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勇者とは
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ケインに両目を潰されたガメルは、痛みと悔しさで叫ぶ。
『人間が!この俺様にここまでのダメージを与えるとは!』
「終わりなのは貴様だ」
トドメを刺そうと剣を握り直すケイン。
すでに全身の痛みで力が入らなくなってきているが、あと少し。
(これで俺も…英雄だ!)
ボンクラ王子の護衛から勇者へ。
薔薇色の人生を思い浮かべ、ケインはガメルの首目掛けて剣を振るう。
しかし、
『まだだ!まだ俺様は死なない!』
見えなくとも気配でわかるのか、ガメルが振り上げた腕に払われ吹き飛ばされるケイン。
「ぐっ…!」
そして顔を上げたケインの目に飛び込んできたのは、
「えーい!」
体勢を立て直そうとしていたガメルの背中に剣を突き刺すキールの姿。
『ぐぁあああああ!!』
今度こそ断末魔をあげるガメル、その体がボロボロと崩れていく。
実はケインの攻撃を両目に受けたガメルは、回復を急ごうと体の強度を下げていたのだ。
岩の一部を剥がし、その分の魔力を回復に当てる…その隙をキールがついてしまった。
(…うそーん)
ケインは泣いた。
人目も憚らず、良い歳した大の大人が。
「大丈夫かいケイン、痛むんだね!」
「すぐ治療しますからね!」
まさかキールに手柄を横取りされるなんて。
そしてそんな理由で泣いているなど、ケイン本人にしか分からない。
ケインは泣きながらキールを見つめる。
「ん?どうかした?」
無垢な瞳は美しい空色。
(…まあいいか。そう言う人だ、もう何も驚くまい)
無邪気というのはある意味最強の才能なのかもしれない。
そんなことを考えながら涙を拭い、ケインは大の字になって倒れた。
「少しだけ…寝かせてください」
傷はサーラが治してくれているが、体力の消耗が激しい。
ガメルの残骸が転がっているのが気になったが、キール達はこの辺りで野宿する事にした。
「テントは僕がやりますね!」
今回出番がなかったトーマは体力に余裕がある。
率先して働いた。
サーラがケインの治療に当たっているため、料理担当はアナスタシア。
案の定その辺を飛んでいた鳥や、ちょこまか動いていたトカゲなどを捕獲して料理に使っている。
眠りから覚めたケインを待っていたのは、味は良いが見た目が酷いゲテモノ料理と、悲しいほど美味いが硬い焼き鳥。
「疲れたでしょう、たくさん食べてくださいね♪」
「わあ、また僕の好物ばかりだ!」
(なぜだろう…また涙が…)
ニコニコ顔のアナスタシアとキールの姿が神々しいからなのか。
硬すぎて歯に刺さったからなのか。
食べた事ないはずなのに何処か懐かしい味のせいなのか。
謎の涙が止まらなくなるケインであった。
『人間が!この俺様にここまでのダメージを与えるとは!』
「終わりなのは貴様だ」
トドメを刺そうと剣を握り直すケイン。
すでに全身の痛みで力が入らなくなってきているが、あと少し。
(これで俺も…英雄だ!)
ボンクラ王子の護衛から勇者へ。
薔薇色の人生を思い浮かべ、ケインはガメルの首目掛けて剣を振るう。
しかし、
『まだだ!まだ俺様は死なない!』
見えなくとも気配でわかるのか、ガメルが振り上げた腕に払われ吹き飛ばされるケイン。
「ぐっ…!」
そして顔を上げたケインの目に飛び込んできたのは、
「えーい!」
体勢を立て直そうとしていたガメルの背中に剣を突き刺すキールの姿。
『ぐぁあああああ!!』
今度こそ断末魔をあげるガメル、その体がボロボロと崩れていく。
実はケインの攻撃を両目に受けたガメルは、回復を急ごうと体の強度を下げていたのだ。
岩の一部を剥がし、その分の魔力を回復に当てる…その隙をキールがついてしまった。
(…うそーん)
ケインは泣いた。
人目も憚らず、良い歳した大の大人が。
「大丈夫かいケイン、痛むんだね!」
「すぐ治療しますからね!」
まさかキールに手柄を横取りされるなんて。
そしてそんな理由で泣いているなど、ケイン本人にしか分からない。
ケインは泣きながらキールを見つめる。
「ん?どうかした?」
無垢な瞳は美しい空色。
(…まあいいか。そう言う人だ、もう何も驚くまい)
無邪気というのはある意味最強の才能なのかもしれない。
そんなことを考えながら涙を拭い、ケインは大の字になって倒れた。
「少しだけ…寝かせてください」
傷はサーラが治してくれているが、体力の消耗が激しい。
ガメルの残骸が転がっているのが気になったが、キール達はこの辺りで野宿する事にした。
「テントは僕がやりますね!」
今回出番がなかったトーマは体力に余裕がある。
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案の定その辺を飛んでいた鳥や、ちょこまか動いていたトカゲなどを捕獲して料理に使っている。
眠りから覚めたケインを待っていたのは、味は良いが見た目が酷いゲテモノ料理と、悲しいほど美味いが硬い焼き鳥。
「疲れたでしょう、たくさん食べてくださいね♪」
「わあ、また僕の好物ばかりだ!」
(なぜだろう…また涙が…)
ニコニコ顔のアナスタシアとキールの姿が神々しいからなのか。
硬すぎて歯に刺さったからなのか。
食べた事ないはずなのに何処か懐かしい味のせいなのか。
謎の涙が止まらなくなるケインであった。
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