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やくそく
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眠りにつこうとしていたキールは、自分を呼ぶ声が大きくなっていくことに気づいた。
「キール!起きて!」
(…アナスタシア?)
『起きなさい、キール』
(誰…いや、この声を知っている)
徐々にはっきりとしてくる意識の中、キールは思い出す。
(この声は…そうだ、神様だ)
初めて神に会ったのは、兄を殺そうとしたと言われて一ヶ月間軟禁され、久しぶりに外へ出た日。
城内にある教会で、泣きながら祈りを捧げるキールの元に小さな光の粒が舞い降りたのだ。
『…私の声が聞こえるか』
「聞こえるよ、君は誰?」
『私はメージェ。君の魂は美しいな…少し私に貸してくれないか』
「良いよ!」
何も考えずに即答したキールは、その瞬間から神の愛し子となった。
-----
(…メージェ様、お迎えに来たの?)
自分は死んだはず、そう思ってキールは尋ねる。
『違うよ、みんなの声が聞こえるだろう?目を覚ますんだ』
「みんな…」
思い浮かぶ仲間の顔。
そして聞こえてくる、自分を呼ぶ声。
本当に起きて良いのだろうか、そう思いながら目を開けたキール。
「…キール!!」
まず目に飛び込んできたのは、愛おしいアナスタシアの姿。
抱きついてきたアナスタシアを抱きしめ返しながら視線を巡らせると、ケイン達も泣いている。
「えーっと、ただいま?」
一回死んだような気もする、キールはゆっくり身を起こしながら笑う。
そしてまずアナスタシアに謝った。
「ごめんよアナ、君との約束を破るところだった」
「良いの…帰ってきてくれたから」
アナスタシアは泣きながら笑みを浮かべ、キールを抱きしめる。
目を細めて見つめていたメージェが口を開いた。
『キールよ。ルシアンが不戦の契約を結んでくれるから、もう安心だ』
キールが顔を上げると、玉座に腰掛けたルシアンがつまらなさそうに肩肘をついている。
『貴様が生きている間だけだ。今死なれるとそこの神も死ぬか、眠りについてどの道世界が滅びて俺まで消滅してしまうからな』
「ありがとう魔王!」
『貴様が死ぬ時に一発殴らせろよ』
「えー、痛いのは嫌だなあ」
『駄目だよルシアン、その一発が致命傷になったらキールの魂は神になれなくなってしまう』
メージェ曰く、魔王に殺されると魂の質が変わってしまうらしい。
こうして魔王討伐の旅は、まさかの話し合いで解決したのであった。
「キール!起きて!」
(…アナスタシア?)
『起きなさい、キール』
(誰…いや、この声を知っている)
徐々にはっきりとしてくる意識の中、キールは思い出す。
(この声は…そうだ、神様だ)
初めて神に会ったのは、兄を殺そうとしたと言われて一ヶ月間軟禁され、久しぶりに外へ出た日。
城内にある教会で、泣きながら祈りを捧げるキールの元に小さな光の粒が舞い降りたのだ。
『…私の声が聞こえるか』
「聞こえるよ、君は誰?」
『私はメージェ。君の魂は美しいな…少し私に貸してくれないか』
「良いよ!」
何も考えずに即答したキールは、その瞬間から神の愛し子となった。
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(…メージェ様、お迎えに来たの?)
自分は死んだはず、そう思ってキールは尋ねる。
『違うよ、みんなの声が聞こえるだろう?目を覚ますんだ』
「みんな…」
思い浮かぶ仲間の顔。
そして聞こえてくる、自分を呼ぶ声。
本当に起きて良いのだろうか、そう思いながら目を開けたキール。
「…キール!!」
まず目に飛び込んできたのは、愛おしいアナスタシアの姿。
抱きついてきたアナスタシアを抱きしめ返しながら視線を巡らせると、ケイン達も泣いている。
「えーっと、ただいま?」
一回死んだような気もする、キールはゆっくり身を起こしながら笑う。
そしてまずアナスタシアに謝った。
「ごめんよアナ、君との約束を破るところだった」
「良いの…帰ってきてくれたから」
アナスタシアは泣きながら笑みを浮かべ、キールを抱きしめる。
目を細めて見つめていたメージェが口を開いた。
『キールよ。ルシアンが不戦の契約を結んでくれるから、もう安心だ』
キールが顔を上げると、玉座に腰掛けたルシアンがつまらなさそうに肩肘をついている。
『貴様が生きている間だけだ。今死なれるとそこの神も死ぬか、眠りについてどの道世界が滅びて俺まで消滅してしまうからな』
「ありがとう魔王!」
『貴様が死ぬ時に一発殴らせろよ』
「えー、痛いのは嫌だなあ」
『駄目だよルシアン、その一発が致命傷になったらキールの魂は神になれなくなってしまう』
メージェ曰く、魔王に殺されると魂の質が変わってしまうらしい。
こうして魔王討伐の旅は、まさかの話し合いで解決したのであった。
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