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第33話
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一週間後、城内の会議室で裁判が開かれた。
王妃の裁判ということもあり、神殿からは最高位の神官であるクレマン・ローマン猊下が立会人として呼ばれ、一週間ぶりに部屋から出る事を許されたリラフィアとメラニーも席に着く。
「それではこれより、王妃への不貞疑惑の真偽について、そしてメラニー・ディランの証言の信憑性についての裁判を執り行う」
国王イルヴィンドの強い要望により、王妃の不貞疑惑裁判ではなくそれを訴えたメラニーの証言が正しいかどうかを明らかにするための裁判である、と宣言される。
「まずはメラニー・ディラン、前へ。見聞きしたものを包み隠さず話しなさい」
「は、はい…私は東方領土の視察にいらしているはずの王妃様が、街中の店から出てくるのをお見かけしました。するとその店から、見知らぬ男も出てきたのです」
「お二人で出てきたということか」
「い、いいえ…先に王妃様が出ていらして、しばらくしてからその男が出てきました」
「しばらくとはどれくらいの時間か」
「さ、さあ…測っておりませんでしたので…」
実際には30分以上間が開いていたのだが、その間メラニーはずっと見張っていたことになる。
「なぜその男と王妃陛下が共にいたと思ったのか」
「か、貸し切りになっておりましたので…」
「商会との会合があったとされているが、それは知らなかったのか」
「は、はい…存じませんでした。ですので、何かやましい事をしてらっしゃるのかと思ってしまったのです」
なるほど、と裁判官らは頷き、次にリラフィアに立つよう求めた。
「このように申していますが、疑惑の人物についてご説明を」
「はい。かの者の名はオリオ・レイス、シェーダ商会所属の北方領土民です」
そしてリラフィアは、不正調査のために彼を送り込んでいた事を正直に話す。
アーロン商会の不正、そして東方領主が不正に関与して取り調べを受けている事、さらには財務長官のトーマス・ディランが関わっている疑惑がある事。
それらはすでに噂となっていたため、傍聴人の貴族たちからざわめきが生まれる。
「では、不貞行為は一切無いと」
「はい。神に誓ってそのような事実はございません」
「そ、そんなの嘘よ!言い訳だわ!」
許可なく声を上げたメラニーは、裁判官に制されて座らされた。
次に呼ばれたのはオリオ、今日は髭も剃り身なりを整えている。
身分を明かすよう言われ顔を上げた。
「オリオ・レイスと申します。王妃陛下が北方にいらした頃から配下としてお使えしております」
「不適切な関係であるとの指摘があるが」
「有り得ません、私は配下の一人に過ぎませんし伴侶もおります」
リラフィアの女官ゾエが立ち上がり、発言の許可を求める。
「王妃陛下付きの女官、ゾエ・レイスと申します。オリオ・レイスと婚姻関係にあることを証言いたします」
夫婦である事を知りもしなかったメラニーは再び許可なく叫ぶ。
「そ、そんな…!そんなこと証拠にならないわ!」
そして裁判官の制止を振り切りとんでもない事を言い出した。
王妃の裁判ということもあり、神殿からは最高位の神官であるクレマン・ローマン猊下が立会人として呼ばれ、一週間ぶりに部屋から出る事を許されたリラフィアとメラニーも席に着く。
「それではこれより、王妃への不貞疑惑の真偽について、そしてメラニー・ディランの証言の信憑性についての裁判を執り行う」
国王イルヴィンドの強い要望により、王妃の不貞疑惑裁判ではなくそれを訴えたメラニーの証言が正しいかどうかを明らかにするための裁判である、と宣言される。
「まずはメラニー・ディラン、前へ。見聞きしたものを包み隠さず話しなさい」
「は、はい…私は東方領土の視察にいらしているはずの王妃様が、街中の店から出てくるのをお見かけしました。するとその店から、見知らぬ男も出てきたのです」
「お二人で出てきたということか」
「い、いいえ…先に王妃様が出ていらして、しばらくしてからその男が出てきました」
「しばらくとはどれくらいの時間か」
「さ、さあ…測っておりませんでしたので…」
実際には30分以上間が開いていたのだが、その間メラニーはずっと見張っていたことになる。
「なぜその男と王妃陛下が共にいたと思ったのか」
「か、貸し切りになっておりましたので…」
「商会との会合があったとされているが、それは知らなかったのか」
「は、はい…存じませんでした。ですので、何かやましい事をしてらっしゃるのかと思ってしまったのです」
なるほど、と裁判官らは頷き、次にリラフィアに立つよう求めた。
「このように申していますが、疑惑の人物についてご説明を」
「はい。かの者の名はオリオ・レイス、シェーダ商会所属の北方領土民です」
そしてリラフィアは、不正調査のために彼を送り込んでいた事を正直に話す。
アーロン商会の不正、そして東方領主が不正に関与して取り調べを受けている事、さらには財務長官のトーマス・ディランが関わっている疑惑がある事。
それらはすでに噂となっていたため、傍聴人の貴族たちからざわめきが生まれる。
「では、不貞行為は一切無いと」
「はい。神に誓ってそのような事実はございません」
「そ、そんなの嘘よ!言い訳だわ!」
許可なく声を上げたメラニーは、裁判官に制されて座らされた。
次に呼ばれたのはオリオ、今日は髭も剃り身なりを整えている。
身分を明かすよう言われ顔を上げた。
「オリオ・レイスと申します。王妃陛下が北方にいらした頃から配下としてお使えしております」
「不適切な関係であるとの指摘があるが」
「有り得ません、私は配下の一人に過ぎませんし伴侶もおります」
リラフィアの女官ゾエが立ち上がり、発言の許可を求める。
「王妃陛下付きの女官、ゾエ・レイスと申します。オリオ・レイスと婚姻関係にあることを証言いたします」
夫婦である事を知りもしなかったメラニーは再び許可なく叫ぶ。
「そ、そんな…!そんなこと証拠にならないわ!」
そして裁判官の制止を振り切りとんでもない事を言い出した。
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