりと見つめている。反応を見られているのだ。
「……ま、まったくです! こっ、このような、淫蕩な男が棟梁だったとは! 犬吠森家の恥です!」
上擦った声で晴時は言った。
親則を認めていたというのに、我が身可愛さで罵るしかできぬ自分がこの上なく情けないものに思えた。
何が悪鬼だ。自分とて親則を辱める共犯者になり下がったのだ。
晴時は心の中で親則に何度も詫びた。
「ほらほら、当代の犬吠森家の棟梁晴時殿がお怒りですよ、親則殿」
言って鹿島は戯れに、親則の眦に溜まった涙を拭った。
「晴時殿は親則殿に罰が必要だと思いますか? 犬吠森の家名に泥を塗った罪に対する罰です」
鹿島に問われ、晴時は引き攣った愛想笑いを浮かべながら何回も首を縦に振ってみせた。
それを見て鹿島は目を細めて笑う。
「そうですね、俺も必要かと思います」
言うと鹿島は部下に目配せをすると、懐から短刀を取り出し親則の足を縛めていた縄を切った。
「あれを」
牢の中にぞんざいに敷かれた布団を頭から被り、体の疼きに耐えるように親則は喘ぎを漏らす。
尻に食い込む股縄の結び目は常に後孔を刺激し、陽根の根元に結ばれた革紐は勃起することを許さなかった。
どのくらいこうしているかわからない。
襖で仕切られた部屋は時間の経過を知る術がなかった。
媚薬の混ぜられたまずい粥を無理矢理食わされることが、五、六回はあったように思う。
それから尻を突き出す屈辱的な態勢を取らされ、ずっと親則を苛んでいる股縄をずらすと、あの痒くなる香油を後孔に筆で塗りたくられるのだ。
それからが地獄だった。
鹿島の部下が去って一人になったあとにそれは決まって訪れる。
物を食べると腸が蠕動し、それはやがて便意となって親則を襲った。
直腸内に溜まった便を出そうとどんなにいきんでも、縄の結び目に邪魔されて出すことは叶わない。
そうとわかっていても体は勝手に便を出そうといきむのをやめない。
「あ、ぁっ……!」
陽根や張型を入れられるのも、便が溜まるのも、異物が直腸にあることには変わりない。
それをぎゅうと締め付け、前立腺が刺激されると勝手に快楽を感じ取ってしまう体になってしまったのだ。
そして、いつかは溜め込んだ便を出す羽目になる。それを嫌らしい目をした鹿島に見られるのだろう。
媚薬で体を疼かせ、絶頂を迎えるほどではないゆるゆるとした快楽を与えられ、いつか訪れる恥辱と絶頂を待つしか親則にはできなかった。
突然、部屋に鹿島と勝重、その部下が入ってきた。
部下の手で牢から引きずり出されると高手小手に縛られる。
勝重は何もできずに座り込んでいる親則の前に膝をつくと、親則の顎をつかんで上を向かせた。
「どうだ犬吠森。鹿衛にたんと躾けてもらったか?」
言いながら勝重は親則の尻に手を回し、尻たぶを割るようにかかっている股縄をぐいと引っ張った。
「う、んっ……!」
後孔に強く縄の結び目が押し付けられ、親則は喘ぎを漏らす。
「ほうほう、よい声だ。数日でこれとは、鹿衛も手際がよいのう」
「恐縮です」
言って鹿島は陽根の形をした口枷を手に持ち、親則に噛ませる。
「貴様がどんな風に躾けられたか、これから見せてもらうでな」
勝重は言うと親則の体を突き飛ばして仰向けに転がした。
それから親則の顔を跨ぐようにすると下帯を解き、親則の顔を塞ぐように腰を下ろした。
「んんぅ……っ!」
体重の乗った尻肉が親則の顔面を覆い、丁度鼻に後孔が押し付けられて便臭が鼻につく。
「んんんっ!」
親則は勝重を退かそうともがいたがびくともせず、暴れる足を鹿島に掴まれてしまった。
「何ぞ、太くて臭い糞をひり出して気持ちがよくなるそうだな。臭いというのはこれより臭いのか?」
「んむぅっ……!」
