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第1話
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「ここは立ち入り禁止ですよ!」
若い青年の声が聞こえて、男は声のしたほうに振り向いた。
男の名はイングヴァル・イースグレンといい、この密林に集う冒険者の一人だった。
浅黒く日焼けした肌に、襟足の長い真っ黒な髪。長い旅で前髪は邪魔なほどに伸びてしまっていた。口の周りと顎に短い髭を生やしており、三十代ほどに見える。
きびきびとしていて年齢より若く見えるが、どこかくたびれた雰囲気を持っている妙な男だった。
ファーのついた紺色のフード付きマントに、藍色のキルトで作った膝丈の分厚いギャンベゾン――鎧の下に着る上衣――を着ていた。その下にも重ね着をしていて、ベルトをしているからかろうじて腰が締まっているシルエットをしていた。
褐色の革でできた揃いのブーツと分厚い手袋をしていて、毛布と旅道具を詰めた革袋を背負っている。
腰にはナイフと取り回し重視の短めの片手剣を提げていた。
なんということはない出で立ちなのだが、一年を通して温暖、暑いほどの気候のこの地に限っては場違いな格好と言わざるを得なかった。
これ以上ないというほどの厚着をしているイングヴァルは、ねっとりとまとわりつくような熱気の中、汗一つかかずに平然とした顔をしていた。
辺りには細長い葉を並べた籐が地面を埋め尽くすように生え、その覆いを押し退けて育った木は陽光を求めてうねうねと曲がりくねっている。
その木にはつる草が蜘蛛の巣のように木々の間を繋ぎ、容易に人が立ち入れない密林を形成していた。
薄暗い密林は見通しがきかず、声のしたほうに限らず周囲を見渡すが人の気配は感じられない。
木々の隙間から木漏れ日が差し、深緑の葉が陽の光に透けている。
木が陽の光を求めて成長するほど幾重にも重なった葉が光を遮り、地上にはわずかしか光が届かない。
より高く。より大きく。より広く。
この地に根を張った木々は生きるためにさらなる高みを目指し、芽吹いた葉はまた密林に影を落とし、地上に光のない瑞々しい煉獄を生み出すのである。
罪を清めた者から救われる。
そういう意味では、イングヴァルもこの煉獄に足を踏み入れた者の一人であった。
この密林には竜がいる。
竜の蓄えている数々の財宝の中にあらゆる望みを叶える宝があると聞いて、男はこの地を訪れた。
罪を雪ぐために、奇跡を求めている。
それが本当に罪だったかもわからない。
しかし周囲はイングヴァルの死を願った。
そうして、イングヴァルは死んだ。
イングヴァルはなかなか声の主を見つけられずに目を凝らす。
——魔物か、人間か。
この密林には様々な動物や魔物が生息している。
最寄りの街で聞いた噂では、ハーピー――女面鳥身の怪物が冒険者に襲い掛かると聞いた。人間の声を真似て獲物を誘い出し、足で蹴り殺してその死体を貪るのだという。
そして、冒険者を狙う追い剥ぎも多い。
「ふむ。空耳だったかな。やけにはっきりとした空耳だったが」
イングヴァルは顎に手を当てながら呟いた。落ち着いた声音だった。
イングヴァルは声の主を探すことを諦め、密林の奥へとまた歩き出した。
「こら! 人の話を聞きなさい! ここは教会が管理している土地です! 許可証を持たない者は入れません!」
また若い男の声がした。今度は後方、上からである。
振り返って見上げると、白いローブを羽織った金髪の若い青年が木の枝の上に立っていた。
青年は枝から軽々と飛び降りる。燕尾のように二股に分かれたローブがはためき、白い鳥の翼を思わせた。
青年はイングヴァルを怪しそうに見つめながら、慣れた足取りで近付いてきた。
ゆるやかに波打った金髪を後ろに撫でつけて額を出しており、切れ長の青緑の目は大きめでどこか幼さを残していた。十代半ばに見える。
向こう側が透けて見えるほど薄手の真っ白なローブは一目で上等なものとわかり、黄色の丈の長いベストを着ていた。ローブとベストには揃いの金縁の装飾が施されている。
「許可証を見せろって言うんだろう?」
言いながらイングヴァルは上着の内ポケットから手に収まるほどの大きさの木札を取り出し、青年に差し出した。
