少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

文字の大きさ
上 下
39 / 56

第39話

しおりを挟む
ラブラブ見せつけ作戦を聞かされたリラフィアは唖然としたが、至って真面目なイルヴィンドの様子を見て笑い出した。


「ふふっ、分かりましたわ陛下…ふふふ…っ」


珍しく声を出して笑うリラフィアを見て、イルヴィンドは目を丸くする。

しかし承諾が得られたからにはモニカを撃退するために頑張ろうと、夜会の際は腕を組んで登場する事にした。

そして夜になり、国賓を招いての夜会が始まる。

世継ぎの居ない今なら可能性があるのではと狙っているのはモニカだけではなく、国内の貴族令嬢達もかなり気合を入れて着飾ってきていた。

だかそんな野望を打ち砕くように、夜会に現れた国王夫妻はしっかりと腕を組んで体を寄せ合い、時折耳打ちしながら笑みを交わし合う。


「陛下、私とも踊って頂けませんか?」


二人のダンスが終わりモニカが誘いにきたけれど、


「申し訳ありません、王妃が嫉妬しますので…」


ハッキリ断るイルヴィンドの横で、リラフィアは照れたように頬を染め顔を逸らす。

もちろんそれは演技で、モニカの様子を伺うと悔しそうに顔を歪めていた。


(効果はあるようね)


イルヴィンドから作戦を聞かされた時は、その後ろでニヤニヤしているケネスとクリストファーに妙な事を吹き込まれたなと思ったけれど。

リラフィアも強引なモニカを不快に思っていたため、乗り気であった。

その後も二人は身を寄せ合い、仲睦まじい様子を見せつける。


(まあ、仲がよろしいこと)


(北方領主様が押し進めたご結婚だから上手くいっていない、なんて言っていたのはどなただったかしら)


(あのご様子では側室など娶りそうにないですわね)


参加者達の落胆した囁きを聞き流し、笑顔を振りまいているうちに夜会は無事終わった。


「なによ…全然私を見てくれないじゃない!」


部屋に戻ったモニカは、兄ジャニスに不満をぶつける。


「君の魅力に気づかないような子供なのさ。諦めるかい、モニカ」


「嫌よ!姉様達はみんな嫁いだのに…妹に先越されたりしたら恥ずかしくて死んでしまうわ!」


未婚の女性王族の中では、13歳の自分が一番年上になってしまった。

国内の身分の高い嫁ぎ先は皆姉達が行ってしまったため、もう国外に目を向けるしかないのだ。


「国内の下級貴族なんて絶対に嫌。他国の王族くらいじゃなきゃ私に相応しくないのよ!」


意地を張るモニカを、ジャニスはただ笑顔で見つめる。

妹達を皆可愛い天使だと思っている彼は、どんなワガママも咎めるつもりなどないから。


「明日は城下町の視察をさせてもらう事になっている。モニカも同行させて貰おう」


「あの女は?」


「一緒かもしれないが、私が引き離してみるよ。少しでも君の魅力を理解すればあの国王だって無視できないさ」


諦めるつもりなどないモニカが気合を入れ直していることなど、イルヴィンドたちは知らない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

処理中です...