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第54話:ツェーザルの真実
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その場を警備隊に任せ、家路へと着くジークハルト達。
「一体何があったのですか?」
「…実は、ツェーザルにはスパイを頼んでいたんだ」
シズリアには何も知らせずに終えるつもりだったのだが、こうなって仕方ない。
ジークハルトは事情を話す。
「カーチェス宰相には不正疑惑がある。奴が宰相になってから、罪人の失踪や用途不明資金が増えたんだ…しかし陛下の隠密部隊ですらその証拠を見つけられなかったという」
初めは誰も気付かない程度の変化だった。
優秀な宰相への信頼感と、王妃の妊娠時期と被っていたせいもあり気付くのが遅れた国王。
しかし何年も違和感が続きさすがに異変に気付く。
だがその時には既に宰相の周囲は味方で固められており、不正の証拠が巧妙に隠され見つけられなくなっていた。
気付かれる前に不正の土台を作り、自然な流れに変えてしまっていたのだ。
「せめて身内の証言でもあれば、糸口になるかもしれない。そう思っていた時に起きたのがエレナ事件だ」
取り巻きを陥落させる、その作戦のもう一つの目的は二十年にも渡る不正を暴くこと。
特にシャーリーの親は宰相との付き合いが長かったため、噂程度でも情報がないか探りを入れたのだ。
「支援を打ち切られたことで恨みを感じた親がペラペラ話してくれたらしい。あの女には悪い事をしたとも思うが、役に立ってくれた」
「そんな事が起きていたのですね…ツェーザルが休みを取ることが増えたのは、ジークハルト様のために動いていたからだなんて」
親の愚痴が増えたと言ってシャーリーはツェーザルに悩みを相談していた、それが不正の告発になるとも知らずに。
屋敷に戻り、改めて謝罪するツェーザル。
「危険な目に遭わせてしまい申し訳ございませんでした」
「良いのよ、貴方のせいじゃないわ。複雑な気持ちにはなるけれど、貴方は仕事をしていただけなんでしょう?」
仕事のためなら何でもする、シズリアにはその考えが理解できる。
彼を責める気持ちにはなれなかった。
「奥様…」
「でも。これからは内緒にしないでください、二人とも!」
自分にも無関係ではなかったのだから、事情くらい知りたかったと拗ねてみせるシズリア。
「すまなかった。ちゃんと話をすると言う約束だったのにな」
「そうですよ!」
「奥様に負担をかけたくなかったのですよ、旦那様はお優しいのです」
「それでも、除け者にしないで欲しいわ」
わざと拗ね続けるシズリアに、ジークハルトは笑った。
「全く、敵わないなシズリアには。良い妻を貰ったと思わないか、ツェーザル」
片目を閉じて戯けるジークハルトを見て、ツェーザルも笑う。
「確かに。ジークハルト様に勿体ないくらいだ」
「言う様になったな?」
「俺は元々そんな奴でしょう、知ってるくせに」
突然砕けた口調になったツェーザルにシズリアは驚く。
「こいつは王都の劇団に所属していた俳優なんだ。ちょっと前までは結構な荒れっぷりだったんだぞ」
「想像できないです…」
「俺の演技力、なかなかのもんでしょ?」
ツェーザルは誇らしげだ。
ジークハルトに拾われた当時は、感謝しつつも精神的に不安定だったツェーザル。
なぜ勝手に借金した親に仕送りしてやらなければならないのかと苛立ち、舞台に立てないことへの辛さに苦しみ。
屋敷で働きつつも荒れていく彼に、使用人という役を演じれば良いと提案したのはジークハルトだったのだ。
(今回は少ししくじったけど、俺は恩を返すために生きてるんだ。奥様のことも守らなけりゃな)
次はもっと上手く立ち回ろう。
ツェーザルは心に誓い、後日リノンとミランダとの関係も精算。
