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第58話:狂いゆく花
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王太子の婚礼の日に、まるで花嫁のような白に近い色のドレスを身に纏うエレナ。
その非常識な姿は悪い意味で注目の的となっており、気付いた者達の視線が集まっていく。
しかしそんな視線などまるで気にならないかのような笑みを浮かべたエレナは、真っ直ぐにシズリアの元へと歩いてきた。
「御機嫌よう、シズリア様」
「…御機嫌よう、エレナ様」
満面の笑みを向けてくるエレナは不気味だ、警戒するシズリアに義母ディアナが寄り添う。
「お久しぶりねエレナ様」
「お久しぶりですわディアナお母様」
幼い頃から知っているからなのか、ディアナのことを「お母様」と呼ぶエレナ。
ディアナはさりげなくシズリアを庇おうと前に出るが、エレナはシズリアの腕の中にいるアイリスに視線を向けた。
「まあ可愛らしい、ジークハルト様のお子様!ねえ、近くで見させてくださいな」
許可を得る前に目の前に迫ってきたエレナに驚いたのか、それとも何か感じ取ったのか。
それまで大人しかったアイリスが火がついたように泣き出した。
「ぅううええええん!!」
「ああアイリス、大丈夫よ」
慌ててあやすシズリア、しかしエレナの顔から一瞬笑みが消え鬼のような形相になっていた事を見逃さない。
(怖っ!ていうかそのドレス許されるの?)
親しい友人などならば、100歩譲ってお揃いにしたと言えるかもしれない。
恋敵だったならば確実に嫌がらせだろう。
しかし、今日の主役は王太子とその婚約者であり本日をもって王太子妃となったアレクシアだ。
どう見ても非常識で不敬罪に当たる行為。
完全に頭がおかしいとしか思えない行動と作り笑いは恐怖でしかない。
「もう疲れちゃったかしらね~。ごめんなさいねエレナ様、娘には外の方が良いみたいだわ」
「こんなに人がたくさんいる所に来るのは初めてだものね、外の空気を吸わせてあげましょう」
さりげなく離れようとするシズリアとディアナ。
空気と化しているディルクは、ジークハルトの姿を探して城の広間内を見渡すことしかできていない。
「あらまあ、公爵家の跡取りだというのに社交の場に慣れなくてよろしいのかしら?」
生後半年の赤子に無茶を言うエレナは、少しつまらなさそうな顔をしていたがすぐにまた笑みを浮かべた。
「それにしても、あまりジークハルト様に似てらっしゃらないのね。エミル様には似ているかしら?」
シズリアの要素が薄めのアイリスは、日に日にすっきりとした顔立ちになって益々エミルに似てきている。
逞しさを感じさせるジークハルトよりも、愛らしいエミルを思わせる顔になっていた。
「本当に、エミルが赤ん坊だった頃を思い出すわ。でもジークハルトも赤ちゃんの時はこんな感じだったのよ、よく似ていて懐かしいわ」
ディアナの言葉に、エレナは。
「あら、お母様。でも本当にエミル様に似ているように見えますわ…まるで本当の父親のようではなくて?」
そんな事を言い出した。
その非常識な姿は悪い意味で注目の的となっており、気付いた者達の視線が集まっていく。
しかしそんな視線などまるで気にならないかのような笑みを浮かべたエレナは、真っ直ぐにシズリアの元へと歩いてきた。
「御機嫌よう、シズリア様」
「…御機嫌よう、エレナ様」
満面の笑みを向けてくるエレナは不気味だ、警戒するシズリアに義母ディアナが寄り添う。
「お久しぶりねエレナ様」
「お久しぶりですわディアナお母様」
幼い頃から知っているからなのか、ディアナのことを「お母様」と呼ぶエレナ。
ディアナはさりげなくシズリアを庇おうと前に出るが、エレナはシズリアの腕の中にいるアイリスに視線を向けた。
「まあ可愛らしい、ジークハルト様のお子様!ねえ、近くで見させてくださいな」
許可を得る前に目の前に迫ってきたエレナに驚いたのか、それとも何か感じ取ったのか。
それまで大人しかったアイリスが火がついたように泣き出した。
「ぅううええええん!!」
「ああアイリス、大丈夫よ」
慌ててあやすシズリア、しかしエレナの顔から一瞬笑みが消え鬼のような形相になっていた事を見逃さない。
(怖っ!ていうかそのドレス許されるの?)
親しい友人などならば、100歩譲ってお揃いにしたと言えるかもしれない。
恋敵だったならば確実に嫌がらせだろう。
しかし、今日の主役は王太子とその婚約者であり本日をもって王太子妃となったアレクシアだ。
どう見ても非常識で不敬罪に当たる行為。
完全に頭がおかしいとしか思えない行動と作り笑いは恐怖でしかない。
「もう疲れちゃったかしらね~。ごめんなさいねエレナ様、娘には外の方が良いみたいだわ」
「こんなに人がたくさんいる所に来るのは初めてだものね、外の空気を吸わせてあげましょう」
さりげなく離れようとするシズリアとディアナ。
空気と化しているディルクは、ジークハルトの姿を探して城の広間内を見渡すことしかできていない。
「あらまあ、公爵家の跡取りだというのに社交の場に慣れなくてよろしいのかしら?」
生後半年の赤子に無茶を言うエレナは、少しつまらなさそうな顔をしていたがすぐにまた笑みを浮かべた。
「それにしても、あまりジークハルト様に似てらっしゃらないのね。エミル様には似ているかしら?」
シズリアの要素が薄めのアイリスは、日に日にすっきりとした顔立ちになって益々エミルに似てきている。
逞しさを感じさせるジークハルトよりも、愛らしいエミルを思わせる顔になっていた。
「本当に、エミルが赤ん坊だった頃を思い出すわ。でもジークハルトも赤ちゃんの時はこんな感じだったのよ、よく似ていて懐かしいわ」
ディアナの言葉に、エレナは。
「あら、お母様。でも本当にエミル様に似ているように見えますわ…まるで本当の父親のようではなくて?」
そんな事を言い出した。
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