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第60話:守ってくれたのは
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広間に響く声、その主は国王ガルディオン。
「エレナ・カーチェスよ。手を下ろしなさい」
二階から現れた王の隣には王妃が、そしてその後ろにはジークハルトの姿もある。
何故かジークハルトは帯剣を許されていた。
(ジークハルト様…?)
見上げるシズリアはジークハルトと目が合い、僅かに微笑まれて肩の力が抜ける。
静かに見下ろしてくる王の姿に、流石のエレナも動きを止めた。
「国王様…」
「エレナよ、其方の事は赤子の頃から知っている。だから成長してくれる事を願っていた…」
王は悲しげに目を閉じ、小さく息を吐く。
その目が再び開かれた時、そこに慈愛の色は無くあるのは厳しさのみ。
「其方の父は長年の不正の罪により投獄された。其方の身柄も確保する」
王の命により広間に駆け込んでくる兵士達。
突然のことに人々の間に動揺が広がるが、当のエレナは無表情だった。
「お父様が不正?それが私に何の関係があるとおっしゃるの」
「其方自身にも多くの疑惑があるのだ。取り調べる必要がある」
今まで何人もの令嬢達への嫌がらせを指示してきたエレナ。
直接手を下していなかったとしても、無罪とはいかない。
距離を詰めてくる兵士たちを見て言い逃れ出来ないと悟ったエレナは、
「…何もかもあんたが悪いのよ…あんたさえ現れなければ全て上手くいったはずなのに!」
シズリアに向かって走った。
ディアナを突き飛ばし、その手に小刀を握りしめて。
「シズリア!!」
二階から階段を駆け降りるジークハルト、しかしその距離で間に合うはずはない。
ディルクは咄嗟に妻ディアナに駆け寄っていたため、シズリアから目を離していた。
アイリスを庇う為にエレナへ背を向けたシズリア、その身に衝撃を受け膝をつきうずくまる。
「シズリア!アイリス!無事か!?」
「は、はい…大丈夫です」
階段途中から飛び降りて駆け付けたジークハルトに抱きしめられ、シズリアは早鐘を打つ鼓動を必死に抑えた。
大声で泣くアイリスは無事だ、自分も刺されていない。
どうなったのかと振り向いたシズリアの前に立ち塞がっていたのは、黒尽くめの人物だった。
(…誰??)
頭のてっぺんから足先まで黒い衣装に身を包んだ人物は、男か女かどうかも分からない。
その人物がエレナの凶器を受け止め、全く同じ格好をしたもう一人の人物がエレナを取り押さえている。
「…エレナ・カーチェスを連行せよ」
王の一声で時が止まっていた室内は動きだし、エレナは兵士達に捕らえられた。
「離しなさいよ無礼者!!その女を殺すのよ!!」
「エレナ…お前は超えてはならない一線を越えた」
怒りを込めて睨むジークハルトの視線をものともせず、エレナは必死に叫ぶ。
「ジークハルト様、そんな女より私を見て!何人だって子供を産んであげるわ!」
「ふざけるな!!昔からお前になんて興味なかった…シズリアにこんな真似をして許されると思うなよ!!」
珍しく怒りを露わにするジークハルトの姿に、こんな時だが少しときめくシズリア。
(…そんな事考えてる場合じゃないのに)
命を狙われたのだ、アイリスも居て身軽に動けない状況で。
無事だったから良かったものの、エレナの行動は常軌を逸している。
あまりの出来事にシズリアの思考は明後日の方向へ飛びかけていた。
「エレナ・カーチェスよ。手を下ろしなさい」
二階から現れた王の隣には王妃が、そしてその後ろにはジークハルトの姿もある。
何故かジークハルトは帯剣を許されていた。
(ジークハルト様…?)
見上げるシズリアはジークハルトと目が合い、僅かに微笑まれて肩の力が抜ける。
静かに見下ろしてくる王の姿に、流石のエレナも動きを止めた。
「国王様…」
「エレナよ、其方の事は赤子の頃から知っている。だから成長してくれる事を願っていた…」
王は悲しげに目を閉じ、小さく息を吐く。
その目が再び開かれた時、そこに慈愛の色は無くあるのは厳しさのみ。
「其方の父は長年の不正の罪により投獄された。其方の身柄も確保する」
王の命により広間に駆け込んでくる兵士達。
突然のことに人々の間に動揺が広がるが、当のエレナは無表情だった。
「お父様が不正?それが私に何の関係があるとおっしゃるの」
「其方自身にも多くの疑惑があるのだ。取り調べる必要がある」
今まで何人もの令嬢達への嫌がらせを指示してきたエレナ。
直接手を下していなかったとしても、無罪とはいかない。
距離を詰めてくる兵士たちを見て言い逃れ出来ないと悟ったエレナは、
「…何もかもあんたが悪いのよ…あんたさえ現れなければ全て上手くいったはずなのに!」
シズリアに向かって走った。
ディアナを突き飛ばし、その手に小刀を握りしめて。
「シズリア!!」
二階から階段を駆け降りるジークハルト、しかしその距離で間に合うはずはない。
ディルクは咄嗟に妻ディアナに駆け寄っていたため、シズリアから目を離していた。
アイリスを庇う為にエレナへ背を向けたシズリア、その身に衝撃を受け膝をつきうずくまる。
「シズリア!アイリス!無事か!?」
「は、はい…大丈夫です」
階段途中から飛び降りて駆け付けたジークハルトに抱きしめられ、シズリアは早鐘を打つ鼓動を必死に抑えた。
大声で泣くアイリスは無事だ、自分も刺されていない。
どうなったのかと振り向いたシズリアの前に立ち塞がっていたのは、黒尽くめの人物だった。
(…誰??)
頭のてっぺんから足先まで黒い衣装に身を包んだ人物は、男か女かどうかも分からない。
その人物がエレナの凶器を受け止め、全く同じ格好をしたもう一人の人物がエレナを取り押さえている。
「…エレナ・カーチェスを連行せよ」
王の一声で時が止まっていた室内は動きだし、エレナは兵士達に捕らえられた。
「離しなさいよ無礼者!!その女を殺すのよ!!」
「エレナ…お前は超えてはならない一線を越えた」
怒りを込めて睨むジークハルトの視線をものともせず、エレナは必死に叫ぶ。
「ジークハルト様、そんな女より私を見て!何人だって子供を産んであげるわ!」
「ふざけるな!!昔からお前になんて興味なかった…シズリアにこんな真似をして許されると思うなよ!!」
珍しく怒りを露わにするジークハルトの姿に、こんな時だが少しときめくシズリア。
(…そんな事考えてる場合じゃないのに)
命を狙われたのだ、アイリスも居て身軽に動けない状況で。
無事だったから良かったものの、エレナの行動は常軌を逸している。
あまりの出来事にシズリアの思考は明後日の方向へ飛びかけていた。
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