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それぞれの幸せのために

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宝石商のコーラル家と商人ギルド長のアメジスト家は、仕事上のパートナーとして長年親交を続けていた。

家族同士の付き合いで、同じ年にコーラル家に娘サンゴが、アメジスト家に息子シオンが生まれるなど運命共同体のような関係。

そこで父親同士、飲み会のノリで宣言する。


「「よし、お互いの子供を結婚させよう!!」」


こうして生まれてすぐに婚約が結ばれ、二人は幼馴染であり許嫁として育つ事に。

三ヶ月先に生まれたサンゴはとにかく動き回りたいお転婆で、シオンは読書の方が好きな大人しい子供であった。

正反対の性格、それでも両親は「それくらいが丁度いい!」と笑って済ませること十六年。

姉弟のようで、友人のような二人は喧嘩をする事もあったけれど。


「サンゴのほうが少しお姉さんなんだから、優しくしてあげなさい」

「シオンは男の子なんだから、もっとしっかりしなさい」


お互いに叱られ、親が敷いたレールの上を歩かされる人生。


「もうウンザリだわ」


サンゴが言えば、


「僕もだよ…」


シオンも弱々しく頷く。


「あたしは大人しくしなきゃいけいないなら女らしくなんてしたくないわ」

「僕も、本を読んだり花を育てたりするのが好きなのにやめたくないよ」

「シオンにはそれが合ってるわよね」

「サンゴにも合ってるよ」


そして二人は進学を機に決意する。


「「よし、婚約破棄を宣言しよう!」」


それぞれ寮生活を希望して迎えた、高等学校入学式の日。

寂しがる両親による見送り会の場で、二人はハッキリと告げたのだ。


「私たちは婚約破棄を求めます!」

「な!?なぜだ、仲良くしてきたではないか!」

「あと二年で結婚できるのよ、夫婦になれるのに!」

「育ててくれた恩は感じています、寮生活の事も感謝してます」

「でも、決められた関係が嫌なの!」

「僕らは婚約を破棄して、それぞれ新たな婚約を結びたいと思います」

「なんと…他に好きな人がいたのか」


両親はショックを受けたが、二人の決意は硬そうだと見て諦めの表情。

サンゴとシオンは顔を見合わせ、声を合わせて宣言する。


「「私(ぼく)たちは、今この場で婚約を破棄し、今この場で婚約を結び直すことを宣言します!!」」


晴れやかな笑顔で告げられた言葉に、それぞれの両親は呆然とした。


「…ん?どういう事だ??」


混乱している両親に、二人は説明する。


「親が決めたから結婚するんじゃなくて、自分たちの意思で結婚したいの!」

「数年前から、ちゃんと好きな人と結婚したいねって話をしてて。じゃあやっぱりお互いだねってなったんだ」


二人の決断は、許嫁関係を解消してから婚約を結び直すことだったのだ。

両家は顔を見合わせ、意味を理解に笑い出す。

我が子らしいとどこか誇らしげなコーラル家、そして安心した様子のアメジスト家。

きっと二人はこれからも喧嘩する事もあるだろう、しかし幸せな家庭を築くに違いない。

誰よりも理解しあっている者同士、心が通じ合っているのだから。
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