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第73話:誤解と嫉妬、そして歩み寄り
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時は『恋のキューピッド作戦』茶会の前に遡る。
ライネール夫人から相談を受け、サクリス本人からもツェーザルが気になると打ち明けられたシズリアが茶会を計画していたある日。
「シズリア…お前もしかして、ツェーザルの事が気になっているのか?」
どこか落ち着かない様子で部屋を訪れたジークハルトの一言に、シズリアは驚いた。
「…へ?」
「いや、俺に口出しする権利がない事は分かっている。お前があいつを好きになったなら、俺は…応援する…と言いたくないが仕方ない事だ」
「え、ちょっと待ってください、何の話ですか??」
なにやら勝手に誤解して結論を出そうとしている様子。
慌てたシズリアは、まず誤解を解くことにした。
「えーっと、何故私がツェーザルを好きだなんて話になるのですか?」
「あいつの好みを聞いて回ったり、よく話しかけているだろう?」
「それは…」
勝手にサクリスの恋をバラして良いのだろうか。
しかし屋敷で茶会を開くからには夫の協力もあったほうがいいだろう、そう考えジークハルトにも事情を話すことに。
「…と、いうわけなのです。だから私がツェーザルについて調べたりしているのは、サクリス様の初恋を応援してあげたいからなのです」
「そうだったのか…あのサクリス嬢がツェーザルを気にしているとは」
人の本質を見抜く不思議な娘だと認識している。
彼女が惹かれたのなら、きちんとツェーザルの内面を感じ取ってのことたろう。
夢を諦めて荒れていた頃から知っているジークハルトは、兄のような父のような気持ちで彼を見守ってきた。
「ツェーザルがサクリス嬢を受け入れるかどうかは分からんが、上手くいけば喜ばしいことだな」
幸せになってくれたらという思いは常にあるのだ。
事情を知り誤解であったと理解したジークハルトは、バツが悪そうに頭をかく。
「…すまん。勝手に嫉妬して変なことを言った」
「いえ…誤解を生むようなことをして申し訳ございません」
「お前は悪くないよ」
「ですが…」
公爵夫人として、紛らわしい真似をすべきではない。
反省し落ち込むシズリアを、ジークハルトが抱きしめる。
「俺が余計なことを考えて余裕を無くしただけだ。シズリアが謝ることじゃない」
「ジークハルト様…」
「…そろそろジークと呼んでくれないか?」
彼を愛称で呼ぶのはキリアと、その母でありジークハルトの乳母を務めた女性くらいだ。
シズリアともっと親しくなりたいジークハルトとしては、いい加減他人行儀な態度を卒業して欲しかった。
「…ジーク様」
「これからはそう呼んでくれ」
「分かりました」
「…命令ではないぞ?」
渋々従ったように見えたのか、不安げなジークハルト。
シズリアは笑いながら首を振り、ジークハルトを見上げる。
「ごめんなさい、仲良くなるには必要な事ですよね。私ももっと貴方のことを知らなくちゃ」
シズリアの笑顔を見てジークハルトは思わず顔を近づける。
「…嫌なら言ってくれ」
唇が触れるかと思われた、その寸前で顔が止まり理性を振り絞るジークハルト。
シズリアは少し考え、嫌ではないですと答えて目を閉じた。
ライネール夫人から相談を受け、サクリス本人からもツェーザルが気になると打ち明けられたシズリアが茶会を計画していたある日。
「シズリア…お前もしかして、ツェーザルの事が気になっているのか?」
どこか落ち着かない様子で部屋を訪れたジークハルトの一言に、シズリアは驚いた。
「…へ?」
「いや、俺に口出しする権利がない事は分かっている。お前があいつを好きになったなら、俺は…応援する…と言いたくないが仕方ない事だ」
「え、ちょっと待ってください、何の話ですか??」
なにやら勝手に誤解して結論を出そうとしている様子。
慌てたシズリアは、まず誤解を解くことにした。
「えーっと、何故私がツェーザルを好きだなんて話になるのですか?」
「あいつの好みを聞いて回ったり、よく話しかけているだろう?」
「それは…」
勝手にサクリスの恋をバラして良いのだろうか。
しかし屋敷で茶会を開くからには夫の協力もあったほうがいいだろう、そう考えジークハルトにも事情を話すことに。
「…と、いうわけなのです。だから私がツェーザルについて調べたりしているのは、サクリス様の初恋を応援してあげたいからなのです」
「そうだったのか…あのサクリス嬢がツェーザルを気にしているとは」
人の本質を見抜く不思議な娘だと認識している。
彼女が惹かれたのなら、きちんとツェーザルの内面を感じ取ってのことたろう。
夢を諦めて荒れていた頃から知っているジークハルトは、兄のような父のような気持ちで彼を見守ってきた。
「ツェーザルがサクリス嬢を受け入れるかどうかは分からんが、上手くいけば喜ばしいことだな」
幸せになってくれたらという思いは常にあるのだ。
事情を知り誤解であったと理解したジークハルトは、バツが悪そうに頭をかく。
「…すまん。勝手に嫉妬して変なことを言った」
「いえ…誤解を生むようなことをして申し訳ございません」
「お前は悪くないよ」
「ですが…」
公爵夫人として、紛らわしい真似をすべきではない。
反省し落ち込むシズリアを、ジークハルトが抱きしめる。
「俺が余計なことを考えて余裕を無くしただけだ。シズリアが謝ることじゃない」
「ジークハルト様…」
「…そろそろジークと呼んでくれないか?」
彼を愛称で呼ぶのはキリアと、その母でありジークハルトの乳母を務めた女性くらいだ。
シズリアともっと親しくなりたいジークハルトとしては、いい加減他人行儀な態度を卒業して欲しかった。
「…ジーク様」
「これからはそう呼んでくれ」
「分かりました」
「…命令ではないぞ?」
渋々従ったように見えたのか、不安げなジークハルト。
シズリアは笑いながら首を振り、ジークハルトを見上げる。
「ごめんなさい、仲良くなるには必要な事ですよね。私ももっと貴方のことを知らなくちゃ」
シズリアの笑顔を見てジークハルトは思わず顔を近づける。
「…嫌なら言ってくれ」
唇が触れるかと思われた、その寸前で顔が止まり理性を振り絞るジークハルト。
シズリアは少し考え、嫌ではないですと答えて目を閉じた。
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