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第3話:諦めない男
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昼休み。
リーリャは人目を避けて裏庭で弁当を食べていた。
みんなでワイワイ食事をするのは好きではない、静かに食べていたいのだ。
そこへ、
「やあ、リーリャ」
リュカリウスが現れた。
「…殿下」
今朝の告白の事があるためリーリャの顔が強張るのを見て、リュカリウスは困ったように笑う。
「ごめん、そんな顔しないで。食事の邪魔はしないよ、何も話さない。だから側に居てもいいかい?」
断る事は出来なかった…リーリャが小さく頷くと、リュカリウスは近くに腰を下ろして自分も弁当を取り出した。
城の料理長が毎朝作ってくれているらしいその弁当は、特別なものは入っておらず一般的なもの。
普通の学生らしくしたいという王子の意見を尊重したものになっている。
「…」
「…」
無言での食事、重い空気が流れるがリーリャから話しかけるわけにいかず。
話題も見つからず、事務的に食事を口に運ぶだけの時間が過ぎていく。
(…食べた気がしないわ)
早起きついでにキッチンスペースでお弁当を作っているのだが、せっかく上手くできたのに味を感じる余裕がない。
そんな残念な昼食が終わろうとした頃。
「お姉ちゃん!」
妹のアーリャが現れた。
「アーリャ?」
「おや、リーリャの妹か」
リュカリウスと目があったアーリャは頬を染めながらもスカートの裾を摘み、挨拶をする。
「お目にかかれて光栄ですわ、殿下」
「リーリャに用事かな?俺は邪魔になるね、そろそろ昼休みも終わるし行くよ」
またね、と立ち上がるリュカリウス。
アーリャは残念そうだったが、笑顔で見送った。
リュカリウスの姿が見えなくなってからため息をつくリーリャ。
「…はぁ」
「ちょっとお姉ちゃん!リュカリウス様を紹介してよ!」
「紹介って言われても…妹だということは知ってくれてたじゃない」
告白されたことは話せない、しかし妹を応援する約束なのにリーリャの胸は痛む。
「お姉ちゃんと殿下が裏庭でご飯食べてるって聞いて飛んできたのに…お話しできなかったー!」
噂になってしまっているらしい。
困り顔のリーリャに構うことなく、アーリャは拳を握りしめる。
「お姉ちゃんってば、殿下と仲良くなったなら教えてよね!抜け駆けなんて酷い!」
「仲良くなったわけじゃないわ…たまたまよ」
「たまたま一緒にお弁当食べるなんて、そんな話納得すると思う?」
「…」
真面目なリーリャは嘘も隠し事も苦手だ。
そんな姉と共に育ってきたアーリャは、姉の異変を察知していた。
「お姉ちゃん、何かあったでしょ」
「な、何も無いわよ」
「嘘。殿下と何かあったのね」
「な、無いってば」
詰め寄られてしどろもどろになっていると、昼休み終了の音楽が。
「あ…もう!お姉ちゃん、授業終わったら校門で待ってて!」
そう言い残して走り去るアーリャに、リーリャは何も言えず。
午後の授業に集中できないリーリャであった。
リーリャは人目を避けて裏庭で弁当を食べていた。
みんなでワイワイ食事をするのは好きではない、静かに食べていたいのだ。
そこへ、
「やあ、リーリャ」
リュカリウスが現れた。
「…殿下」
今朝の告白の事があるためリーリャの顔が強張るのを見て、リュカリウスは困ったように笑う。
「ごめん、そんな顔しないで。食事の邪魔はしないよ、何も話さない。だから側に居てもいいかい?」
断る事は出来なかった…リーリャが小さく頷くと、リュカリウスは近くに腰を下ろして自分も弁当を取り出した。
城の料理長が毎朝作ってくれているらしいその弁当は、特別なものは入っておらず一般的なもの。
普通の学生らしくしたいという王子の意見を尊重したものになっている。
「…」
「…」
無言での食事、重い空気が流れるがリーリャから話しかけるわけにいかず。
話題も見つからず、事務的に食事を口に運ぶだけの時間が過ぎていく。
(…食べた気がしないわ)
早起きついでにキッチンスペースでお弁当を作っているのだが、せっかく上手くできたのに味を感じる余裕がない。
そんな残念な昼食が終わろうとした頃。
「お姉ちゃん!」
妹のアーリャが現れた。
「アーリャ?」
「おや、リーリャの妹か」
リュカリウスと目があったアーリャは頬を染めながらもスカートの裾を摘み、挨拶をする。
「お目にかかれて光栄ですわ、殿下」
「リーリャに用事かな?俺は邪魔になるね、そろそろ昼休みも終わるし行くよ」
またね、と立ち上がるリュカリウス。
アーリャは残念そうだったが、笑顔で見送った。
リュカリウスの姿が見えなくなってからため息をつくリーリャ。
「…はぁ」
「ちょっとお姉ちゃん!リュカリウス様を紹介してよ!」
「紹介って言われても…妹だということは知ってくれてたじゃない」
告白されたことは話せない、しかし妹を応援する約束なのにリーリャの胸は痛む。
「お姉ちゃんと殿下が裏庭でご飯食べてるって聞いて飛んできたのに…お話しできなかったー!」
噂になってしまっているらしい。
困り顔のリーリャに構うことなく、アーリャは拳を握りしめる。
「お姉ちゃんってば、殿下と仲良くなったなら教えてよね!抜け駆けなんて酷い!」
「仲良くなったわけじゃないわ…たまたまよ」
「たまたま一緒にお弁当食べるなんて、そんな話納得すると思う?」
「…」
真面目なリーリャは嘘も隠し事も苦手だ。
そんな姉と共に育ってきたアーリャは、姉の異変を察知していた。
「お姉ちゃん、何かあったでしょ」
「な、何も無いわよ」
「嘘。殿下と何かあったのね」
「な、無いってば」
詰め寄られてしどろもどろになっていると、昼休み終了の音楽が。
「あ…もう!お姉ちゃん、授業終わったら校門で待ってて!」
そう言い残して走り去るアーリャに、リーリャは何も言えず。
午後の授業に集中できないリーリャであった。
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