言って勝重は後孔をぐいぐいと押し付けるように体を揺すった。
口枷をされた口ではろくに息も吸えず、鼻から呼吸をするしかない。
他人の後孔から漂う便臭を嗅がされ、逃げ場のない親則はただ勝重が退いてくれるのを待つしかなかった。
「おお、丁度よいところにいいものがあるな」
勝重は親則の胸に手を伸ばし、乳首を摘んだ。
「んんっ……」
突然乳首を弄られて親則はびくりと体を震わせ、上擦った声をあげる。
「なんだ、貴様は尻の匂いを嗅がされているのに乳首を弄られてよくなるというのか」
「んんぅっ……」
勝重は刺激に固くなった親則の乳首をこりこりと摘みながら言う。
鹿島は親則の足首を掴んでいた手を離すと足の間に体を割り込ませた。そして親則の陽根の根元に括られている革紐を解く。
「んっ、んぅ……っ、む、うぅ……っ」
剥き出しの後孔から漂う便臭と乳首からもたらされる快感、そして下腹の疼きに苛まれ、親則はもうどうしたらよいのかわからなかった。
「どうした、触れてもいないのに魔羅が大きくなっておるぞ。変わった奴よのう」
「ぅ、っ……!」
革紐を巻かれたまま数日間放っておかれた親則の陽根は、直接触れられなくとも乳首と後孔への刺激だけで膨張していた。
先走りを零すそれを楽しそうに勝重が見つめていると、別の部下が部屋に入ってきた。
「良晴殿と晴時殿が見えました」
「おう、通せ通せ」
勝重が言うと、程なくして良晴と晴時が通された。
「っ……!」
勝重が縛られた裸の男の顔に跨っている異様な光景を見て、二人は思わず足を止めた。
「これはこれは、良晴殿に晴時殿。待っておったぞ」
言って勝重はやっと親則の顔の上から退いて立ち上がった。
親則の顔が見え、良晴と晴時の二人は勝重が下に敷いていたのがあの親則だとわかると息を呑んだ。
親則のほうも視界に良晴と晴時を認め、身を強張らせた。
「ん、っ……!」
勝重は身を整えると親則の顔を踏みつけ、強引に晴時と良晴のほうを向かせる。
親則はそれに抵抗したが、それよりも勝重の踏みつける力のほうが強かった。
「ほら犬吠森……、おっと、ここにいるのは皆犬吠森であったな。どうだ親則、当代の犬吠森の棟梁の晴時殿と良晴殿だ。いずれも劣らぬ立派な武家、尻の匂いを嗅いで魔羅を大きくする貴様と血が繋がっているとは思えぬ」
「ん、ぐぅ……っ!」
揶揄うように言われ、羞恥と屈辱、怒りに震えながら親則が唸る。
「さあさあお二方、これから鹿衛が面白いものを見せてくれるのだ。座るがよろしい」
言って勝重は部下が用意した座布団を二人にすすめ、座るよう促した。
良晴と晴時は互いの様子を窺うように見合ってから、恐る恐る座布団に腰を下ろした。
勝重は親則の顔から足を退けると、鹿島のほうを向いて言った。
「では鹿衛、あとは任せる」
言うと勝重も良晴と晴時の隣に用意された座布団にどかりと座り込んだ。
「はい、殿」
鹿島は頷くと親則の体を起こし、それを後から抱くようにして座った。
それから鹿島の部下が縄を持って親則に近寄る。
抵抗する親則の足首を捕まえて足首を縛ると縄を首の後ろに通し、その縄をもう片方の足首に括りつけた。それが終わると脇に退く。
「ん、ううっ……!」
足を大きく開いたまま閉じられず、先走りを零しながらいきり勃つ陽根、その根元にある大きく膨らんだ陰嚢、股縄の結び目が深々と食い込む会陰と後孔が丸出しになっている。
秘部をさらけ出した親則は羞恥で顔を真っ赤に染めていた。
「これを解いてあげますね」
言うと鹿島はずっと親則を苛んでいた股縄を解いた。
縄の結び目で隠されていた後孔が露わになり、ぷっくりと肉の盛り上がった後孔は刺激を求めるようにひくついた。
「ほうら、親則殿。良晴殿と晴時殿が、親則殿の恥ずかしいところを見ていますよ」
