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第67話:恋のキューピッド?
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月日は流れ、アイリスが一歳を過ぎた頃。
ライネール侯爵夫人からとある頼み事をされていたシズリアは、初めて自ら茶会を開いた。
親しい者達だけで集まろう、と呼び掛けてライネール家からは夫人とサクリス、レクロム。
キリアも生後半年の息子ライラックを連れて夫と参加。
更にシズリアはツェーザルにも参加者として席を用意していた。
「…なぜ俺が?」
御者でしかない庶民なのにと困惑するツェーザルを、世話になっているからと半ば強引に参加させたシズリア。
ディアナとディルク、そしてジークハルトも参加するという完全にアットホームな茶会。
秘書のクラウスにも参加しないかと声を掛けたが、
「人にお茶を淹れてもらうよりも、お茶を振る舞う方が好きですね」
と言って今日は彼がお茶を淹れてくれている。
芝生に広げられた大きな布の上で、1歳になりよちよち歩きを始めたアイリスを生後半年のライラックがハイハイで必死に追い回す。
「おーでっ(おいで)」
「あー!きゃー!」
「アイリス様お喋りがお上手ですわね、流石はシズリア様のお子様です!」
「ライラックもすぐに覚えそうね、あんなに一生懸命アイリスを追いかけて」
「あの子は体が先という感じです、よく飲んでよく寝て、起きている間はずっと動いていて」
「元気で良いことだわ」
キリアはまだ休暇中のため、毎日とはいかないがシズリアにとって彼女と子育ての話が出来る日は毎回楽しいものだ。
本人はもう復帰したいと言っているのだが、しっかり一年ほどは休んだ方がいいとシズリアが止めている。
(こっちの世界には育休という考えが無いみたい。動けるようになったら確実自由に復帰!って感じ)
無理して亡くなる人もいると聞き、その辺りの事情は自分がいた世界よりかなり遅れているようだと心配になったのだ。
キリアならば嬉々として仕事に打ち込むだろう、その結果が悲しいものになったらと思うと復帰してくれとは言えない。
暫くは月に一度程度会うだけで我慢だ。
子供達を微笑ましく見つめるディアナとディルク、そしてライネール夫人。
ジークハルトはキリアの夫ライガスと父親談義。
完全に浮いている、と置物と化しているのはツェーザルだ。
(なんで俺まで呼ばれたんだよ…)
楽にしていいからねとシズリアから言われているけれど。
ライネール家の人々の前で素を出すわけにいかない、一体この場で何をしろというのか。
呼ばれた理由が全く分からず、ツェーザルは居心地の悪さを感じていた。
そんな彼に視線を送るのは、サクリス。
一言も発していないし無表情だが、実は。
(…素敵な人)
ツェーザルに対してかなり好意的で、興味を抱いているのだ。
どうも娘の様子がいつもと違う…という母の勘が働いたライネール夫人から相談を受けたシズリアが探りを入れたところ、サクリスからも相談を受けた。
『お馬の人、とても不思議。気になるの』
初めはツェーザルが演技している事を感じ取って違和感があるのかと思ったのだが、初めて他人に興味を持ったからなのかどんどん気になっていく様子。
『お馬さんと話してた。かっこいい』
アイリスに会うという名目で屋敷を訪れた際、こっそりツェーザルを観察したサクリス。
馬の世話をしている様子を見たらしく、そこで更に惹かれたらしい。
(見た目が良いのは間違い無いけど、サクリス様はそんなこと気にしないはず。内面的な何かを感じ取って気になってるのかしら)
どうやらツェーザルを気にしているらしい、とライネール夫人に報告したシズリア。
すると夫人から、一度直接話す機会を設けてくれないかと頼まれたのだ。
今回の茶会は、二人を接近させるための恋のキューピッド作戦の場であった。
ライネール侯爵夫人からとある頼み事をされていたシズリアは、初めて自ら茶会を開いた。
親しい者達だけで集まろう、と呼び掛けてライネール家からは夫人とサクリス、レクロム。
キリアも生後半年の息子ライラックを連れて夫と参加。
更にシズリアはツェーザルにも参加者として席を用意していた。
「…なぜ俺が?」
御者でしかない庶民なのにと困惑するツェーザルを、世話になっているからと半ば強引に参加させたシズリア。
ディアナとディルク、そしてジークハルトも参加するという完全にアットホームな茶会。
秘書のクラウスにも参加しないかと声を掛けたが、
「人にお茶を淹れてもらうよりも、お茶を振る舞う方が好きですね」
と言って今日は彼がお茶を淹れてくれている。
芝生に広げられた大きな布の上で、1歳になりよちよち歩きを始めたアイリスを生後半年のライラックがハイハイで必死に追い回す。
「おーでっ(おいで)」
「あー!きゃー!」
「アイリス様お喋りがお上手ですわね、流石はシズリア様のお子様です!」
「ライラックもすぐに覚えそうね、あんなに一生懸命アイリスを追いかけて」
「あの子は体が先という感じです、よく飲んでよく寝て、起きている間はずっと動いていて」
「元気で良いことだわ」
キリアはまだ休暇中のため、毎日とはいかないがシズリアにとって彼女と子育ての話が出来る日は毎回楽しいものだ。
本人はもう復帰したいと言っているのだが、しっかり一年ほどは休んだ方がいいとシズリアが止めている。
(こっちの世界には育休という考えが無いみたい。動けるようになったら確実自由に復帰!って感じ)
無理して亡くなる人もいると聞き、その辺りの事情は自分がいた世界よりかなり遅れているようだと心配になったのだ。
キリアならば嬉々として仕事に打ち込むだろう、その結果が悲しいものになったらと思うと復帰してくれとは言えない。
暫くは月に一度程度会うだけで我慢だ。
子供達を微笑ましく見つめるディアナとディルク、そしてライネール夫人。
ジークハルトはキリアの夫ライガスと父親談義。
完全に浮いている、と置物と化しているのはツェーザルだ。
(なんで俺まで呼ばれたんだよ…)
楽にしていいからねとシズリアから言われているけれど。
ライネール家の人々の前で素を出すわけにいかない、一体この場で何をしろというのか。
呼ばれた理由が全く分からず、ツェーザルは居心地の悪さを感じていた。
そんな彼に視線を送るのは、サクリス。
一言も発していないし無表情だが、実は。
(…素敵な人)
ツェーザルに対してかなり好意的で、興味を抱いているのだ。
どうも娘の様子がいつもと違う…という母の勘が働いたライネール夫人から相談を受けたシズリアが探りを入れたところ、サクリスからも相談を受けた。
『お馬の人、とても不思議。気になるの』
初めはツェーザルが演技している事を感じ取って違和感があるのかと思ったのだが、初めて他人に興味を持ったからなのかどんどん気になっていく様子。
『お馬さんと話してた。かっこいい』
アイリスに会うという名目で屋敷を訪れた際、こっそりツェーザルを観察したサクリス。
馬の世話をしている様子を見たらしく、そこで更に惹かれたらしい。
(見た目が良いのは間違い無いけど、サクリス様はそんなこと気にしないはず。内面的な何かを感じ取って気になってるのかしら)
どうやらツェーザルを気にしているらしい、とライネール夫人に報告したシズリア。
すると夫人から、一度直接話す機会を設けてくれないかと頼まれたのだ。
今回の茶会は、二人を接近させるための恋のキューピッド作戦の場であった。
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