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番外編:弟達
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ジークハルトの弟であるエミルは、学業と研究、実験に没頭する事が楽しくてたまらなかった。
ライネール家のレクロムもまた、知識を集めるのが好きなタイプ。
ランカスター家の茶会などで何度か顔を合わせるうちに意気投合した二人は、密かに友情を育んでいた。
「ねえレクロム、見てよこれ。新薬なんだけど、なかなか拷問に使えそうな良い出来なんだ」
笑顔で物騒なことを言うエミルに、レクロムも薄い笑みを浮かべる。
「へえ…いいね。でもそんなのよく学園が作らせてくれたね?」
あくまでも学生たちが学ぶ場であるはずなのに、在学中に毒薬を作ったのか?
レクロムの問いに、エミルはいい笑顔のまま答える。
「まさか!これはね、神経系の薬なんだ。適量なら、硬化してしまった神経を緩めてくれる治療薬になるんだけどね」
毒と薬は表裏一体。
使い方を変えれば作用が変わる、というわけだ。
「さすがエミル。素晴らしいものを作ったね」
水薬の入った小瓶を眺めながら微笑むレクロム。
(上手く使えば邪魔者を消すのにも便利そうだ…)
そんなことを考えていたレクロムに、エミルは得意げな顔で説明を続けていたが…
「…ま、僕にできるのはこれくらいだからさ」
急に表情を曇らせ肩を落とすエミル、その脳裏には兄ジークハルトの姿が浮かぶ。
「兄さんは強くて勇敢で、みんなに認められてる。父さんも母さんも自慢してる」
率先して戦いの場に出て行き勝利を収めるジークハルトは、人々にとってまさに英雄。
もちろんエミルにとっても自慢の兄だ。
「僕は兄さんみたいに剣を振るえない。かっこよく戦いの場に出られない、だから…」
歳の差もあり追いつけないことを気にしていたエミルに、両親はいつも優しく接してくれた。
「お前にはお前の得意分野がある、それを活かせばいいんだよ」
そう言って背中を押してくれたから、今のエミルがいるのだ。
「僕は僕のやり方で役に立つ!」
「そうだねエミル、君の才能は素晴らしいよ」
普段は無表情なレクロムだが、エミルのことは本当の友人だと思っているため優しい笑みを向け彼の才能を讃える。
そして、
「この薬、一瓶買わせてもらえるかな」
「欲しいならあげるよ?お金なんて要らない」
「君の努力に対する正当な報酬だよ、受け取ってくれないと僕の気が済まない」
薬を買い取ったレクロムは、エミルと別れた後とある場所へと馬車を走らせた。
「さて…早速だけど使わせてもらおう。ちょうど最近サクリスに近づく鬱陶しい奴がいて困っていたんだ」
財務長官の補佐役で、横領疑惑があるが権力に物を言わせて好き勝手していると言う男。
レクロムにとって何よりも大切な存在であるサクリスに近寄る虫は、全て排除する…そのために、その男がよく出入りしているという店へと向かう。
女癖が悪いことで有名な男だ、油断しきっているだろう。
「全てはサクリスの幸せのために」
それが彼の原動力-----
ライネール家のレクロムもまた、知識を集めるのが好きなタイプ。
ランカスター家の茶会などで何度か顔を合わせるうちに意気投合した二人は、密かに友情を育んでいた。
「ねえレクロム、見てよこれ。新薬なんだけど、なかなか拷問に使えそうな良い出来なんだ」
笑顔で物騒なことを言うエミルに、レクロムも薄い笑みを浮かべる。
「へえ…いいね。でもそんなのよく学園が作らせてくれたね?」
あくまでも学生たちが学ぶ場であるはずなのに、在学中に毒薬を作ったのか?
