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一年生編
舗装道路5
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この2人だけでも厄介極まりないのだが、これだけでは終わらないという事を、久保はこの短い期間で厭という程理解させられていた。
このまま終わってくれないだろうか。
そんな久保の思いを嘲笑うかのように、不本意ながらも聞き慣れてしまった声が耳に届く。
「酷いわハルっ!!アタシという者がありながらっ!!」
聞かなかった事にしてもいいだろうか。
早くも現実逃避しかけた久保を無視して、更に寸劇は続く。
「よしっ!!アキ、俺の胸に飛び込んでこい!!」
そう言って両手を広げ、そのまま相撲でもとるかのように腰を落とすハル。
「嬉しいっ!!ハルっ!!」
言葉とは裏腹に、何故かラグビーのタックルの構えをとるアキ。
「ハルっ!!アタシの事を、受け止めてーーーー!!」
まるで闘牛の様に数度足で地面を掻くと、猛然とハルに向かって突進していった。
「よしっ!こい、アキ!!」
余裕の笑顔で迎えるハル。
どすん、とかなりの衝撃があった様だが、ハルはびくともせずにアキを受け止めた。
ここまで揃ってしまったのだ。当然最後の1人も来るのだろう。
うんざりとして教室の入口に視線を送れば、矢張り、想像通りの少年が立っていた。
「アキっ!!その男はなんなのよっ!!」
「ち、違うんだフユっ!!こ、これはっ!!」
そのまま痴話げんかの様な会話を続けるが、全員男である。
周りはいつもの事だと笑って見ているが、久保からしたらたまったものではない。
只でさえ煩いのに、シキの所為で自分まで中心部に組み込まれてしまっているのだ。
最早久保の存在を無視してコントを続けているのだから、そのまま自分から遠ざかって欲しいと思うのだが、不幸な事に彼等は久保の机の目の前で愛憎劇を繰り広げている。
「ねぇっ!!ナツ。貴方だって、ハルの浮気は赦せないでしょう?!」
「え……あの、僕は……」
騒がしい連中に巻き込まれた哀れな少年。しかし、彼もまた連中の一味なのだ。
もう、本でも読んでいようか。そう思い、机の中に手を入れた瞬間だった。
「はいはい。お前ら、チャイムなったの気付かなかったのか?そこの3人は自分のクラスへ戻れ」
眠そうな顔をしながら、担任が入ってきた。
「もうそんな時間か……覚えてやがれ!!」
何故か小物の様な捨て台詞を残し、ハルが教室を飛び出していく。
だだだ、と廊下を震わせながら走り去って行くハル。
「やぁね~、ハルってば騒々しい」
「まったくだわ」
「お前らもだろうが。早く戻れ」
頬に手を立てて女子の様な会話を始めたアキとフユに担任からの冷静なツッコミが入る。
「仕方ないわね。行きましょう。アキ」
「ええ。そうしましょうフユ」
そう言うと2人は手を繋ぎ、何故かスキップで退場していった。
「騒がしいのは出て言ったな。お前らも席に着け~」
この見世物を特等席で見ようと席を離れていたクラスメイト達も、がやがやと騒ぎながら席へと戻って行った。
久保は深く溜息を吐いた。
静寂を好む久保には迷惑極まりないのだが、不本意ながらこれが彼の日常となってしまっていた。
このまま終わってくれないだろうか。
そんな久保の思いを嘲笑うかのように、不本意ながらも聞き慣れてしまった声が耳に届く。
「酷いわハルっ!!アタシという者がありながらっ!!」
聞かなかった事にしてもいいだろうか。
早くも現実逃避しかけた久保を無視して、更に寸劇は続く。
「よしっ!!アキ、俺の胸に飛び込んでこい!!」
そう言って両手を広げ、そのまま相撲でもとるかのように腰を落とすハル。
「嬉しいっ!!ハルっ!!」
言葉とは裏腹に、何故かラグビーのタックルの構えをとるアキ。
「ハルっ!!アタシの事を、受け止めてーーーー!!」
まるで闘牛の様に数度足で地面を掻くと、猛然とハルに向かって突進していった。
「よしっ!こい、アキ!!」
余裕の笑顔で迎えるハル。
どすん、とかなりの衝撃があった様だが、ハルはびくともせずにアキを受け止めた。
ここまで揃ってしまったのだ。当然最後の1人も来るのだろう。
うんざりとして教室の入口に視線を送れば、矢張り、想像通りの少年が立っていた。
「アキっ!!その男はなんなのよっ!!」
「ち、違うんだフユっ!!こ、これはっ!!」
そのまま痴話げんかの様な会話を続けるが、全員男である。
周りはいつもの事だと笑って見ているが、久保からしたらたまったものではない。
只でさえ煩いのに、シキの所為で自分まで中心部に組み込まれてしまっているのだ。
最早久保の存在を無視してコントを続けているのだから、そのまま自分から遠ざかって欲しいと思うのだが、不幸な事に彼等は久保の机の目の前で愛憎劇を繰り広げている。
「ねぇっ!!ナツ。貴方だって、ハルの浮気は赦せないでしょう?!」
「え……あの、僕は……」
騒がしい連中に巻き込まれた哀れな少年。しかし、彼もまた連中の一味なのだ。
もう、本でも読んでいようか。そう思い、机の中に手を入れた瞬間だった。
「はいはい。お前ら、チャイムなったの気付かなかったのか?そこの3人は自分のクラスへ戻れ」
眠そうな顔をしながら、担任が入ってきた。
「もうそんな時間か……覚えてやがれ!!」
何故か小物の様な捨て台詞を残し、ハルが教室を飛び出していく。
だだだ、と廊下を震わせながら走り去って行くハル。
「やぁね~、ハルってば騒々しい」
「まったくだわ」
「お前らもだろうが。早く戻れ」
頬に手を立てて女子の様な会話を始めたアキとフユに担任からの冷静なツッコミが入る。
「仕方ないわね。行きましょう。アキ」
「ええ。そうしましょうフユ」
そう言うと2人は手を繋ぎ、何故かスキップで退場していった。
「騒がしいのは出て言ったな。お前らも席に着け~」
この見世物を特等席で見ようと席を離れていたクラスメイト達も、がやがやと騒ぎながら席へと戻って行った。
久保は深く溜息を吐いた。
静寂を好む久保には迷惑極まりないのだが、不本意ながらこれが彼の日常となってしまっていた。
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