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創造の神

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『それで此奴を殺すなと?何故俺が貴様の頼みを聞いてやらねばならんのだ』


『お前は賢い子だ、私が消滅したら世界が消えることも理解しているだろう?そしてお前たちには世界を作れない。今この子を殺して世界ごと滅びる道を選ぶのかい?』


世界は複数存在している。

それらを生み出したのが、創造の神たち。

複数いる神の中でも特別な力が必要で、新たな創造の神の器を持つ者は未だに生まれていない。


『…100年ほど前に、世界が一つ滅んだことは知っているね。あれは己が力を過信したその世界の魔王が、神を殺してしまったから起きた悲劇だ』


力をつけ過ぎた魔王や邪神が、神にとって変わろうとすることは度々ある。

その度に創造の神たちは力を使い、世界を守ってきた。

そして疲弊していき、回復するために眠りについた者、世界と共に消滅する道を選んだ者、世界を見捨てて封印された者などがいるのだ。


『馬鹿な神だ、見捨ててしまえば自分まで消滅しなかったのに』


100年前に滅んだ世界を司っていた神は、その世界を産んだ神の子供だった。

親から残された世界を守ろうと最後まで足掻き、運命を共にすることを選んだのだ。


『彼女は優しい神だったのだよ。悪く言わないでくれ』


メージェは少しだけ厳しい顔をしたが、すぐに優しい顔に戻る。


『ルシアン、この子が生きている間だけで良い。世界を回復させるために、この子が神になるまで見守っておくれ』


反抗期の息子を見るような目でルシアンを見つめるメージェ。

ルシアンはしばらく考え込んでいたが、


『…ふん。仕方がない、俺はまだ消滅したくないからな』


承諾した。

メージェは嬉しそうに笑うと、呆然としていたアナスタシアに話しかける。


『アナスタシア、もう少しだけ君の力を貸しておくれ』


「どうしたらいいのですか、キールを助けられるの?」


神だのなんだのはどうでもいい、キールさえいればそれで良い。


『キールの傷はすでに塞がっている。あとは呼び戻すだけだ、彼の魂と繋がっている炎を離さないで』


言われてキールを見ると、血は止まり顔色も良くなってきている。

アナスタシアは懸命にキールに残された命の炎を手繰りながら呼びかけた。


「キール、キール…起きて」


その時、ようやくケインたちが最上階に辿り着く。


「キール様!アナ様!」


倒れたキール、泣いているアナスタシア、光り輝く人物、そして魔王。

これはどういう状況なのかと目を白黒させるケイン達の前で、本当の奇跡が起きる。
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