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3.一緒に試合を見ます!
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広場からスタジアムの入場口へ吉川さんと一緒に向かう。
C席はスタグル広場からグッズ売り場を通り過ぎ、少し歩いたところから入場する。
スタジアムに入る際に入場口でチケットを見せて、今日の試合の見どころが記載されたパンフレットをもらい、階段をあがってスタジアムの中に入った。
すでに選手たちが試合前のウォーミングアップの為、ピッチ上に出ていた。
「吉川さん、どこに座りますか?」
私は、吉川さんに座りたい場所があるか確認をする。
「俺はどこでも。高藤さんが座りたいところでいいよ」
私はいつも座っている場所がまだ空いてるのを確認し、
「じゃあ、あそこでもいいですか」
ちょうどピッチ中央、前から5列目あたりを指差す。
あの周辺は座ってまったり観戦できるし、応援も手拍子するくらいならできる。
2万人収容のスタジアムで試合観戦観客数平均3千人台の為、席を詰めて座る必要がないから、余程のことがない限り隣に知らない人が座ることはない。
ぼっち観戦には優しい仕様だ。
「いいよ、行こう」
吉川さんに同意を得られたのでいつもの席に向かう。
前後左右に人が座っていない場所を見つける。
C席はロングシートタイプの背もたれがない座席だ。
席のランクが上がれば個席になっていたり、ドリンクを置けるカップホルダーが設置された席もある。
けれどその分チケットの値段が高くなるが。
「ここに座りましょうか」
私が座るのに続いて、吉川さんも私の隣に座る。
ロングシートの座席だから、私と吉川さんの間には区切りがなく、人半分くらいのスペースを空けて吉川さんは隣に座った。
「今日これなかったお友達さんは、よく試合見に来てる人なんですか?」
空いている右側に荷物を置きながら、吉川さんの友人について聞いてみた。
「そうだね。高藤さんみたいにユニフォームを着て、あそこの応援ゾーンっていう場所で試合中ずっと応援してるって言ってたよ」
吉川さんはドラムや拡声器を手にしていたり、大きな旗を手摺りに立てかけて立っている人あたりを指差していた。
応援ゾーンっていうのは試合中ずっと立って声を出し、手拍子をして選手を応援する場所のことだ。
「お友達さん、多分私よりコアな感じがします」
私は応援ゾーンに座ったことはない。
チームを熱狂的に応援しているコアなサポーター、略してコアサポな人がたくさんいる場所で、のんびり観戦したい私には今のところ縁のない場所でもある。
「試合がある時は絶対あそこに行くって言ってたな」
それを聞いた私は確信した。
「あ、それ絶対、私よりガチな人っぽい」
知り合いがいない人が行くには難易度高いし、ライト層が混ざれる雰囲気ゼロなんだよなぁ、あそこ。
「だから今日行けないのすごく落ち込んでた」
「でしょうね」
好きな人は毎試合見に行くし、対戦相手のスタジアムで試合をする……いわゆるアウェイといわれる場所で、試合があればそっちに行って応援するらしいし、毎試合見にけるのは羨ましいなって思う。
「じゃあ前回は吉川さん、どのあたりで見ていたんですか?」
友人と一緒に応援ゾーンで一緒にいたのだろうか?
