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初めての敵

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無事に御者を雇うことができたキールたちは、魔王の城目指して山の近くを歩いていた。

途中で魔王軍に会っても一般人への被害が少ないようにということで、なるべく街から離れた道を選ぶ。


「いい天気だな~、ピクニック日和だね!」


キールが言えば、


「本当ですわねキール、婚前旅行に相応しいお天気♪」


アナスタシアが同意する。

ちなみに二人はキールの愛馬エスメラルダ号に乗っている。

初めて二人の様子を間近で見たトーマは唖然としたが、ケインが諦めの表情で肩を叩いてきたので察した。

魔王退治に行くと聞いていたのに、婚前旅行とか聞こえたのはどういうことだろう。

そんな当たり前の疑問すら口に出せなかった。


「あ、見てごらんアナ!」


馬を止めキールが指差した先には、一面に青い花が咲いている。


「まあ素敵!!」


大喜びで近づいていってしまう二人を、ケインたちは慌てて追った。


「お待ちください、なにか妙で…!」


「近づいてはいけません!」


ケインだけでなくサーラまで叫んだ、その時。

グニャリと花畑全体が揺れ、崩れ始める。


「おおっ?」


「きゃあ!」


花畑の、目の前で止まったエスメラルダ号は異変を感じ取り後ずさった。


「王子!」


ケインが駆け寄ると、全体を歪めながら一つの塊になろうとしていた花畑が笑い声をあげる。


「あははは!久しぶりの人間御一行じゃないか、今日はご馳走だねえ」


「え!花畑が喋った!!」


「お気をつけください、魔物です!」


サーラも駆けつけ、トーマは馬車と共に少し離れたところで様子を見ていた。


(うわあ!本当に魔物に会っちゃった!みなさん大丈夫なのかな)


まだ魔法の使い方すら分からないトーマは戦うこともできないため、距離を取るしかない。

花畑の魔物は大きな花の集合体が地面から生えているような姿に。


「嬉しいねえ、最近人間どもが近づかないから腹が減ってたんだよ」


この魔物は移動ができないため花畑に化けて人間が近づくのを待っているのだが、さすがに噂が広まり周辺住民は近づかなくなってしまった。

たまに旅人や商人、登山客などが通るためそれを餌として狙っているのだ。
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