細長い木札には翼を象った紋章が描かれている。世に広く威光を知らしめている教えのシンボルだった。
端には穴が開けられ、独特な結び方で花を模した紐飾りがついている。
イングヴァルの近くまで来た青年は、イングヴァルのことを怪しそうにじろじろと眺めた。
「なんです、その格好は。そんな厚着をしてこの森を歩いていたんですか?」
言いながら金髪の青年はイングヴァルの手から木札を取った。
言葉遣いは丁寧だが、幼く見られないように背伸びしている感じがある。
「寒がりでね」
本気なのか冗談なのかわからないイングヴァルの言葉に青年は眉を寄せながら、許可証を矯めつ眇めつして確かめていた。
「この森に入った目的は? 一人でこの森を探索するのは危険です。立ち入るなら説明があったはずですが」
「魔物の研究の下請けってやつかな。魔物を倒して、骨とか牙とか内臓とか、そういうものを取ってきてくれって頼まれているんだ。北のフロード大学の連中さ」
真っ赤な嘘である。
嘘こそ自信たっぷりに言うのがいいとイングヴァルは思っていた。
「この許可証は偽物ですね」
青年はきっぱりと言い切った。
彼は怪しそうな目から、確信をもって不審者を見る目でイングヴァルを責め立てるように見つめていた。
「に、偽物⁉ そんな馬鹿な……」
「この札についている紐飾りは、偽造防止のために特別な結び方をしています。結び方を知っているのは教会の者だけ。これは結び目が違うので一目でわかります」
青年が言い終わる前にイングヴァルは駆け出していた。
「あっ、待て!」
「偽物だって? 高い金出して買ったのに……!」
この密林は魔物が棲息していて危険な場所であり、竜の溜め込んだ財宝目当ての冒険者が後を絶たないことから近年は教会の発行した許可証がないと入ることができなくなった。
その許可証も、身元の確かな学者などが研究目的に入る場合や、敬虔な信者が巡礼に訪れる場合くらいしか発行されない。
それでもイングヴァルのような者が教会の目を盗んで入り込むため、青年のように見張りが巡回しているのだ。
イングヴァルは最寄りの町の酒場で、怪しい男に声をかけられ大枚を叩いて許可証を買った。
その男はいかにも怪しい風体だったので、こんなに怪しいのならば裏社会に精通しているに違いないと踏んだのだが、ただの怪しい男だったようだ。
偽物だったとは――。
許可なく立ち入った者は身柄を拘束され、臭くて汚い檻の中で裁判を待つ羽目になる。保釈金を払えばすぐに出られるが、そんな金はない。
裁判とて形だけで、最近建造を始めた大聖堂の労働に駆り出されるだけだ。
そんなことは御免被る。なんとしてでも逃げなくてはならない。
何度も木の根に足を引っかけて転びそうになったが、意地で走り続ける。
「逃げるな! 不法侵入者!」
追いかけてきた青年は叫びながら前方に手を突き出すと、魔法陣が浮かび上がって光球を放った。
これが人間に当たれば暫しの間動けなくなる。
イングヴァルは近付いてくる魔力の気配と音を頼りに、次々と放たれる光球を避けていった。
「器用なやつ……!」
青年は毒づいた。
イングヴァルはなおも走り続ける。青年はどこまで追いかけて来るのかと思いを巡らせたところで、突然視界が開けた。
崖だ。
突然に地面が途切れてイングヴァルは足を止めた。
密林は途切れ、一段低い大地にまた鬱蒼とした密林が広がっている。そこを横切るように大きな川が流れており、支流がいくつも伸びている。その先には大きな湖があった。
イングヴァルは来た道を振り返って考える。
青年とはまだ距離がある。
イングヴァルは持っていた革袋を木の陰に隠し、近くにある木に登り始めた。
人は何かを探すとき左右ばかり気にかけて、案外上を見ないものである。
木の幹に巻き付いたつるを頼りに登り、十分な高さになると横に張り出した大きな枝に乗り、ひとまず安心して息を整えた。
下の様子を窺っているとすぐさま青年が追いついてきた。
「どこだ……!」
イングヴァルを見失い、青年は辺りを見回す。
その様子にイングヴァルが口の端を吊り上げた瞬間、乗っていた枝がみしみしと派手な音を立てながら折れた。
「なっ……!」
思いもしなかった事態に受け身も取れずにイングヴァルは地面に落ちた。
「いでっ……」
「あっ! そんなところに!」
樹上から突然落ちてきたイングヴァルに青年が駆け寄ろうとしたその時だった。
■■■■■■――!
