オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将

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第35話 オッサン齢53歳にして熱くなる。

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 コロセ、コロセ、コロセ。

 魂を蝕むように、頭の中が命令でいっぱいになる。

 ダメだ!

 わずかに残った理性で抵抗する。

 俺の装備は手加減が出来ない。

 1発でも当たってしまえばそれで終わりだ。

 少しでも抵抗が緩み、たった1発でも、それがどんなに軽くても、その瞬間彼女の命は消える。

 千紗が視界に入る。

 コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ!

 コロサナイ、コロサナイ、コロサナイ、コロサナイ、コロサナイ、コロサナイ!

 耐えろ!耐えろ!

 俺は堪忍者、堪える事しか出来ない職場だ。

 今こそ堪える時だ!

 ころせ、ころせ、ころせ、ころせ、ころせ、ころせ!

 ころさない、ころさない、ころさない、ころさない、ころさない、ころさない!

 俺は自分のステータスに書かれて居た解説を思い出す。

 堪忍者
 堪忍をする、又はさせる者
 そのしぶとさは他の追随を許さない。
 しつこく相手に食い下がり、堪忍に特化したクラス

 俺のクラスは堪忍に特化したクラスなんだ!

 ネットで調べた堪忍の意味を思い出す。

 堪忍(読み)カンニン
 ① 不利な状況にあって堪え忍ぶこと。こらえること。がまんすること。身体的苦痛や苦しい境遇に堪えることをいう。
 ② 怒りをこらえて、他人のあやまちを許すこと。勘弁。

 堪えろ!
 忍べ!

 堪え難堪え、忍び難きを忍ぶ。
 ここで堪えずに何処で堪える

 殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ!

 殺さない、殺さない、殺さない、殺さない、殺さない、殺さない!

 愛する!

「うぉぉおお!」
 俺は雄叫びをあげた。

 身体がふらつき、片膝をついた。

「堪えた!堪えきった!」
 俺は敵を睨みつけながら、大声で宣言する。

「そ、そんなバカな…もう1度じゃ!もう1度加護と力を与える!妾にひれ伏せ!」

 何かの強制力が俺の身体に働く。

 だが、1度堪えきったものをもう1度くらっても、もう堪えられるという事実が俺の中にある。

 その為か先ほどより簡単に抵抗できた。

 そういえば、笹かまが何度も同じ状態異常をかけると、どんどん相手にかかりづらくなるって言ってたな。

 確か、オークキングを麻痺らせた時か。

 そんな事を考えながら、ゆっくりと敵に近づいていく。

「ヒィィィ!」
 相手が腰を抜かしたのか、尻もちをついた状態で後ずさっていく。

「お前は俺の大切な人を殺そうとした!
 しかも、俺の手でだ!
 覚悟は出来てるんだろうな…」

 怒りだけではなく、何か力が溢れてくる感覚が俺をより興奮状態にする。
 身体の内側から、滾るような熱さが溢れかってくる感覚だ

「タスケテ、タスケテ」
 泣きながら、うずくまる小さい敵がそこにいる。

 1発殴ればそれで終わりだ。

 俺はシールドを振り上げた。

「ヒィィ」
 敵が小さく悲鳴をあげる。

 …
 …
 …

 …振り下ろせない。

 うずくまり、泣きじゃくる、小さい女の子。

「ずるいぞ、まるで俺が悪者みたいじゃないか」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
 泣きながら謝る敵。

「お前、名前なんて言うんだ?」

「み、魅夢ミーム」

「お前はヴァンパイアなんだよな」

「うん、ナイトメアヴァンパイア」
 恐怖の為か、それとも今までが演技か、すっかり受け答えが幼児化してる。

「ナイトメア?」
 まだ、へたり込んで動けないでいる千紗の方に振り向いた。

 彼女もフルフル首を横に振っている。

「お前が居た場所って何階くらいにあるんだ?」

「わかんない」

「何故に?」

「逃してもらったから、もしかしたらここと違う場所かもしれない」

「じゃあ、まずはその復讐相手が何処にいるかから探さないとならないのか?」

「うん」

 思わず、うーんと唸ってしまう。

 やっと復活して近づいて来た千紗をみる。

「あのさ、申し訳ない「良いですよ」」

「この子殺せないんでしょ?良いですよ、鉄也さんの思った通りにしてください」

「ありがとう」
 出会ってそれほど経ってないのに誰よりも俺を理解している。
 そんな気持ちにさせてくれる一言だった。

 うずくまり、泣きじゃくり、怯えている幼い子、これがモンスターであり俺たちを殺そうとした奴だと頭では理解しているんだが、どうしても殺せない。

「なぁ、死にたくないか?」

「うん」

「お前は俺たちを殺そうとしたんだぞ、殺そうとする奴は殺されても文句言えないんだぞ、分かってるか?」

「ごめんなさい」

「謝って済む問題じゃない」

「う、う、う」
 また泣き出した。

「俺にはお前を従えるスキルがある、それで俺の従魔になるなら殺さない」

「う…」

「その代わり俺の言う事聞くんだぞ、ダメって言ったらダメ、やれって言ったらやる」

「うん」

「彼女も言うことも聞くんだぞ、いいね」

「うん」

 今ならスキルが発動しそうな気がする。

 スキル発動。
『ならぬ堪忍するが堪忍』

 魅夢と何かがつながった感触がある。

「よろしくな」

「うん、よろしくねパパ!ママ!」

「え!ちょっと待て…」

「よろしくね!鉄也さん、別に好きに呼ばせてあげていいでしょ?」
 圧が強い

「う、うん、よろしくな」

 俺たちは一旦受付に戻る事にした。
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