「ぐ、ぅぅっ、んぅ……!」
親則は顔を横に逸らして二人を視界に入れないようにするが、顔の両脇を鹿島の手に押さえつけられて強引に前を向かされた。
「お二方の前ですが、口枷を嵌めたままで失礼します。何せ親則殿は魔羅が大好きなもので、口を開けば魔羅が欲しいとしか言わぬのです。ですので、こうして魔羅の形の口枷を噛ませているのです。これがあると親則殿も大人しくなります故」
「んんっ! んうっ……!」
親則は鹿島の言葉に異を唱えるように唸って、力の限り首を振った。それも、鹿島の手に押さえられていてはろくに叶わなかったが。
「良晴殿と晴時殿は親則殿の叔父上と従兄弟であらせられると聞きましたが、親則殿が斯様に淫らな御人だと知ってはおりましたか?」
鹿島の問いに、晴時は怯えながら首を横に振ってみせた。下手をすれば自分も同じ目に遭うと思ったからだ。
その答えに満足したように鹿島は笑った。
「そうなのですか。それはよかった。親則殿は高瀬の長としてよく人を導いたようですが、その本性は魔羅のことしか考えられぬ色狂い。棟梁どころか武家の男にあるまじき行い。このような男をよき長などと伝えては犬吠森の家の恥となります」
「そうじゃそうじゃ。この男は犬吠森の恥じゃ」
今まで黙っていた良晴が口を開いた。
「農民の腹から生まれた男が棟梁なんぞあり得んことじゃ! 少しばかり人からよく思われたくらいで思い上がりおって……。此奴が打ち首になって清々したと思っていたら、皆の前で裸になり魔羅を勃てておるとは……。生まれが下劣な者は品性も下劣じゃ」
良晴は忌々しげに吐き捨てた。
「おっと良晴殿、それは言いすぎでは」
嗜めるように勝重が言う。その言葉を聞いて良晴は勝重を睨みつけた。視線を受けながら勝重は眉ひとつ動かさずに続きを言った。
「親則殿とて好きでそうなったのではないはず。親則殿のことは鹿衛に任せておった。鹿衛、親則殿がこちらに来てから何があったか聞かせてはくれぬか。何か間違いでもあったのやもしれぬ」
白々しく勝重は言ってみせた。
勝重に振られ、鹿島は頷いて話を始めた。
「親則殿は鶴木に楯突いた高瀬の長。降伏したとてすぐさま打ち首になるところですが、俺に傷をつけるほどの剣の使い手。話くらいはしてみたいと親則殿にあれこれ聞いてみたのです」
言いながら鹿島は親則の尻に手を伸ばし、尻を揉みしだいた。
「聞けば親則殿は衆道も嗜まず妻も娶らず、養子を迎えて息子にしたといいます。これはもしや、魔羅の使い方を知らぬのではないかと聞いたら、恥ずかしいことに知らぬと言う。ですから魔羅の使い方を手解きしてやったのです」
鹿島はそう言うと尻を揉んでいた手を止め、後孔がよく見えるように尻たぶを広げて見せた。
「見てください、この可愛らしい尻穴を。綺麗な薄紅色をしてふっくらしています。良晴殿も晴時殿も見るのは初めてでしょう?」
「んぅ、ううぅ……!」
親則は嫌がるように身を捩ったが鹿島の体は小揺るぎもしなかった。
「この尻穴に俺の魔羅を入れてやって、こうしてまぐわうのだと教えてやりました。俺の太い魔羅を深々と咥え込んで、生娘のように喜んでいましたよ」
鹿島は指を伸ばして親則の後孔に触れる。それをもっと欲しがるように後孔がひくついた。
「そうしたら親則殿は、自分の魔羅を入れるより尻に入れられるほうが気持ちがよいのだと言いましてね。俺の魔羅が尻に欲しくてたまらないのだと言う。その様子を見ていたら魔羅の味を覚えさせてしまった俺にも責任がある気がしまして、せめて首を刎ねられるまでは親則殿を慰めようと、隙を見ては魔羅を入れてやっていたのです」
「うぅっ! んんぅ……っ! んむぅ、ぅ!」