びりびりと振動を伝えるほどの魔物の咆哮が上がった。続いて地面が揺れる。
木がめきめきと倒れる音がし、地面に倒れた衝撃が伝わってくる。鳥がけたたましく鳴きながら我先にと空に逃げていった。
イングヴァルと金髪の青年は、互いのことは忘れて音の正体を見極めようとした。
薄暗い密林の中は視界が悪い。何かが起こっているのはわかるが、その正体がわからないのは嫌な気分にさせるものだ。
ずしん、ずしんと規則的に地響きが聞こえる。
巨大な何かがこちらに向かっている。そうとしか思えなかった。
イングヴァルは立ち上がると青年に話しかけた。
「い、今のうちに逃げよう。僕はこっち、君はあっち」
右手と左手で正反対のほうを指差しながらイングヴァルは言う。
「そう言って逃げるつもりでしょう!」
「そんなことない! こういうときは二手に分かれた方が生存率が上がるだろう?」
二人が言い争っているうちに音の正体はこちらに近付いてきている。
イングヴァルも逃げ出したかったが、背後は崖、目の前には青年が立ちはだかっている。
青年は身の安全よりも侵入者を捕らえることを優先するのだと、イングヴァルをじっと睨みつけている。
そうしている間にも周りの木はなぎ倒され、地響きと地面の振動も大きくなっている。
そしてついに音の正体が姿を表した。
「なっ……!」
それは巨大な猪だった。
象ほどの大きさのある巨猪が二人めがけて突き進んでくる。
赤黒くて分厚い体毛はいかなる衝撃をも通さないように見え、木にぶつかっても目立った外傷も見受けられない。
牙も傷ひとつなく念入りに研がれて鈍い輝きを放っている。
体毛も牙も驚異的なものであったが、一番の武器はその巨体だ。
その巨躯が勢いをつけてぶつかってきたら、人間などひとたまりもない。イングヴァルと青年は猪の進路から外れるように横に退いた。
しかし、細く張り出した崖は猪の巨体を支えきれずに地面に亀裂が走る。
猪が一歩踏み出すほどに亀裂は大きくなり、そして地面が崩れ落ちた。
「馬鹿なっ……!」
このまま落ちれば確実に死ぬであろう高さから、イングヴァルは空中に放り出された。
頭を下に真っ逆さまに落ちる中、太陽が目に入る。
自分に恵みを与えることはなくなった大いなる炎。
届かないと知りながら、その輝きに手を伸ばした。
自分が罪人だというなら、罪を贖った先にまた温もりを手にすることができるのだろうか。
そう思いながら旅をしていたが、それも叶いそうにない――。
これで終わりだとイングヴァルは目を閉じた。
「手を!」
諦めた瞬間、青年の声が聞こえた。
目を開けば青年がこちらに手を差し出していた。
その背には鳥のような白い翼。いや、ローブの見間違いかもしれない。
青年は虚空に伸ばしたままだったイングヴァルの手を何とか掴み、翼を羽ばたかせて崩落する崖から離れようとする。
「君は……」
イングヴァルは自分の手を握っている青年をまじまじと見つめた。
見間違いではない。本物の翼だ。
太陽の光を受けて金色に輝く白い羽を持った、猛禽のような雄々しい翼。
月並みながら、天使のようだとイングヴァルは思った。
「あっ……!」
落ちてきた石が翼にぶつかって金髪の青年は呻き声をあげた。
白い羽が抜けて舞い散り、翼には血が滲んでいる。
「大丈夫かい!」
「湖までなら飛べます! なるべく動かないで!」
金髪の青年は気合を入れるように翼を羽ばたかせると、翼を大きく広げて湖に向けて滑空していった。
湖までは少し距離があったものの、森には木が邪魔して降りられそうにない。妥当な選択だった。
イングヴァルは、落ちないように青年の手を精一杯握っていたものの、革手袋越しでは少しずつ手が滑ってしまう。
少し逡巡した末に、空いているほうの手にはめた革手袋を口でくわえて外して腰のベルトに引っかけると、手を挙げて青年に声をかけた。
「大変申し訳ないんだが、こっちの手を握ってくれないかい」
「え? ええ……」
飛ぶのに集中しているからか、青年は少ししてからイングヴァルが何を言っていたかを理解して、イングヴァルの手を取った。
浅黒く、骨太のごつごつとしたイングヴァルの手を、白くてすらりとした青年の手が触れる。
「んんっ⁉」
青年はイングヴァルの手に触れて驚いた。集中が乱れたのか翼がびくりと強張り、がくんと高度が落ちたのを羽ばたいて持ち直した。
