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第56話:偽りから本物へ
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生まれた娘はアイリスと名付けられ、ランカスター家のアイドルとなった。
シズリアが仮眠をとっている間はジークハルトが見ようと奮闘していたのだが、
「兄上、そんな抱き方では落ち着かないよ」
「ああ、その泣き方は義姉君を探しているんじゃないかな」
「さっきオシメを変えたばかり?それでもすぐに出るものなんだって」
意外なことに、子育てで頼もしさを見せたのはエミル。
「お前、いつの間に子守など学んだのだ」
「同じ研究室に学生結婚して出産した生徒がいるんだ、最近復帰して子連れ登校してる」
タイミングよく赤子を間近で見る機会があり、多少は学ぶことができたらしい。
過去の記憶を引っ張り出しているジークハルトよりも、最新情報を知っているエミルはシズリアの助けになっている。
「父親は俺なのに…」
「落ち込んでる暇があったらオシメ変えてあげてください!」
キリアにも叱られながら頑張る新米父ジークハルト。
平和な日々を過ごすランカスター家に、ディルクとディアナが訪れたのは二ヶ月後。
「お疲れ様シズリア!ああなんて可愛らしいのかしら、本当におめでとう」
「ジークハルトに似ているか?いや、エミルにも似ているな」
どちらかというとシズリアよりもジークハルトに似ているアイリス、その可愛らしい顔立ちはエミルにも良く似ている。
エミルが生まれた頃を思い出し頬を緩ませるディルクとディアナを見て、シズリアもホッとしていた。
(よかった、凄く喜んでくれて。ジークハルト様も可愛がってくれてるし、私も可愛いと思えてる)
夜中頻繁に起きて世話が必要な日々は辛いが、甘えて良いのだと言って使用人達が競い合うように世話を引き受けてくれるおかげで仮眠も取れている。
ジークハルトも我が子の成長を共に見守ろうと毎日情報共有してくれているし、シズリアは安心して過ごせていた。
「ありがとう、シズリア」
両親の喜ぶ姿を見てジークハルトも安心した表情を浮かべる。
「いいえ…私は役目を果たせたでしょうか」
「…ああ、十分過ぎるほどにな」
全ては契約のため。けれど…
「…シズリア」
「はい?」
「本当の家族になってくれ、そう言ったらどうする?」
「え…?」
ここまで頑張ってくれたシズリアを他人とは思えない。
気付けば義務ではなく本心から守りたいと思うようになり、自然と触れたい欲求が生まれていた。
「俺が他の女に惚れたらという話をしたが、俺が惚れたのは…お前のようだ」
「私…私には何もないですよ」
「お前という存在があるではないか。他に何が必要だと?」
真っ直ぐに見つめてくるジークハルト、しかしシズリアは頷けない。
「分からないんです…ジークハルト様は優しいと思うし、アイリスも可愛いです。キリアもいる、エミルも、使用人のみんなも支えてくれているし」
感謝は伝えきれないほどだけれど、それは恋とは言えないから。
「私、本当にこのままここにいていいの…?」
「むしろ出ていくと言われたらどうにかして引き留めるぞ」
「貴方のこと、好きかどうか分からなくても?」
「…もっと努力する」
モテ男だったはずのジークハルト、遅い初恋にしてまさかの片想いスタートである。
シズリアが仮眠をとっている間はジークハルトが見ようと奮闘していたのだが、
「兄上、そんな抱き方では落ち着かないよ」
「ああ、その泣き方は義姉君を探しているんじゃないかな」
「さっきオシメを変えたばかり?それでもすぐに出るものなんだって」
意外なことに、子育てで頼もしさを見せたのはエミル。
「お前、いつの間に子守など学んだのだ」
「同じ研究室に学生結婚して出産した生徒がいるんだ、最近復帰して子連れ登校してる」
タイミングよく赤子を間近で見る機会があり、多少は学ぶことができたらしい。
過去の記憶を引っ張り出しているジークハルトよりも、最新情報を知っているエミルはシズリアの助けになっている。
「父親は俺なのに…」
「落ち込んでる暇があったらオシメ変えてあげてください!」
キリアにも叱られながら頑張る新米父ジークハルト。
平和な日々を過ごすランカスター家に、ディルクとディアナが訪れたのは二ヶ月後。
「お疲れ様シズリア!ああなんて可愛らしいのかしら、本当におめでとう」
「ジークハルトに似ているか?いや、エミルにも似ているな」
どちらかというとシズリアよりもジークハルトに似ているアイリス、その可愛らしい顔立ちはエミルにも良く似ている。
エミルが生まれた頃を思い出し頬を緩ませるディルクとディアナを見て、シズリアもホッとしていた。
(よかった、凄く喜んでくれて。ジークハルト様も可愛がってくれてるし、私も可愛いと思えてる)
夜中頻繁に起きて世話が必要な日々は辛いが、甘えて良いのだと言って使用人達が競い合うように世話を引き受けてくれるおかげで仮眠も取れている。
ジークハルトも我が子の成長を共に見守ろうと毎日情報共有してくれているし、シズリアは安心して過ごせていた。
「ありがとう、シズリア」
両親の喜ぶ姿を見てジークハルトも安心した表情を浮かべる。
「いいえ…私は役目を果たせたでしょうか」
「…ああ、十分過ぎるほどにな」
全ては契約のため。けれど…
「…シズリア」
「はい?」
「本当の家族になってくれ、そう言ったらどうする?」
「え…?」
ここまで頑張ってくれたシズリアを他人とは思えない。
気付けば義務ではなく本心から守りたいと思うようになり、自然と触れたい欲求が生まれていた。
「俺が他の女に惚れたらという話をしたが、俺が惚れたのは…お前のようだ」
「私…私には何もないですよ」
「お前という存在があるではないか。他に何が必要だと?」
真っ直ぐに見つめてくるジークハルト、しかしシズリアは頷けない。
「分からないんです…ジークハルト様は優しいと思うし、アイリスも可愛いです。キリアもいる、エミルも、使用人のみんなも支えてくれているし」
感謝は伝えきれないほどだけれど、それは恋とは言えないから。
「私、本当にこのままここにいていいの…?」
「むしろ出ていくと言われたらどうにかして引き留めるぞ」
「貴方のこと、好きかどうか分からなくても?」
「…もっと努力する」
モテ男だったはずのジークハルト、遅い初恋にしてまさかの片想いスタートである。
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