少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第15話

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数日後、リラフィアはライラ、そして先日親しくなったレナとルリアを部屋に招きちょっとしたお茶会を開いた。

まだ他の二人が来る前に、リラフィアはライラに尋ねる。


「ライラ、先日陛下に呼ばれたそうだけれど。」


そう言われて流石にバレていたかとライラは肩をすくめた。


「やっぱりバレるよねー、陛下はなんて?」


あの陛下のことだから問い詰められて計画を全て話してしまったのではないかと心配したライラだったが、


「陛下は、貴女とも交流を深めたいから呼んだのだとおっしゃっていたわ」


誤魔化したと聞き感心する。

そして笑いをこらえられずにニヤニヤしながらリラフィアを見た。


「ふふふ…ま、そういう事にしといてよ。大方の予想はしてるんでしょ?細かいとこまで知っちゃったら面白くないじゃない」


「…そうね」


幼い頃から賢かったリラフィアは、予想外の楽しい出来事というものをあまり経験したことがない。

想定できる、調べ上げることができる。そんな事ばかりだったから。

だからこそライラはイルヴィンドに協力し、サプライズを成功させてあげたかった。

王妃として勝手に裏のことを背負い奮闘している彼女に、束の間でも妻としての幸せな時間を過ごして欲しいのだ。


「少しくらいさ、肩の力を抜く時間も必要だよ」


「…優しさは陛下が担当してくださるから。わたくしは厳しさだけでもいいのよ」


悲しげに眉を寄せるリラフィアを不憫に思いながら、ライラはイルヴィンドを応援していた。


(うまくやってよね王様、リラフィアを幸せにしなきゃ許さないんだから)


自分はクリストファーに望まれて嫁に行き、大切にしてもらっているという実感がある。

しかしリラフィアは政略結婚だし、まだ若すぎる王から愛を貰っていない。

ただでさえ愛する人を失ってからの輿入れであるリラフィアの心情を思うと、ライラは辛くなってしまう。

ライラは、初夜の時にリラフィアがイルヴィンドに言った言葉を知らない。

夫婦内恋愛を提案し、懸命に距離を詰めようとしていることを知らないのだ。

かなり親しい方だが、さすがにそこまではリラフィアも明かしていなかった。

そこへレナとルリアが合流し、四人はそれぞれ持ち寄ったお茶菓子をつまみながら話に花を咲かせる。

話題の中心はリラフィアの誕生日についてで、自分たちは夫からなにを貰ったなどを語り合うレナとルリア。

リラフィアは適当に相槌を打ちながら、イルヴィンドはいったいなにをコソコソと準備しているのだろうかと考えていた。


(歴代の王は金色の薔薇を贈ることが多かったようだけれど、陛下は何をくださるのかしら。ドレス?宝石?そんなありきたりなものならコソコソ準備しないわよね…)


意外と予想がつかない。

けれど、きっと夜会で渡されるのだろうと思っていたリラフィアは当日驚かされる事になる。
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