青年は恐る恐るイングヴァルの手を確かめるように指先でちょん、と触れてから、差し出された手をおっかなびっくり握り締めた。
しっかりと握れると思ったのか、もう片方の手もイングヴァルの手を握った。
やっと態勢が安定したからか、イングヴァルは辺りを見る余裕ができた。
空から見る密林は緑の絨毯を敷いたように、視界を埋め尽くしている。
この密林のどこかに、竜の巣がある。
しかし、竜はもう何年も目撃証言がない。
生きていれば竜のあとをつけて巣を見つけることもできようが、死んでしまったのか、長い眠りについているのか。そうとなると地道に森を歩いて巣を探すしかなかった。
竜は洞窟などに巣を作るものが多いが、この密林はそこかしこに巨大な地下洞窟があり、その洞窟も蟻の巣のように複雑に入り組んでいる。
この広大な密林から竜の巣を探すのは、干し草の中から針を探すようなものだ。
「気が遠くなるな……」
イングヴァルは小さく呟いた。
大体、竜が願いを叶える財宝を持っている、というのも噂話に過ぎないのだ。誰も確認したわけではない。
たまたま竜の巣にたどり着いた一人の冒険者が命からがら帰ってきて、竜の巣にたんまりと財宝があったと持ち帰った黄金の腕輪や首飾りを見せて死んだ、というのが噂の発端である。しかし、そこに居合わせた人間とやらは見つからない。
何でも願いの叶う宝などありはしないかもしれない。
しかし、そんな不確かなものにさえイングヴァルは縋りたかったのだ。
いよいよ湖が近付き、青年は高さを調整するように何度か羽ばたくと水際の開けた草地にイングヴァルを下ろした。その隣に青年も足をつける。
イングヴァルは青年をまじまじと見た。
少し息の上がった青年は額に流れた汗をローブの裾で拭い、乱れた髪を手櫛で整えた。
長身なイングヴァルよりはやや背が低い。
青年は広げた翼を見やり、慎重に動かして傷のほどを確認していた。動かすと痛むのか顔をしかめている。白い翼に滲む赤い血が痛々しかった。
その様子を見てイングヴァルは申し訳ない気持ちになった。自分なんかを助けるために傷を負わせてしまったと。
空を飛べるというなら、自分など構わずに安全なところまで逃げていればよかったのだ。
それをせずに自分に手を差し伸べてくれた。
よくできた人間だとイングヴァルは思った。
やがて青年は翼を折り畳んで背に隠した。見ればローブの背中には翼の出し入れができるようスリットが入っている。
どのような仕組みであの大きな翼が隠れているのか気になったが、今はそんな場合ではないとイングヴァルは思い直し、青年に歩み寄った。
「あ……、ありがとう。君のおかげで助かったよ。しかし、その翼は一体……」
イングヴァルは革手袋を嵌めながら、驚きを隠せないといった様子で青年に尋ねた。
翼が生えるのは魔法だとしても、単独で空を飛ぶ人間がいるなど聞いたことがない。
青年は、いたずらの見つかった子供のようなばつの悪そうな顔をして黙っていた。言葉が見つからないようだ。
やがて、はっと何かを思いついたようにイングヴァルに向き直った。
「そ、そうだ、あなただって何者ですか。死んでるみたいに手が冷たかった」
「冷え性なんだよ」
イングヴァルは冗談めかして言った。
「嘘です。嘘はよくない。師匠もそう言ってた」
からかわれて不快だと、青年はむっとした顔で言う。
「まあまあ、いいじゃないか。多少の秘密がある方が人間魅力的ってものさ。僕も、君もね。それに、腹の探り合いをするよりやるべきことがあるだろう?」
言ってイングヴァルは両手を広げて辺りを指した。
湖を囲むように密林があり、東には今までいた高台がある。
日は中天を過ぎて傾きかけていた。
どこかに移動するにせよ、拠点を作って野宿をするにせよ、時間がないのは明白だった。
「協力した方がいいと思わないかい? 君の詮索はしない」
友好的だと示すように笑いながらイングヴァルは青年に手を差し出した。
青年は少しの間迷い、もう一回翼を出して様子を見ると、渋々といった様子でイングヴァルの手を握った。
「僕はイングヴァルだ。イングヴァル・イースグレン」
「アウレリオ、です。アウレリオ・アウジェッロ」
青年はそう名乗り返した。
