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第40話
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翌日。
イルヴィンドとリラフィアは、国賓たちに国内を案内するため街に出た。
城下町にある劇場、博物館など国の歴史と文化に触れてもらうためだ。
「イルヴィンド陛下は演劇はお好きですか?」
モニカはイルヴィンドに話しかけ続け、
「リラフィア王妃、こちらの品はどれほど前の時代のものなのですか?」
ジャニスはリラフィアに話しかけ続ける。
迷惑な兄弟により、視察の間イルヴィンドとリラフィアはほとんど会話ができなかった。
ようやく城内に戻りほっと一息つくイルヴィンド。
明日には彼らも帰る予定だ、あと一晩の辛抱だろう。
そうは思っても今日の疲労はかなりのもので、早くリラフィアと眠りたいとボヤく。
「お疲れ様でございます陛下、予想以上にしぶといですね」
「今日は全然リラフィアと話せなかったよ!」
「いやー、モテる男は辛いですね?」
「冗談言ってる場合じゃないよー!」
ケネスとクリストファーも、ジャニス王子がモニカを手伝うように振る舞うのは予想外だったためイルヴィンドを労った。
「まあ今夜の食事会が終われば、明日の朝には国に帰りますから」
「あと一踏ん張りですよ」
イルヴィンドはため息をつきながら頷き、急ぎの書類に目を通す。
一方のリラフィアは、自室でゾエとアリシアに体をほぐしてもらっていた。
「…ありがとう。楽になったわ」
「リラフィア様大丈夫ですか?」
「あの小娘…いえ、モニカ王女には教養というものが足りていませんね」
アリシアは純粋にリラフィアを心配し、ゾエは辛辣にモニカを批判する。
真逆な二人のいつも通りの様子に癒され、リラフィアは僅かに微笑みを浮かべた。
「彼女が陛下に惹かれ、陛下も彼女に惹かれるならわたくしは口を出さないわ」
「何をおっしゃいますのリラフィア様?」
「惹かれ合うなら、の話です。一方的なものを許してやるほど寛容ではないわ」
目を細め冷たく話すリラフィア。
静かに怒っていることが窺える。
「陛下がその気になる事などありませんわ!」
毎日顔を合わせているアリシアは、国王夫妻が互いに思い合っていることをよく理解していた。
まだぎこちないのは王の年齢を考えれば仕方のない事で、周囲が急かすのも分かるが時間がかかるだろう。
ゆっくり愛を育めば良い、子供の頃そういう御伽噺を好んで読んでいたアリシアは、間近で二人を見守れる事が嬉しかった。
ゾエはリラフィア信者のため、邪魔をするモニカのような存在は目障りでしかない。
相手が他国の王族でさえなければどうにでも出来るのに…無表情の下には物騒な考えが隠されている。
イルヴィンドとリラフィアは、国賓たちに国内を案内するため街に出た。
城下町にある劇場、博物館など国の歴史と文化に触れてもらうためだ。
「イルヴィンド陛下は演劇はお好きですか?」
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「リラフィア王妃、こちらの品はどれほど前の時代のものなのですか?」
ジャニスはリラフィアに話しかけ続ける。
迷惑な兄弟により、視察の間イルヴィンドとリラフィアはほとんど会話ができなかった。
ようやく城内に戻りほっと一息つくイルヴィンド。
明日には彼らも帰る予定だ、あと一晩の辛抱だろう。
そうは思っても今日の疲労はかなりのもので、早くリラフィアと眠りたいとボヤく。
「お疲れ様でございます陛下、予想以上にしぶといですね」
「今日は全然リラフィアと話せなかったよ!」
「いやー、モテる男は辛いですね?」
「冗談言ってる場合じゃないよー!」
ケネスとクリストファーも、ジャニス王子がモニカを手伝うように振る舞うのは予想外だったためイルヴィンドを労った。
「まあ今夜の食事会が終われば、明日の朝には国に帰りますから」
「あと一踏ん張りですよ」
イルヴィンドはため息をつきながら頷き、急ぎの書類に目を通す。
一方のリラフィアは、自室でゾエとアリシアに体をほぐしてもらっていた。
「…ありがとう。楽になったわ」
「リラフィア様大丈夫ですか?」
「あの小娘…いえ、モニカ王女には教養というものが足りていませんね」
アリシアは純粋にリラフィアを心配し、ゾエは辛辣にモニカを批判する。
真逆な二人のいつも通りの様子に癒され、リラフィアは僅かに微笑みを浮かべた。
「彼女が陛下に惹かれ、陛下も彼女に惹かれるならわたくしは口を出さないわ」
「何をおっしゃいますのリラフィア様?」
「惹かれ合うなら、の話です。一方的なものを許してやるほど寛容ではないわ」
目を細め冷たく話すリラフィア。
静かに怒っていることが窺える。
「陛下がその気になる事などありませんわ!」
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まだぎこちないのは王の年齢を考えれば仕方のない事で、周囲が急かすのも分かるが時間がかかるだろう。
ゆっくり愛を育めば良い、子供の頃そういう御伽噺を好んで読んでいたアリシアは、間近で二人を見守れる事が嬉しかった。
ゾエはリラフィア信者のため、邪魔をするモニカのような存在は目障りでしかない。
相手が他国の王族でさえなければどうにでも出来るのに…無表情の下には物騒な考えが隠されている。
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