少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

文字の大きさ
上 下
40 / 56

第40話

しおりを挟む
翌日。

イルヴィンドとリラフィアは、国賓たちに国内を案内するため街に出た。

城下町にある劇場、博物館など国の歴史と文化に触れてもらうためだ。


「イルヴィンド陛下は演劇はお好きですか?」


モニカはイルヴィンドに話しかけ続け、


「リラフィア王妃、こちらの品はどれほど前の時代のものなのですか?」


ジャニスはリラフィアに話しかけ続ける。

迷惑な兄弟により、視察の間イルヴィンドとリラフィアはほとんど会話ができなかった。

ようやく城内に戻りほっと一息つくイルヴィンド。

明日には彼らも帰る予定だ、あと一晩の辛抱だろう。

そうは思っても今日の疲労はかなりのもので、早くリラフィアと眠りたいとボヤく。


「お疲れ様でございます陛下、予想以上にしぶといですね」


「今日は全然リラフィアと話せなかったよ!」


「いやー、モテる男は辛いですね?」


「冗談言ってる場合じゃないよー!」


ケネスとクリストファーも、ジャニス王子がモニカを手伝うように振る舞うのは予想外だったためイルヴィンドを労った。


「まあ今夜の食事会が終われば、明日の朝には国に帰りますから」


「あと一踏ん張りですよ」


イルヴィンドはため息をつきながら頷き、急ぎの書類に目を通す。

一方のリラフィアは、自室でゾエとアリシアに体をほぐしてもらっていた。


「…ありがとう。楽になったわ」


「リラフィア様大丈夫ですか?」


「あの小娘…いえ、モニカ王女には教養というものが足りていませんね」


アリシアは純粋にリラフィアを心配し、ゾエは辛辣にモニカを批判する。

真逆な二人のいつも通りの様子に癒され、リラフィアは僅かに微笑みを浮かべた。


「彼女が陛下に惹かれ、陛下も彼女に惹かれるならわたくしは口を出さないわ」


「何をおっしゃいますのリラフィア様?」


「惹かれ合うなら、の話です。一方的なものを許してやるほど寛容ではないわ」


目を細め冷たく話すリラフィア。

静かに怒っていることが窺える。


「陛下がその気になる事などありませんわ!」


毎日顔を合わせているアリシアは、国王夫妻が互いに思い合っていることをよく理解していた。

まだぎこちないのは王の年齢を考えれば仕方のない事で、周囲が急かすのも分かるが時間がかかるだろう。

ゆっくり愛を育めば良い、子供の頃そういう御伽噺を好んで読んでいたアリシアは、間近で二人を見守れる事が嬉しかった。

ゾエはリラフィア信者のため、邪魔をするモニカのような存在は目障りでしかない。

相手が他国の王族でさえなければどうにでも出来るのに…無表情の下には物騒な考えが隠されている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。

黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

処理中です...