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第28話
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ミリスの話を静かに聞いていたリラフィアは、ひとつ息を吐くと口を開いた。
「…よく話してくれました、勇気がいったことでしょう。陛下にもご報告し対応を協議していただきます」
この場で拘束すると言われてもおかしくないと思っていたミリスは、リラフィアの寛大な処置に感激する。
そしてディラン家との繋がりについても話し始めた。
「不正を理由にアーロン商会から脅されている事を相談したのが始まりのようです…そこからディラン家からの支援金を貰うようになったと父のメモに書いてありました」
実はアーロン商会とディラン家が組んでいたことを、先代領主は死ぬまで気づかなかったようだ。
ミリスも不審に思いながら直接は聞かなかったが、メラニーが得意げに話してきたため確信した。
「彼らは我が領土を汚しました…そして私は守れなかった。今更ながら、どのような罰も受ける覚悟です」
ミリスが話し終えるのを待っていると、イルヴィンドが視察から帰ってきたという報せが。
リラフィアは女官ゾエに命じてイルヴィンドを呼ぶ。
「何事?」
大泣きしているミリスを見て目を丸くするイルヴィンドに、リラフィアが簡単に説明する。
「陛下、鉱山が次々と枯れた事件はアーロン商会と領主、そして財務長官ディランが絡んでいたそうです」
「え?!」
「ミリスは勇気を出して全て話してくれました。彼女の処罰は後程にして、まずはアーロン商会とディラン家の調査をすべきです」
突然のことに驚くイルヴィンドだったが、急を要することは分かる。
城に残してきた宰相へ連絡するよう命じ、ミリスに声を掛けた。
「ミリス、調査が終わるまで君の行動を制限させてもらうよ。不便だろうけど、ちゃんと話してくれたからなるべく軽減できるように動きたいと思う」
王の優しさに、ミリスは顔を上げられない。
「いいえ…陛下、弱い私は領主に相応しくなかったのです。罪を償うためにも、減刑は求めません」
この覚悟が、引き継ぎの時にあれば。
そう思わずにはいられないと、イルヴィンドとリラフィアは同じ気持ちで顔を見合わせた。
一方その頃、ミリスが告発するなどとは全く思っていないメラニー。
王妃が他の男と会っていたという恰好の脅し材料を手に入れたと喜び、夫の元へ帰る馬車を急がせていた。
(これであの女を引きずり下ろすことができるわ!あの澄ました顔が歪む姿を見るのが楽しみね)
王妃の不貞行為は致命的だ、いくら気弱で優しいあの国王でも庇えるはずがない。
破滅するのは自分だとも知らずに笑うメラニー。
彼女の悪意が城へ持ち込まれることとなる。
「…よく話してくれました、勇気がいったことでしょう。陛下にもご報告し対応を協議していただきます」
この場で拘束すると言われてもおかしくないと思っていたミリスは、リラフィアの寛大な処置に感激する。
そしてディラン家との繋がりについても話し始めた。
「不正を理由にアーロン商会から脅されている事を相談したのが始まりのようです…そこからディラン家からの支援金を貰うようになったと父のメモに書いてありました」
実はアーロン商会とディラン家が組んでいたことを、先代領主は死ぬまで気づかなかったようだ。
ミリスも不審に思いながら直接は聞かなかったが、メラニーが得意げに話してきたため確信した。
「彼らは我が領土を汚しました…そして私は守れなかった。今更ながら、どのような罰も受ける覚悟です」
ミリスが話し終えるのを待っていると、イルヴィンドが視察から帰ってきたという報せが。
リラフィアは女官ゾエに命じてイルヴィンドを呼ぶ。
「何事?」
大泣きしているミリスを見て目を丸くするイルヴィンドに、リラフィアが簡単に説明する。
「陛下、鉱山が次々と枯れた事件はアーロン商会と領主、そして財務長官ディランが絡んでいたそうです」
「え?!」
「ミリスは勇気を出して全て話してくれました。彼女の処罰は後程にして、まずはアーロン商会とディラン家の調査をすべきです」
突然のことに驚くイルヴィンドだったが、急を要することは分かる。
城に残してきた宰相へ連絡するよう命じ、ミリスに声を掛けた。
「ミリス、調査が終わるまで君の行動を制限させてもらうよ。不便だろうけど、ちゃんと話してくれたからなるべく軽減できるように動きたいと思う」
王の優しさに、ミリスは顔を上げられない。
「いいえ…陛下、弱い私は領主に相応しくなかったのです。罪を償うためにも、減刑は求めません」
この覚悟が、引き継ぎの時にあれば。
そう思わずにはいられないと、イルヴィンドとリラフィアは同じ気持ちで顔を見合わせた。
一方その頃、ミリスが告発するなどとは全く思っていないメラニー。
王妃が他の男と会っていたという恰好の脅し材料を手に入れたと喜び、夫の元へ帰る馬車を急がせていた。
(これであの女を引きずり下ろすことができるわ!あの澄ました顔が歪む姿を見るのが楽しみね)
王妃の不貞行為は致命的だ、いくら気弱で優しいあの国王でも庇えるはずがない。
破滅するのは自分だとも知らずに笑うメラニー。
彼女の悪意が城へ持ち込まれることとなる。
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