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第49話:不思議な魅力

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茶会に参加している夫人達は、シズリアにとって敵寄りの人間の筈だった。

今は止んでいるとはいえ、最近まで嫌がらせしてきた令嬢達の母なのだから警戒するのは当然だ。

しかし王妃の前だからなのか、夫人達はシズリアに対してとても友好的だった。


(揃いも揃ってニコニコしてる…凄く不気味)


時折チラチラと視線を送ってくる夫人もいたが、皆シズリアの体調を気遣ったりマリアンヌに会えたことを喜んだり。

王妃マリアンヌも、久しぶりの茶会だという事を感じさせないほど自然な様子でやり取りしている。

彼女のおっとりとした話し方と柔らかい笑顔は人の心を癒す薬のようで、茶会は和やかに進んだ。


「シズリア・ランカスター、体調は如何いかが?」


暫くして会話が途切れた頃、シズリアはマリアンヌに声をかけられた。


「あ、はい王妃様、大丈夫です」


急に話しかけられ慌てて顔を上げたシズリア、その耳で揺れる耳飾り。

キラリと光る黒曜石に気づいたライネール夫人が顔を輝かせた。


「シズリア夫人、そちらの耳飾り素敵ですわね。貴女の瞳によく似てらっしゃるわ、公爵からの贈り物ですの?」

「あ、ええと…ありがとうございます。とある方からの贈り物ですの」


秘密だ、と国王から言われたため王妃から賜ったとは言えない。

しかし王妃本人の前で嘘をつく事にも迷いがあり、シズリアは返答を濁した。


「あらぁ、夫以外の方からの贈り物ですの?よほど大切な方なのかしら」


明言を避けたシズリアの様子に反応したのは、財務大臣の妻メリンダ。

王妃の茶会に夫以外の人から貰ったものを身に付けてくるとは、とメリンダは言いたいらしい。


「大切な物、なのです」


変な噂を立てられては困る、〝物〟を強調するシズリア。

更に追求しようとメリンダが口を開く前に、マリアンヌが会話に入ってきた。


「ライネール夫人も言っていたけれど、貴女と同じ黒曜石。とても綺麗よね、似合っているわ」

「ありがとうございます、大切な日には必ず身に付けるようにしております」

「守りの石なのよ、貴女が一人の時きっと守ってくれるわ」


王からも御守りだと言われていたが、確かにこれを贈られてから誰かに見守られているような気がしていたのだ。

気持ちの問題だと思っていたが、マリアンヌからも言われると本当に守られているのかも知れないと思える。


(不思議な人…元聖歌隊だったのよね。でも、なんだか聖女様とかそういう人みたいな感じ)


現在この国に聖女はいない。

しかし王妃マリアンヌからは神聖な雰囲気が漂っている。

メリンダもそれ以上は何も言えなくなり、その場は収まった。

国王夫妻の間には王子と王女がおり、初めての子育てが近づいているシズリアにとって大先輩。

不安ではないかと気遣いを見せるマリアンヌが子育ての思い出などを語り、その後は和やかな茶会となり終わった。
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