黄金を意味するその名前は、日に当たると黄金に輝く髪や翼に相応しい名前だった。
イングヴァルは握った手を大袈裟にぶんぶんと上下に振ってから、アウレリオの手を離した。
若い青年の声が聞こえて、男は声のしたほうに振り向いた。
男の名はイングヴァル・イースグレンといい、この密林に集う冒険者の一人だった。
浅黒く日焼けした肌に、襟足の長い真っ黒な髪。長い旅で前髪は邪魔なほどに伸びてしまっていた。口の周りと顎に短い髭を生やしており、三十代ほどに見える。
きびきびとしていて年齢より若く見えるが、どこかくたびれた雰囲気を持っている妙な男だった。
ファーのついた紺色のフード付きマントに、藍色のキルトで作った膝丈の分厚いギャンベゾン――鎧の下に着る上衣――を着ていた。その下にも重ね着をしていて、ベルトをしているからかろうじて腰が締まっているシルエットをしていた。
褐色の革でできた揃いのブーツと分厚い手袋をしていて、毛布と旅道具を詰めた革袋を背負っている。
腰にはナイフと取り回し重視の短めの片手剣を提げていた。
なんということはない出で立ちなのだが、一年を通して温暖、暑いほどの気候のこの地に限っては場違いな格好と言わざるを得なかった。
これ以上ないというほどの厚着をしているイングヴァルは、ねっとりとまとわりつくような熱気の中、汗一つかかずに平然とした顔をしていた。
辺りには細長い葉を並べた籐が地面を埋め尽くすように生え、その覆いを押し退けて育った木は陽光を求めてうねうねと曲がりくねっている。
その木にはつる草が蜘蛛の巣のように木々の間を繋ぎ、容易に人が立ち入れない密林を形成していた。
薄暗い密林は見通しがきかず、声のしたほうに限らず周囲を見渡すが人の気配は感じられない。
木々の隙間から木漏れ日が差し、深緑の葉が陽の光に透けている。
木が陽の光を求めて成長するほど幾重にも重なった葉が光を遮り、地上にはわずかしか光が届かない。
より高く。より大きく。より広く。
この地に根を張った木々は生きるためにさらなる高みを目指し、芽吹いた葉はまた密林に影を落とし、地上に光のない瑞々しい煉獄を生み出すのである。
罪を清めた者から救われる。
そういう意味では、イングヴァルもこの煉獄に足を踏み入れた者の一人であった。
この密林には竜がいる。
竜の蓄えている数々の財宝の中にあらゆる望みを叶える宝があると聞いて、男はこの地を訪れた。
罪を雪ぐために、奇跡を求めている。
それが本当に罪だったかもわからない。
しかし周囲はイングヴァルの死を願った。
そうして、イングヴァルは死んだ。
イングヴァルはなかなか声の主を見つけられずに目を凝らす。
——魔物か、人間か。
この密林には様々な動物や魔物が生息している。
最寄りの街で聞いた噂では、ハーピー――女面鳥身の怪物が冒険者に襲い掛かると聞いた。人間の声を真似て獲物を誘い出し、足で蹴り殺してその死体を貪るのだという。
そして、冒険者を狙う追い剥ぎも多い。
「ふむ。空耳だったかな。やけにはっきりとした空耳だったが」
イングヴァルは顎に手を当てながら呟いた。落ち着いた声音だった。
イングヴァルは声の主を探すことを諦め、密林の奥へとまた歩き出した。
「こら! 人の話を聞きなさい! ここは教会が管理している土地です! 許可証を持たない者は入れません!」
また若い男の声がした。今度は後方、上からである。
振り返って見上げると、白いローブを羽織った金髪の若い青年が木の枝の上に立っていた。
青年は枝から軽々と飛び降りる。燕尾のように二股に分かれたローブがはためき、白い鳥の翼を思わせた。
青年はイングヴァルを怪しそうに見つめながら、慣れた足取りで近付いてきた。
ゆるやかに波打った金髪を後ろに撫でつけて額を出しており、切れ長の青緑の目は大きめでどこか幼さを残していた。十代半ばに見える。
向こう側が透けて見えるほど薄手の真っ白なローブは一目で上等なものとわかり、黄色の丈の長いベストを着ていた。ローブとベストには揃いの金縁の装飾が施されている。
「許可証を見せろって言うんだろう?」
言いながらイングヴァルは上着の内ポケットから手に収まるほどの大きさの木札を取り出し、青年に差し出した。
細長い木札には翼を象った紋章が描かれている。世に広く威光を知らしめている教えのシンボルだった。