わかりきった嘘を並べ立てる鹿島の声をかき消すように親則は唸るが、口枷をされていてはくぐもった声しか発することができない。
「しかし親則殿も大層な欲しがりでしてね。俺の精が尽き果てるまで魔羅をやっても足りぬ足りぬと言うのです。俺も親則殿にばかり構っているわけにはいかぬ身、張型や性具をやって一人で慰めるように言いました。そうしたら……」
鹿島はそこで言葉を切り、何も言えずに動けぬままの良晴と晴時に目をやった。勝重はにやにやと事の行方を楽しんでいる。
「そうしたらなんと、入れるより出すほうが気持ちよいと親則殿が言うのです。どういうことかと聞きましたら、これくらいの……」
言って鹿島は尻やっていた手を離し、親指と人差し指で輪を作ってみせた。
「これくらいの球を尻に入れて糞をするようにひり出すと、とびきり気持ちよいのだと。それだけでは飽き足らず、そうして遊んでいたら糞をするのも気持ちがよくなったと言います。親則殿が空言を言うような御人には見えませぬ故、ではやって見せろと言うと、俺の目の前でこういう風に足を広げて……」
鹿島は言いながら大きく広げられた親則の太腿に手を這わせた。
「魔羅を大きくさせ、二寸はあろうかと言うほど太くて臭い糞をひり出して、いったのですよ。子種をいっぱいに吐き出して」
先走りを滴らせながら勃ち上がっている親則の陽根を撫でさすりながら、鹿島は言ってみせた。
「んんっ! んぅ……っ!」
鹿島に有る事無い事並べ立てられ、親則は違うと声を上げる。
黙っていた勝重が身を乗り出し、親則の体をまじまじと見ながら口を開いた。
「鹿衛よ、それは本当か? お前に傷をつけたほどの武人が、そんな色狂いのわけがなかろう。良晴殿、晴時殿もおられるのだ。戯言はよさんか」
勝重の白々しい言葉に鹿島は違うと首を振った。
「いいえ、真にございます。俺も武士です、嘘などつきませぬ。今から証をご覧に入れましょう」
言うと鹿島は部下に目配せした。
竹筒の浣腸器を持った部下が親則の前に来ると、親則は何をされるか察して暴れ出した。
「んぐ、んんっぅ! うっ、んんぅ!」
「おやおや、浣腸されるのが嬉しいのですか、親則殿。そんなに焦らなくてもすぐに入れてあげますよ」
鹿島がそう言って親則の体を押さえつけると、部下は親則の後孔に嘴菅を挿して薬液を注ぐ。
「んんぅっ……!」
冷たい薬液が腹に流れ込んでくる不快感と、これから訪れる絶望に親則は呻く。
薬液を全て注ぎ込むと、親則の前に盥を置いてすぐに下がった。
「んぅ、う、んんぅ……っ、んんっ!」
やがて薬が効いて、親則の腹はごろごろと音を立て始めた。
親則の意思とは関係なく便意を催した体は溜まった便を押し出そうといきむ。
「ん、うぅん……っ!」
それを必死に後孔に力を込めて止めようとしたが、親則の漏らす声には明らかに快楽の響きが伴っていた。
媚薬を盛られ続け、何日もお預けを食らっていた親則の体は快楽を貪欲に求めていた。
直腸に溜まった便をぎゅうと締めつけ、前立腺が潰されるように刺激されると嫌が応にもそれを快楽と受け取ってしまうのである。
「ほら、浣腸をされてこんなに喜んでいるでしょう? 親則殿、もう出していいですよ」
鹿島は親則に言うが、そんなことできるわけがない。
人前で便をひり出す、それも自分を目の敵にしていた良晴の前でなど言語道断だ。
「う、んんぅっ! んっ、んん……っ!」
全身から脂汗を噴き出しながら必死に後孔を締め付けるが、それと同じくらい勝手に体はいきんでいる。
「う、んっ! ぐぅ、んんっ!」
「おかしいですね。薬が効いていないのでしょうか」
鹿島は白々しく言うとまた部下を呼んだ。
また浣腸器を持つ部下が目の前に現れたが、もう親則は限界だった。これ以上動いてどこかに力を込めようものなら漏れてしまう。
