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旅支度

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部屋に戻ったキールは、ウキウキと旅支度を始める。

数日分の着替えとお気に入りの帽子、抱き枕に趣味のオカリナ。

完全にちょっとした旅行気分だ。

オヤツは何にしようかな、などと考えているとドアがノックされた。


コンコン


「キール様、失礼いたします」


入ってきたのは、王国騎士の鎧を着た30代くらいの男。

そして魔法使いのローブを羽織ったメガネの少女。


「やあ!君たちは誰だい?」


「は、陛下のご命令によりキール様に同行するこことなりました」


どうやら二人は旅の仲間になるらしい。

キールは喜んだ。


「なんだって!父上は信頼できる仲間までつけてくださるのか!」


感動のあまり泣きそうになるキール。

その様子に戸惑いながらも二人は自己紹介をする。


「騎士団城壁守備部隊隊員、ケイン・マークスと申します」


城壁守備部隊とは、敵襲を受けた際真っ先に死ぬ可能性が高い部隊。

魔族との戦いでは完全に使い捨ての壁扱いされている。


「ま、魔法府から参りました、サーラ・メイです!」


メガネの少女は勢いよくお辞儀をした拍子にメガネを落とす。

かなりドジっ子のようだ…ちなみに魔法府とは、国内の魔法使いを登録・管理しているお役所。

二人とも戦力になりそうにない…しかしキールはそんなことには気づかないし気にしない。

父が自分の身を案じて選んでくれた人選だと信じているから。


「ケインとサーラだね、よろしく!」


満面の笑みを浮かべるキールを見て、二人は複雑な心境になる。

二人とも命令を受けた時点で察していたのだ…死にに行けと言われていることに。

だが王子は本気で魔王を倒すつもりらしい。

噂通りの馬鹿王子は、たしかに無邪気で能天気な人物らしかった。


「…出発は明日の朝、陛下が見送ってくださるそうです」


ケインの言葉にキールは飛び上がって喜んだ。


「父上が見送りまで?!なんてこった、何を着よう!!」


大はしゃぎするキールを不憫に思いながら、ケインとサーラは一旦退室する。

家族への別れは済ませてきた、後は自分の支度だ。

悲しげに顔を見合わせながら、城を後にする二人であった。
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