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第4章〜お節介〜

第34話

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食事を終えたヴィンたちはしばらく街中を散策していたが、そろそろライアンの服が仕上がったかも知れないという時間になりライアンだけ別行動することに。


「ライちゃん、一緒にいこうか?どうせ受け取りが終わったら船に戻るし…」


ミュフィはそう提案したが、ライアンは一人で行くといって足早に去ってしまった。

ミュフィとヴィンは仕方なく二人で船を目指し歩きはじめる。


「ライアンは自由すぎるな」


ヴィンは思わずそうこぼしてしまう。

ライアンが仲間に入ってから5年ほど経つが、掴みどころのない性格に振り回されることが何度もあるのだ。


「私は羨ましいです、信念があるというか…」


ライアンほど突き抜けた性格が羨ましくもある。

ミュフィの言葉にヴィンは苦笑し、ふと目に入った店の前で足を止めた。


「…雑貨屋か。ミュフィ、何か欲しいものはあるか?」


店の窓際には小物やアクセサリーが飾られている。


「え、でも…無駄遣いになっちゃいますし」


「一つくらい構わない。ミュフィは何も持ってきていないしな」


実家に私物を取りに戻ることもできないミュフィは、何一つ自分の物を持っていない状態。

少しくらい私用の買い物をしてもいいだろうというヴィンの言葉に、ミュフィは嬉しくなり店に入る。


「わぁ…!かわいい!」


ミュフィは普段から贅沢などしたことがなく、アクセサリーも母に買ってもらったネックレスを一つ持っていただけ。

それすら持ち出せなかったので、ついネックレス売り場に目をやると母から貰ったものに似たデザインを見つけた。


「あ、これ…母さんが買ってくれたのに似てる」


「それにするか?」


「…はい。同じものではないけど、これにします」


会計のため店員に渡すと、


「ありがとうございました~、あ、彼氏さんにつけてもらいますかー?」


そう言われミュフィが顔を赤くした。


「えっ、彼氏さんとかそんな、そんな関係じゃないです!」


「あらそうなんですか?…失礼いたしましたー」


(もー!変なこと言われたらヴィンさんが嫌な顔するじゃない…)


チラリとヴィンの顔を伺うと、なにやら難しい顔をしている。


(やっぱり嫌そう…)


ミュフィは泣きたくなりながら店を出た。

そのまま二人は無言で船へ向かっていたが、大通りから外れたところでヴィンが口を開く。
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