端には穴が開けられ、独特な結び方で花を模した紐飾りがついている。
イングヴァルの近くまで来た青年は、イングヴァルのことを怪しそうにじろじろと眺めた。
「なんです、その格好は。そんな厚着をしてこの森を歩いていたんですか?」
言いながら金髪の青年はイングヴァルの手から木札を取った。
言葉遣いは丁寧だが、幼く見られないように背伸びしている感じがある。
「寒がりでね」
本気なのか冗談なのかわからないイングヴァルの言葉に青年は眉を寄せながら、許可証を矯めつ眇めつして確かめていた。
「この森に入った目的は? 一人でこの森を探索するのは危険です。立ち入るなら説明があったはずですが」
「魔物の研究の下請けってやつかな。魔物を倒して、骨とか牙とか内臓とか、そういうものを取ってきてくれって頼まれているんだ。北のフロード大学の連中さ」
真っ赤な嘘である。
嘘こそ自信たっぷりに言うのがいいとイングヴァルは思っていた。
「この許可証は偽物ですね」
青年はきっぱりと言い切った。
彼は怪しそうな目から、確信をもって不審者を見る目でイングヴァルを責め立てるように見つめていた。
「に、偽物⁉ そんな馬鹿な……」
「この札についている紐飾りは、偽造防止のために特別な結び方をしています。結び方を知っているのは教会の者だけ。これは結び目が違うので一目でわかります」
青年が言い終わる前にイングヴァルは駆け出していた。
「あっ、待て!」
「偽物だって? 高い金出して買ったのに……!」
この密林は魔物が棲息していて危険な場所であり、竜の溜め込んだ財宝目当ての冒険者が後を絶たないことから近年は教会の発行した許可証がないと入ることができなくなった。
その許可証も、身元の確かな学者などが研究目的に入る場合や、敬虔な信者が巡礼に訪れる場合くらいしか発行されない。
それでもイングヴァルのような者が教会の目を盗んで入り込むため、青年のように見張りが巡回しているのだ。
イングヴァルは最寄りの町の酒場で、怪しい男に声をかけられ大枚を叩いて許可証を買った。
その男はいかにも怪しい風体だったので、こんなに怪しいのならば裏社会に精通しているに違いないと踏んだのだが、ただの怪しい男だったようだ。
偽物だったとは――。
許可なく立ち入った者は身柄を拘束され、臭くて汚い檻の中で裁判を待つ羽目になる。保釈金を払えばすぐに出られるが、そんな金はない。
裁判とて形だけで、最近建造を始めた大聖堂の労働に駆り出されるだけだ。
そんなことは御免被る。なんとしてでも逃げなくてはならない。
何度も木の根に足を引っかけて転びそうになったが、意地で走り続ける。
「逃げるな! 不法侵入者!」
追いかけてきた青年は叫びながら前方に手を突き出すと、魔法陣が浮かび上がって光球を放った。
これが人間に当たれば暫しの間動けなくなる。
イングヴァルは近付いてくる魔力の気配と音を頼りに、次々と放たれる光球を避けていった。
「器用なやつ……!」
青年は毒づいた。
イングヴァルはなおも走り続ける。青年はどこまで追いかけて来るのかと思いを巡らせたところで、突然視界が開けた。
崖だ。
突然に地面が途切れてイングヴァルは足を止めた。
密林は途切れ、一段低い大地にまた鬱蒼とした密林が広がっている。そこを横切るように大きな川が流れており、支流がいくつも伸びている。その先には大きな湖があった。
イングヴァルは来た道を振り返って考える。
青年とはまだ距離がある。
イングヴァルは持っていた革袋を木の陰に隠し、近くにある木に登り始めた。
人は何かを探すとき左右ばかり気にかけて、案外上を見ないものである。
木の幹に巻き付いたつるを頼りに登り、十分な高さになると横に張り出した大きな枝に乗り、ひとまず安心して息を整えた。
下の様子を窺っているとすぐさま青年が追いついてきた。
「どこだ……!」
イングヴァルを見失い、青年は辺りを見回す。
その様子にイングヴァルが口の端を吊り上げた瞬間、乗っていた枝がみしみしと派手な音を立てながら折れた。
「なっ……!」
思いもしなかった事態に受け身も取れずにイングヴァルは地面に落ちた。
「いでっ……」
「あっ! そんなところに!」
樹上から突然落ちてきたイングヴァルに青年が駆け寄ろうとしたその時だった。
■■■■■■――!