「いや……、応援ゾーンの近くかな。座って試合見るけど周りは結構応援してる人が多い席で。最初は友人も俺が初めての観戦だったからか、最初は一緒に座って見てくれてたんだけど、途中で友人は応援ゾーン行ってしまって……結局俺1人で見てた」
吉川さんは首を横に振って、そう説明し苦笑する。
「初観戦にしては難易度高い席に座ってましたね」
「応援してる熱さだけは感じたかな。あと、友人のテンションがとても高かったのに驚いた」
「あ――……確かにそうですね」
前回の試合、前半0-1からの後半2-1の逆転勝利だったから、いつもより盛り上がっただろうなぁ。
私も退勤後に試合結果見て、テンション上がったし、現地だともっとそうだっただろう。
「この辺りは座ってスタグル食べながらまったり試合みる人が多い感じなので、今日は気楽に試合みて下さいね」
応援ゾーン周辺に行くのは私も、吉川さんもまだ早いと思うんだ。
あそこはもっと観戦に慣れてから行くべきだと私は思う。
慣れたからって簡単に行ける雰囲気はないんだけども。
「そうするよ、ありがとう」
「試合始まる前に、買ったスタグル食べようと思うんですけど……」
「俺に気にせず食べていいよ。てか俺も食べる」
私はスタグルを手に取り、スタジアムのピッチ内を背景にスマホで写真を撮る。
撮った写真を確認して……うんいい感じに撮れた。
「へぇ……俺も撮ろうかな?」
私の行動に、吉川さんも自分が買ったスタグルを写真におさめていた。
「高藤さんが買ったスタグルと一緒に撮っていい?」
「え、あっいいですよ!」
一緒に撮るという考えすら無かった私は、その提案に驚きつつも了承する。
私の買ったスタグルと、吉川さんの買ったスタグルをそれぞれ手に持って並べるようにし、スタジアムと晴れ渡る空を背景に吉川さんのスマホで撮る。
「ありがとう。……折角だからスタグルだけじゃなくて、俺達も一緒に撮らない?」
「私とですか?」
吉川さんの提案に少し首を傾げる。
「そうそう。観戦記念に」
「観戦記念……そうですね、いいですよ!」
1人で観戦だと自撮りとかしないから、誰かと来ると色んなこと出来るんだなぁって感じる。
「じゃあ、こっち向いて……サッカー観戦に来てます!って感じにして撮ろう」
私は吉川さんの側により、画面を見る。
少しでも写真写りが良いように、前髪を指先で整えた。
吉川さんはスタジアムをバックにし、スマホをインカメに設定し構える。
スタジアムと私達が画面に収まるようスマホの位置や高さを調節してくれた。
「じゃあ撮るよー」
ちょっと肩が触れるくらいの距離まで近づいたせいか、ふわっと微かに清涼感な香りが鼻を擽る。
……もしかして吉川さん、香水つけてる……?
それに比べて私ときたら……オシャレ?何それオイシイノ?的な女子だから香水つけてない。
お、オシャレ男子だ……と思った私をよそに、何回かシャッターを押した吉川さんは、「ありがとう」と言って、カメラをおろし、撮った写真をチェックしてお礼を言ってきた。
「いえ!じゃあ……スタグル食べましょう!」
私はいちごがのったコッペパンを一口食べ、その美味しさに満足するのだった。
C席はスタグル広場からグッズ売り場を通り過ぎ、少し歩いたところから入場する。
スタジアムに入る際に入場口でチケットを見せて、今日の試合の見どころが記載されたパンフレットをもらい、階段をあがってスタジアムの中に入った。
すでに選手たちが試合前のウォーミングアップの為、ピッチ上に出ていた。
「吉川さん、どこに座りますか?」
私は、吉川さんに座りたい場所があるか確認をする。
「俺はどこでも。高藤さんが座りたいところでいいよ」
私はいつも座っている場所がまだ空いてるのを確認し、
「じゃあ、あそこでもいいですか」
ちょうどピッチ中央、前から5列目あたりを指差す。
あの周辺は座ってまったり観戦できるし、応援も手拍子するくらいならできる。
2万人収容のスタジアムで試合観戦観客数平均3千人台の為、席を詰めて座る必要がないから、余程のことがない限り隣に知らない人が座ることはない。
ぼっち観戦には優しい仕様だ。
「いいよ、行こう」
吉川さんに同意を得られたのでいつもの席に向かう。
前後左右に人が座っていない場所を見つける。
C席はロングシートタイプの背もたれがない座席だ。
席のランクが上がれば個席になっていたり、ドリンクを置けるカップホルダーが設置された席もある。
けれどその分チケットの値段が高くなるが。
「ここに座りましょうか」
私が座るのに続いて、吉川さんも私の隣に座る。
ロングシートの座席だから、私と吉川さんの間には区切りがなく、人半分くらいのスペースを空けて吉川さんは隣に座った。
「今日これなかったお友達さんは、よく試合見に来てる人なんですか?」
空いている右側に荷物を置きながら、吉川さんの友人について聞いてみた。
「そうだね。高藤さんみたいにユニフォームを着て、あそこの応援ゾーンっていう場所で試合中ずっと応援してるって言ってたよ」
吉川さんはドラムや拡声器を手にしていたり、大きな旗を手摺りに立てかけて立っている人あたりを指差していた。
応援ゾーンっていうのは試合中ずっと立って声を出し、手拍子をして選手を応援する場所のことだ。
「お友達さん、多分私よりコアな感じがします」
私は応援ゾーンに座ったことはない。
チームを熱狂的に応援しているコアなサポーター、略してコアサポな人がたくさんいる場所で、のんびり観戦したい私には今のところ縁のない場所でもある。
「試合がある時は絶対あそこに行くって言ってたな」
それを聞いた私は確信した。
「あ、それ絶対、私よりガチな人っぽい」
知り合いがいない人が行くには難易度高いし、ライト層が混ざれる雰囲気ゼロなんだよなぁ、あそこ。
「だから今日行けないのすごく落ち込んでた」
「でしょうね」
好きな人は毎試合見に行くし、対戦相手のスタジアムで試合をする……いわゆるアウェイといわれる場所で、試合があればそっちに行って応援するらしいし、毎試合見にけるのは羨ましいなって思う。
「じゃあ前回は吉川さん、どのあたりで見ていたんですか?」
友人と一緒に応援ゾーンで一緒にいたのだろうか?