レクロムの問いに、エミルはいい笑顔のまま答える。
「まさか!これはね、神経系の薬なんだ。適量なら、硬化してしまった神経を緩めてくれる治療薬になるんだけどね」
毒と薬は表裏一体。
使い方を変えれば作用が変わる、というわけだ。
「さすがエミル。素晴らしいものを作ったね」
水薬の入った小瓶を眺めながら微笑むレクロム。
(上手く使えば邪魔者を消すのにも便利そうだ…)
そんなことを考えていたレクロムに、エミルは得意げな顔で説明を続けていたが…
「…ま、僕にできるのはこれくらいだからさ」
急に表情を曇らせ肩を落とすエミル、その脳裏には兄ジークハルトの姿が浮かぶ。
「兄さんは強くて勇敢で、みんなに認められてる。父さんも母さんも自慢してる」
率先して戦いの場に出て行き勝利を収めるジークハルトは、人々にとってまさに英雄。
もちろんエミルにとっても自慢の兄だ。
「僕は兄さんみたいに剣を振るえない。かっこよく戦いの場に出られない、だから…」
歳の差もあり追いつけないことを気にしていたエミルに、両親はいつも優しく接してくれた。
「お前にはお前の得意分野がある、それを活かせばいいんだよ」
そう言って背中を押してくれたから、今のエミルがいるのだ。
「僕は僕のやり方で役に立つ!」
「そうだねエミル、君の才能は素晴らしいよ」
普段は無表情なレクロムだが、エミルのことは本当の友人だと思っているため優しい笑みを向け彼の才能を讃える。
そして、
「この薬、一瓶買わせてもらえるかな」
「欲しいならあげるよ?お金なんて要らない」
「君の努力に対する正当な報酬だよ、受け取ってくれないと僕の気が済まない」
薬を買い取ったレクロムは、エミルと別れた後とある場所へと馬車を走らせた。
「さて…早速だけど使わせてもらおう。ちょうど最近サクリスに近づく鬱陶しい奴がいて困っていたんだ」
財務長官の補佐役で、横領疑惑があるが権力に物を言わせて好き勝手していると言う男。
レクロムにとって何よりも大切な存在であるサクリスに近寄る虫は、全て排除する…そのために、その男がよく出入りしているという店へと向かう。
女癖が悪いことで有名な男だ、油断しきっているだろう。
「全てはサクリスの幸せのために」
それが彼の原動力-----
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みんなの感想(24件)
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お久しぶりで〜す(=^・^=)
更新ありがとう御座います🎶
その尊敬する兄は人間的に大きな失敗してるよΣ(´∀`;)
取り返しはつかない?まぁそれなり着地になってるよ!
人それぞれだから気にしなくて良いよエミル!
どら様
お久しぶりです!シレっと更新しました〜
読んでいただきありがとうございます(*^o^*)
ヘタレ兄さんだなんて知らない頃、憧れのヒーローでした( ̄ー ̄)ムフフ
エミルもズレているのである意味似た者兄弟なのかもしれません(笑)
お久しぶり更新、めっちゃ嬉しいよ~。・゚・(ノ∀`)・゚・。
相変わらず…ほぼ片思いジークハルトお疲れ様^^; (その他大勢よりな感じのシズリア。ジークハルトめげずに頑張れー)
でも、溺愛パパになってました!
二人目もできて幸せそうですね〜
間が空いても読めるのが嬉しいので、チャンスがあれば宜しくお願い致します(*^^*)
お久しぶりです、いつもありがとうございます!
シズリアが恋愛の面で成長したとしても、多分これくらいなんだろうなと思いながら書きました( ̄▽ ̄)
皆んなが幸せならそれでよし!笑
〈誤字報告〉
一箇所「シズリア」が「シスリア」(濁点がない)になっていました。
ジークは家族に弱そうですね。
愛故なのでしょうが、そうするとアイリスは嫁に行けるのかが心配になりますね。
ありがとうございます、修正いたしました!
ジークハルトは身内相手だとヘタレなので、女性陣に弱いです(笑)
アイリスが嫁に行く時は、本当は寂しいけど子離れしないとシズリアに怒られるので泣く泣く嫁に出すことでしょう( ´ ▽ ` )