びりびりと振動を伝えるほどの魔物の咆哮が上がった。続いて地面が揺れる。
木がめきめきと倒れる音がし、地面に倒れた衝撃が伝わってくる。鳥がけたたましく鳴きながら我先にと空に逃げていった。
イングヴァルと金髪の青年は、互いのことは忘れて音の正体を見極めようとした。
薄暗い密林の中は視界が悪い。何かが起こっているのはわかるが、その正体がわからないのは嫌な気分にさせるものだ。
ずしん、ずしんと規則的に地響きが聞こえる。
巨大な何かがこちらに向かっている。そうとしか思えなかった。
イングヴァルは立ち上がると青年に話しかけた。
「い、今のうちに逃げよう。僕はこっち、君はあっち」
右手と左手で正反対のほうを指差しながらイングヴァルは言う。
「そう言って逃げるつもりでしょう!」
「そんなことない! こういうときは二手に分かれた方が生存率が上がるだろう?」
二人が言い争っているうちに音の正体はこちらに近付いてきている。
イングヴァルも逃げ出したかったが、背後は崖、目の前には青年が立ちはだかっている。
青年は身の安全よりも侵入者を捕らえることを優先するのだと、イングヴァルをじっと睨みつけている。
そうしている間にも周りの木はなぎ倒され、地響きと地面の振動も大きくなっている。
そしてついに音の正体が姿を表した。
「なっ……!」
それは巨大な猪だった。
象ほどの大きさのある巨猪が二人めがけて突き進んでくる。
赤黒くて分厚い体毛はいかなる衝撃をも通さないように見え、木にぶつかっても目立った外傷も見受けられない。
牙も傷ひとつなく念入りに研がれて鈍い輝きを放っている。
体毛も牙も驚異的なものであったが、一番の武器はその巨体だ。
その巨躯が勢いをつけてぶつかってきたら、人間などひとたまりもない。イングヴァルと青年は猪の進路から外れるように横に退いた。
しかし、細く張り出した崖は猪の巨体を支えきれずに地面に亀裂が走る。
猪が一歩踏み出すほどに亀裂は大きくなり、そして地面が崩れ落ちた。
「馬鹿なっ……!」
このまま落ちれば確実に死ぬであろう高さから、イングヴァルは空中に放り出された。
頭を下に真っ逆さまに落ちる中、太陽が目に入る。
自分に恵みを与えることはなくなった大いなる炎。
届かないと知りながら、その輝きに手を伸ばした。
自分が罪人だというなら、罪を贖った先にまた温もりを手にすることができるのだろうか。
そう思いながら旅をしていたが、それも叶いそうにない――。
これで終わりだとイングヴァルは目を閉じた。
「手を!」
諦めた瞬間、青年の声が聞こえた。
目を開けば青年がこちらに手を差し出していた。
その背には鳥のような白い翼。いや、ローブの見間違いかもしれない。
青年は虚空に伸ばしたままだったイングヴァルの手を何とか掴み、翼を羽ばたかせて崩落する崖から離れようとする。
「君は……」
イングヴァルは自分の手を握っている青年をまじまじと見つめた。
見間違いではない。本物の翼だ。
太陽の光を受けて金色に輝く白い羽を持った、猛禽のような雄々しい翼。
月並みながら、天使のようだとイングヴァルは思った。
「あっ……!」
落ちてきた石が翼にぶつかって金髪の青年は呻き声をあげた。
白い羽が抜けて舞い散り、翼には血が滲んでいる。
「大丈夫かい!」
「湖までなら飛べます! なるべく動かないで!」
金髪の青年は気合を入れるように翼を羽ばたかせると、翼を大きく広げて湖に向けて滑空していった。
湖までは少し距離があったものの、森には木が邪魔して降りられそうにない。妥当な選択だった。
イングヴァルは、落ちないように青年の手を精一杯握っていたものの、革手袋越しでは少しずつ手が滑ってしまう。
少し逡巡した末に、空いているほうの手にはめた革手袋を口でくわえて外して腰のベルトに引っかけると、手を挙げて青年に声をかけた。
「大変申し訳ないんだが、こっちの手を握ってくれないかい」
「え? ええ……」
飛ぶのに集中しているからか、青年は少ししてからイングヴァルが何を言っていたかを理解して、イングヴァルの手を取った。
浅黒く、骨太のごつごつとしたイングヴァルの手を、白くてすらりとした青年の手が触れる。
「んんっ⁉」
青年はイングヴァルの手に触れて驚いた。集中が乱れたのか翼がびくりと強張り、がくんと高度が落ちたのを羽ばたいて持ち直した。
青年は恐る恐るイングヴァルの手を確かめるように指先でちょん、と触れてから、差し出された手をおっかなびっくり握り締めた。
