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第9話:魔女会議
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魔女の集いへと向かったトゥリア。
顔を見せた彼女に、他の魔女たちが驚いた声をあげる。
「おや、トゥーリエの森のトゥリアじゃないか」
「お前さんが参加するなんて珍しい」
「槍でも降るのかね」
口々にからかってくる魔女たちに肩をすくめるトゥリア。
「ふん。ある意味ヤリが降るよ、戦争になるんだとさ」
穏やかではない発言、しかし魔女たちは気にしない。
長く生きてきた彼女たちは慣れっこなのだ。
「また戦争かい」
「人間どもは争いが好きだねえ」
「死にたくないって言うなら、まずは殺しをやめればいいのにねえ」
ケラケラ笑う魔女たちは、それぞれ使い魔やお気に入りの人間を連れている。
真っ赤な髪をした魔女サシェルは、可愛らしい顔立ちの少年を。
艶やかな黒髪の魔女ルリナは、二股の黒猫を。
妖艶な金髪魔女エリザベートは、整った顔立ちの青年を。
皆自慢するためにこの場に同行させているのだ。
「トゥリアはまだ趣味が変わらないのかい」
オジサマ好きを知っている面々が笑いながら言う。
「好みなんて人それぞれだろ、口出しするんじゃないよ」
顔を合わせるたびに嫌味を言われたり揶揄されるため、トゥリアは会議が嫌いなのだ。
30年に一度開かれる魔女会議は、使い魔などを自慢しあったり美しさを競ったりするだけのもの。
そういったものに興味がないトゥリアにとっては退屈で無意味で、初めて参加して以来ずっとサボっていた。
「戦争といえば、うちの近くの国が滅んだらしいよ」
「ああ、あそこはしょっちゅう戦争してたからね」
「勝ったのはドルグ王国だっけか、また国を吸収したのかい」
100年ほどの間に勢力を拡大してきているドルグ王国は、じわじわとトゥリアがいるヴァリス王国にも近づいてきている。
長年の天候不良で疲弊している上に間も無く内乱が起きる、ドルグの目がヴァリスに向かなければ良いが。
ヴィンセントのことを思い浮かべ、トゥリアは僅かな表情を曇らせた。
「まあそんなことより、あたしの新しい坊やを見ておくれよ」
サシェルが少年を見せびらかす。
幼い頃のヴィンセントを思い出させるような美少年だが、トゥリアは全く惹かれない。
「可愛いこと。どこで拾ったのさ」
「食糧難で売りに出されてたんだよ」
「おやおや、よく肥してやらないと」
注目を浴びる少年は、虚な表情で立っているだけ。
(…かわいそうに。もうすぐ食われるって分かってて諦めてるんだね)
サシェルは物理的な意味で食べるわけではないが、精気を吸い取られた人間は干からびてミイラになる。
一時的に拾われただけの命だと理解しているのだろう、少年の目に気力は見られない。
(あんな坊やから吸い取っても不味そうだけどね。あたしのほうがあんたらを理解できないわ)
エリザベートが連れている青年も、その美しい顔に力ない笑みを浮かべて立っているところを見ると近い将来訪れる死を覚悟しているのだろう。
青年を紹介していたエリザベートは、自慢げに豊満な胸を揺らす。
「相変わらず胸にばかり栄養がいくね」
「そのうち胸だけになるんじゃないかい」
他の魔女たちにからかわれても、エリザベートはご満悦だ。
トゥリアにとっては実りのない無駄な時間が過ぎていき、会議という名の茶会は終わった。
顔を見せた彼女に、他の魔女たちが驚いた声をあげる。
「おや、トゥーリエの森のトゥリアじゃないか」
「お前さんが参加するなんて珍しい」
「槍でも降るのかね」
口々にからかってくる魔女たちに肩をすくめるトゥリア。
「ふん。ある意味ヤリが降るよ、戦争になるんだとさ」
穏やかではない発言、しかし魔女たちは気にしない。
長く生きてきた彼女たちは慣れっこなのだ。
「また戦争かい」
「人間どもは争いが好きだねえ」
「死にたくないって言うなら、まずは殺しをやめればいいのにねえ」
ケラケラ笑う魔女たちは、それぞれ使い魔やお気に入りの人間を連れている。
真っ赤な髪をした魔女サシェルは、可愛らしい顔立ちの少年を。
艶やかな黒髪の魔女ルリナは、二股の黒猫を。
妖艶な金髪魔女エリザベートは、整った顔立ちの青年を。
皆自慢するためにこの場に同行させているのだ。
「トゥリアはまだ趣味が変わらないのかい」
オジサマ好きを知っている面々が笑いながら言う。
「好みなんて人それぞれだろ、口出しするんじゃないよ」
顔を合わせるたびに嫌味を言われたり揶揄されるため、トゥリアは会議が嫌いなのだ。
30年に一度開かれる魔女会議は、使い魔などを自慢しあったり美しさを競ったりするだけのもの。
そういったものに興味がないトゥリアにとっては退屈で無意味で、初めて参加して以来ずっとサボっていた。
「戦争といえば、うちの近くの国が滅んだらしいよ」
「ああ、あそこはしょっちゅう戦争してたからね」
「勝ったのはドルグ王国だっけか、また国を吸収したのかい」
100年ほどの間に勢力を拡大してきているドルグ王国は、じわじわとトゥリアがいるヴァリス王国にも近づいてきている。
長年の天候不良で疲弊している上に間も無く内乱が起きる、ドルグの目がヴァリスに向かなければ良いが。
ヴィンセントのことを思い浮かべ、トゥリアは僅かな表情を曇らせた。
「まあそんなことより、あたしの新しい坊やを見ておくれよ」
サシェルが少年を見せびらかす。
幼い頃のヴィンセントを思い出させるような美少年だが、トゥリアは全く惹かれない。
「可愛いこと。どこで拾ったのさ」
「食糧難で売りに出されてたんだよ」
「おやおや、よく肥してやらないと」
注目を浴びる少年は、虚な表情で立っているだけ。
(…かわいそうに。もうすぐ食われるって分かってて諦めてるんだね)
サシェルは物理的な意味で食べるわけではないが、精気を吸い取られた人間は干からびてミイラになる。
一時的に拾われただけの命だと理解しているのだろう、少年の目に気力は見られない。
(あんな坊やから吸い取っても不味そうだけどね。あたしのほうがあんたらを理解できないわ)
エリザベートが連れている青年も、その美しい顔に力ない笑みを浮かべて立っているところを見ると近い将来訪れる死を覚悟しているのだろう。
青年を紹介していたエリザベートは、自慢げに豊満な胸を揺らす。
「相変わらず胸にばかり栄養がいくね」
「そのうち胸だけになるんじゃないかい」
他の魔女たちにからかわれても、エリザベートはご満悦だ。
トゥリアにとっては実りのない無駄な時間が過ぎていき、会議という名の茶会は終わった。
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