「いや……、応援ゾーンの近くかな。座って試合見るけど周りは結構応援してる人が多い席で。最初は友人も俺が初めての観戦だったからか、最初は一緒に座って見てくれてたんだけど、途中で友人は応援ゾーン行ってしまって……結局俺1人で見てた」
吉川さんは首を横に振って、そう説明し苦笑する。
「初観戦にしては難易度高い席に座ってましたね」
「応援してる熱さだけは感じたかな。あと、友人のテンションがとても高かったのに驚いた」
「あ――……確かにそうですね」
前回の試合、前半0-1からの後半2-1の逆転勝利だったから、いつもより盛り上がっただろうなぁ。
私も退勤後に試合結果見て、テンション上がったし、現地だともっとそうだっただろう。
「この辺りは座ってスタグル食べながらまったり試合みる人が多い感じなので、今日は気楽に試合みて下さいね」
応援ゾーン周辺に行くのは私も、吉川さんもまだ早いと思うんだ。
あそこはもっと観戦に慣れてから行くべきだと私は思う。
慣れたからって簡単に行ける雰囲気はないんだけども。
「そうするよ、ありがとう」
「試合始まる前に、買ったスタグル食べようと思うんですけど……」
「俺に気にせず食べていいよ。てか俺も食べる」
私はスタグルを手に取り、スタジアムのピッチ内を背景にスマホで写真を撮る。
撮った写真を確認して……うんいい感じに撮れた。
「へぇ……俺も撮ろうかな?」
私の行動に、吉川さんも自分が買ったスタグルを写真におさめていた。
「高藤さんが買ったスタグルと一緒に撮っていい?」
「え、あっいいですよ!」
一緒に撮るという考えすら無かった私は、その提案に驚きつつも了承する。
私の買ったスタグルと、吉川さんの買ったスタグルをそれぞれ手に持って並べるようにし、スタジアムと晴れ渡る空を背景に吉川さんのスマホで撮る。
「ありがとう。……折角だからスタグルだけじゃなくて、俺達も一緒に撮らない?」
「私とですか?」
吉川さんの提案に少し首を傾げる。
「そうそう。観戦記念に」
「観戦記念……そうですね、いいですよ!」
1人で観戦だと自撮りとかしないから、誰かと来ると色んなこと出来るんだなぁって感じる。
「じゃあ、こっち向いて……サッカー観戦に来てます!って感じにして撮ろう」
私は吉川さんの側により、画面を見る。
少しでも写真写りが良いように、前髪を指先で整えた。
吉川さんはスタジアムをバックにし、スマホをインカメに設定し構える。
スタジアムと私達が画面に収まるようスマホの位置や高さを調節してくれた。
「じゃあ撮るよー」
ちょっと肩が触れるくらいの距離まで近づいたせいか、ふわっと微かに清涼感な香りが鼻を擽る。
……もしかして吉川さん、香水つけてる……?
それに比べて私ときたら……オシャレ?何それオイシイノ?的な女子だから香水つけてない。
お、オシャレ男子だ……と思った私をよそに、何回かシャッターを押した吉川さんは、「ありがとう」と言って、カメラをおろし、撮った写真をチェックしてお礼を言ってきた。
「いえ!じゃあ……スタグル食べましょう!」
私はいちごがのったコッペパンを一口食べ、その美味しさに満足するのだった。
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