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第1章〜出会い〜

第4話

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「え~?紹介してよぉ」


そして縦ロール男はミュフィの隣に腰を下ろす。


「初めまして~、アタシはライアン。ライちゃんって呼んでね♪」


いきなり真横に来られたミュフィは、思いっきり身を引いてしまった。


「は、はじめまして…!」


「うふふ~、怖がらなくていいのよ~♪カワイコちゃん、お名前は?」


「あ、ミュフィ…です」


「ミュフィちゃん!なんて可愛いのかしら~」


両手を頬に添えながらクネクネと体を揺らし、喜びを表現するライアン。

悪い人ではなさそうだが、なにせインパクトが強すぎる…戸惑いを隠せないミュフィを見て、ヴィンが溜息をつく。


「…ライアン、あまり驚かせるな。怖がるだろうが」


「ライちゃんって呼んでって言ってるでしょ!いつまで経っても呼んでくれないんだから…船長なんてしーらない」


ライアンは拗ねたように口を尖らせた。

その唇には真っ赤な口紅。頬も桃色に染めてあり、瞼は紫だ。


「す、すみません驚いてしまって…助けていただいたのに」


ミュフィは謝った。

人を見た目で判断してはいけない…悪名高き海賊団とはいえ、ひとまず助かったことは事実なのだから。


「助けてもらった?」


経緯を知らず首を傾げるライアンに、ヴィンが説明する。


「裏道で売られていたから買ってみた」


説明というには簡潔すぎる…そしてやはり真意不明。

しかしライアンは慣れているのか気にすることなく、パァっと顔を輝かせて立ち上がった。


「あら~、じゃあこの子船に乗せるのね?華が出るわ~♪」


ライアンがぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶたびに、床がギシギシと軋んだ…。


「やめろ飛ぶな床が抜ける」


ヴィンに注意され、一瞬ライアンの目つきが鋭くなる。

しかしすぐに笑顔に戻り、


「こうしちゃいられないわ~、準備しなきゃ♪」


そう言ってライアンは部屋を出て行った。


(な、なんか凄い人だった…あの人も海賊ってことよね)


癖が強いにもほどがある。

彼?彼女??


「い、今の人は?」


しばし呆然としてしまったミュフィだったが、気を取り直してヴィンに尋ねる。


「あいつは鍛治職人だ。武器の製造と調達を担当している」


なるほど、あの筋肉は鍛冶屋だからなのか。

ミュフィは一人納得した。


…あのファッションの理由は分からないけど。
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