泣かれはしたものの、シャーリーの起こした事件を知っていた二人は受け入れたのであった。
「一体何があったのですか?」
「…実は、ツェーザルにはスパイを頼んでいたんだ」
シズリアには何も知らせずに終えるつもりだったのだが、こうなって仕方ない。
ジークハルトは事情を話す。
「カーチェス宰相には不正疑惑がある。奴が宰相になってから、罪人の失踪や用途不明資金が増えたんだ…しかし陛下の隠密部隊ですらその証拠を見つけられなかったという」
初めは誰も気付かない程度の変化だった。
優秀な宰相への信頼感と、王妃の妊娠時期と被っていたせいもあり気付くのが遅れた国王。
しかし何年も違和感が続きさすがに異変に気付く。
だがその時には既に宰相の周囲は味方で固められており、不正の証拠が巧妙に隠され見つけられなくなっていた。
気付かれる前に不正の土台を作り、自然な流れに変えてしまっていたのだ。
「せめて身内の証言でもあれば、糸口になるかもしれない。そう思っていた時に起きたのがエレナ事件だ」
取り巻きを陥落させる、その作戦のもう一つの目的は二十年にも渡る不正を暴くこと。
特にシャーリーの親は宰相との付き合いが長かったため、噂程度でも情報がないか探りを入れたのだ。
「支援を打ち切られたことで恨みを感じた親がペラペラ話してくれたらしい。あの女には悪い事をしたとも思うが、役に立ってくれた」
「そんな事が起きていたのですね…ツェーザルが休みを取ることが増えたのは、ジークハルト様のために動いていたからだなんて」
親の愚痴が増えたと言ってシャーリーはツェーザルに悩みを相談していた、それが不正の告発になるとも知らずに。
屋敷に戻り、改めて謝罪するツェーザル。
「危険な目に遭わせてしまい申し訳ございませんでした」
「良いのよ、貴方のせいじゃないわ。複雑な気持ちにはなるけれど、貴方は仕事をしていただけなんでしょう?」
仕事のためなら何でもする、シズリアにはその考えが理解できる。
彼を責める気持ちにはなれなかった。
「奥様…」
「でも。これからは内緒にしないでください、二人とも!」
自分にも無関係ではなかったのだから、事情くらい知りたかったと拗ねてみせるシズリア。
「すまなかった。ちゃんと話をすると言う約束だったのにな」
「そうですよ!」
「奥様に負担をかけたくなかったのですよ、旦那様はお優しいのです」
「それでも、除け者にしないで欲しいわ」
わざと拗ね続けるシズリアに、ジークハルトは笑った。
「全く、敵わないなシズリアには。良い妻を貰ったと思わないか、ツェーザル」
片目を閉じて戯けるジークハルトを見て、ツェーザルも笑う。
「確かに。ジークハルト様に勿体ないくらいだ」
「言う様になったな?」
「俺は元々そんな奴でしょう、知ってるくせに」
突然砕けた口調になったツェーザルにシズリアは驚く。
「こいつは王都の劇団に所属していた俳優なんだ。ちょっと前までは結構な荒れっぷりだったんだぞ」
「想像できないです…」
「俺の演技力、なかなかのもんでしょ?」
ツェーザルは誇らしげだ。
ジークハルトに拾われた当時は、感謝しつつも精神的に不安定だったツェーザル。
なぜ勝手に借金した親に仕送りしてやらなければならないのかと苛立ち、舞台に立てないことへの辛さに苦しみ。
屋敷で働きつつも荒れていく彼に、使用人という役を演じれば良いと提案したのはジークハルトだったのだ。
(今回は少ししくじったけど、俺は恩を返すために生きてるんだ。奥様のことも守らなけりゃな)
次はもっと上手く立ち回ろう。
ツェーザルは心に誓い、後日リノンとミランダとの関係も精算。
泣かれはしたものの、シャーリーの起こした事件を知っていた二人は受け入れたのであった。
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