しっかりと握れると思ったのか、もう片方の手もイングヴァルの手を握った。
やっと態勢が安定したからか、イングヴァルは辺りを見る余裕ができた。
空から見る密林は緑の絨毯を敷いたように、視界を埋め尽くしている。
この密林のどこかに、竜の巣がある。
しかし、竜はもう何年も目撃証言がない。
生きていれば竜のあとをつけて巣を見つけることもできようが、死んでしまったのか、長い眠りについているのか。そうとなると地道に森を歩いて巣を探すしかなかった。
竜は洞窟などに巣を作るものが多いが、この密林はそこかしこに巨大な地下洞窟があり、その洞窟も蟻の巣のように複雑に入り組んでいる。
この広大な密林から竜の巣を探すのは、干し草の中から針を探すようなものだ。
「気が遠くなるな……」
イングヴァルは小さく呟いた。
大体、竜が願いを叶える財宝を持っている、というのも噂話に過ぎないのだ。誰も確認したわけではない。
たまたま竜の巣にたどり着いた一人の冒険者が命からがら帰ってきて、竜の巣にたんまりと財宝があったと持ち帰った黄金の腕輪や首飾りを見せて死んだ、というのが噂の発端である。しかし、そこに居合わせた人間とやらは見つからない。
何でも願いの叶う宝などありはしないかもしれない。
しかし、そんな不確かなものにさえイングヴァルは縋りたかったのだ。
いよいよ湖が近付き、青年は高さを調整するように何度か羽ばたくと水際の開けた草地にイングヴァルを下ろした。その隣に青年も足をつける。
イングヴァルは青年をまじまじと見た。
少し息の上がった青年は額に流れた汗をローブの裾で拭い、乱れた髪を手櫛で整えた。
長身なイングヴァルよりはやや背が低い。
青年は広げた翼を見やり、慎重に動かして傷のほどを確認していた。動かすと痛むのか顔をしかめている。白い翼に滲む赤い血が痛々しかった。
その様子を見てイングヴァルは申し訳ない気持ちになった。自分なんかを助けるために傷を負わせてしまったと。
空を飛べるというなら、自分など構わずに安全なところまで逃げていればよかったのだ。
それをせずに自分に手を差し伸べてくれた。
よくできた人間だとイングヴァルは思った。
やがて青年は翼を折り畳んで背に隠した。見ればローブの背中には翼の出し入れができるようスリットが入っている。
どのような仕組みであの大きな翼が隠れているのか気になったが、今はそんな場合ではないとイングヴァルは思い直し、青年に歩み寄った。
「あ……、ありがとう。君のおかげで助かったよ。しかし、その翼は一体……」
イングヴァルは革手袋を嵌めながら、驚きを隠せないといった様子で青年に尋ねた。
翼が生えるのは魔法だとしても、単独で空を飛ぶ人間がいるなど聞いたことがない。
青年は、いたずらの見つかった子供のようなばつの悪そうな顔をして黙っていた。言葉が見つからないようだ。
やがて、はっと何かを思いついたようにイングヴァルに向き直った。
「そ、そうだ、あなただって何者ですか。死んでるみたいに手が冷たかった」
「冷え性なんだよ」
イングヴァルは冗談めかして言った。
「嘘です。嘘はよくない。師匠もそう言ってた」
からかわれて不快だと、青年はむっとした顔で言う。
「まあまあ、いいじゃないか。多少の秘密がある方が人間魅力的ってものさ。僕も、君もね。それに、腹の探り合いをするよりやるべきことがあるだろう?」
言ってイングヴァルは両手を広げて辺りを指した。
湖を囲むように密林があり、東には今までいた高台がある。
日は中天を過ぎて傾きかけていた。
どこかに移動するにせよ、拠点を作って野宿をするにせよ、時間がないのは明白だった。
「協力した方がいいと思わないかい? 君の詮索はしない」
友好的だと示すように笑いながらイングヴァルは青年に手を差し出した。
青年は少しの間迷い、もう一回翼を出して様子を見ると、渋々といった様子でイングヴァルの手を握った。
「僕はイングヴァルだ。イングヴァル・イースグレン」
「アウレリオ、です。アウレリオ・アウジェッロ」
青年はそう名乗り返した。
黄金を意味するその名前は、日に当たると黄金に輝く髪や翼に相応しい名前だった。
イングヴァルは握った手を大袈裟にぶんぶんと上下に振ってから、アウレリオの手を離した。
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