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登山開始
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トーマが旅に復帰できるようになるまで、約一ヶ月掛かった。
「本当にすみません、僕のためにこんなに遅くなってしまって」
まだ本調子ではないが、これ以上は休めないということでキール一行はフージ山へ。
「ここからは何かあってもすぐ街へ、とはいきません。気を引き締めましょう」
ケインが先頭を行き、キールとアナスタシアが続き、サーラとトーマが後方を行く。
馬車は山頂を目指せないため、山の途中に置いていくわけにもいかず街で預かってもらっている。
馬だけは連れて最低限の荷物を乗せた。
登り始めてしばらくは緩やかな道が続いていたが、朝から登って日が暮れる頃、徐々に道も険しくなってくる。
「ここから先は道も悪そうですね、今夜はこの辺りで休みましょう」
野宿の準備を始めるケイン。
トーマも手伝おうとしたが、病み上がりの体での登山が体力を奪いふらふらになっていた。
「トーマは休んでいたまえ!僕がやろう」
王子にやらせるわけにはいかないとトーマは立ち上がろうとしたが、アナスタシアとサーラに止められる。
「無理なさらないで、キールとケインさんに任せましょう」
「ここはお言葉に甘えて、トーマさんはこちらを手伝ってください」
トーマは鍋を混ぜる係に任命された。
料理担当はサーラとアナスタシア。
「あら、三白鶏の骨は捨ててしまいますの?もったいないですわ」
「じっくり煮ている時間がないので、今は諦めてください…」
どうやらアナスタシアは長時間コトコト煮込むのが好きらしい。
「アナ様、野菜を切るのをお願いしてもよろしいですか?」
「ええ、任せてちょうだい」
アナスタシアは手慣れた様子で根菜類を乱切りにしていく。
「アナ様お料理上手なんですね、お屋敷でも作られるのですか?」
何もできないお嬢様だと思っていたのに意外である。
「キールのお嫁さんになるために練習しましたの♪」
王子と結婚しても料理なんて作る機会がないのでは?とサーラは思ったが、
「キールは約束してくれましたわ。お兄様が即位なさったらわたくしと二人で世界旅行へ行こうと。その時に現地の食材で料理ができるように、わたくし勉強してますのよ」
頬を染めるアナスタシアを見て納得した。
そしてやたら食材を無駄にしたくない精神も、恐らく現地調達したものを使う時のことを想定しているのだろう。
「本当にすみません、僕のためにこんなに遅くなってしまって」
まだ本調子ではないが、これ以上は休めないということでキール一行はフージ山へ。
「ここからは何かあってもすぐ街へ、とはいきません。気を引き締めましょう」
ケインが先頭を行き、キールとアナスタシアが続き、サーラとトーマが後方を行く。
馬車は山頂を目指せないため、山の途中に置いていくわけにもいかず街で預かってもらっている。
馬だけは連れて最低限の荷物を乗せた。
登り始めてしばらくは緩やかな道が続いていたが、朝から登って日が暮れる頃、徐々に道も険しくなってくる。
「ここから先は道も悪そうですね、今夜はこの辺りで休みましょう」
野宿の準備を始めるケイン。
トーマも手伝おうとしたが、病み上がりの体での登山が体力を奪いふらふらになっていた。
「トーマは休んでいたまえ!僕がやろう」
王子にやらせるわけにはいかないとトーマは立ち上がろうとしたが、アナスタシアとサーラに止められる。
「無理なさらないで、キールとケインさんに任せましょう」
「ここはお言葉に甘えて、トーマさんはこちらを手伝ってください」
トーマは鍋を混ぜる係に任命された。
料理担当はサーラとアナスタシア。
「あら、三白鶏の骨は捨ててしまいますの?もったいないですわ」
「じっくり煮ている時間がないので、今は諦めてください…」
どうやらアナスタシアは長時間コトコト煮込むのが好きらしい。
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「ええ、任せてちょうだい」
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「キールは約束してくれましたわ。お兄様が即位なさったらわたくしと二人で世界旅行へ行こうと。その時に現地の食材で料理ができるように、わたくし勉強してますのよ」
頬を染めるアナスタシアを見て納得した。
そしてやたら食材を無駄にしたくない精神も、恐らく現地調達したものを使う時のことを想定しているのだろう。
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