「んんんっ!」
無慈悲に後孔に嘴管が差し込まれ、また腹の中に薬液を注がれる。
強くなる便意と腹痛に必死に耐えていた親則だったが、やがて限界が訪れた。
「んぅ、んんんんっ……!」
窄まった後孔から薬液が噴き出し、破裂音をさせながら太い便塊が後孔を押し広げて排泄される。
数日に渡って親則を苛んでいた便塊が腸壁と後孔を擦り上げていき、その刺激に親則はついに絶頂を迎えることを許された。
背をのけぞらせて体を震わせ、いきり勃った陽根からどくりと精を吐き出す。
一度いきんだだけでは便は全て出し切らず、二度三度といきんで盥の中に大量の便をひり出し、その度に声を上げながら親則は達する。
やがて太い便塊を出すのが終わり、今度は水気のある軟便がびちゃびちゃと音を立てながら後孔から吐き出され、便塊の上に山と盛り上がった。
「っ……!」
親則は絶頂の余韻が残る体を、皆の見ている前で排便した羞恥に震わせていた。あまりの恥辱に眦には涙が浮かんでいる。
「おお、これは臭いな。こんなに臭いのは初めてだ。襖を開けい」
鼻をつまみながら大仰な言い方をして勝重が言う。
控えていた部下はすぐに襖を開け放ち、便がこんもりと山になっている盥を持って行った。
「どうです、良晴殿に晴時殿。親則殿はこんなに太い糞をして喜ぶような男なのです。皆の見ていた親則殿とは偽り、その本性はとんだ淫乱。このような者を良き棟梁として伝えてはなりません」
鹿島はそう結ぶと、良晴と晴時のほうを見やった。
良晴は何やら俯いて体を震わせている。
そしてついに堪え切れぬと言わんばかりに声を上げて笑い出した。
「親則、どうにも何を考えているのかわからぬ男じゃったが……。そうかそうか、貴様はこういう男だったのだな! 卑しい男じゃ。こんな奴が涼しい顔をして高瀬の長の座に座っていたのは腸が煮えくり返る思いじゃが、それ以上に滑稽じゃ! そうじゃろう晴時、こんなに臭くて太い糞をひり出しながら子種を出しおったぞ。こんなに面白い見世物はない!」
良晴に話を振られた晴時は心底脅えていた。
人一人の心をこうも踏みにじれるものなのかと。
有る事無い事並べ立てられ、それを拒否することもできずに痴態を晒した。
舌を噛んで死ぬことも許されず、名誉すら根こそぎ奪われた。
こんなことをする人間がいるのかと思うと恐ろしかった。
いや、こんなものは人間のすることではない。悪鬼のすることだ。
そして、今は親則に向けられている悪意が、何かの間違いで自分に向けられたらと思うと生きた心地がしなかった。
何があっても鶴木と良晴の機嫌を損ねてはならない。
皆の目がこちらをじろりと見つめている。反応を見られているのだ。
「……ま、まったくです! こっ、このような、淫蕩な男が棟梁だったとは! 犬吠森家の恥です!」
上擦った声で晴時は言った。
親則を認めていたというのに、我が身可愛さで罵るしかできぬ自分がこの上なく情けないものに思えた。
何が悪鬼だ。自分とて親則を辱める共犯者になり下がったのだ。
晴時は心の中で親則に何度も詫びた。
「ほらほら、当代の犬吠森家の棟梁晴時殿がお怒りですよ、親則殿」
言って鹿島は戯れに、親則の眦に溜まった涙を拭った。
「晴時殿は親則殿に罰が必要だと思いますか? 犬吠森の家名に泥を塗った罪に対する罰です」
鹿島に問われ、晴時は引き攣った愛想笑いを浮かべながら何回も首を縦に振ってみせた。
それを見て鹿島は目を細めて笑う。
「そうですね、俺も必要かと思います」
言うと鹿島は部下に目配せをすると、懐から短刀を取り出し親則の足を縛めていた縄を切った。
「あれを」
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