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第28話:水を差すのは

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本屋での買い物を終えたシズリアは、キリアお勧めの雑貨屋へ。

木彫りの物からガラス細工まで様々な置物が販売されており、シズリアは目を輝かせた。


「素敵!統一した方が綺麗よね、でも迷ってしまうわ」


あれもこれも素敵だとはしゃぐシズリアを見て、キリアは嬉しそうに笑う。


「お気に召したようで嬉しいです、決められないようでしたら自室だけでなく他のお部屋の分も買われては?」

「んー、そんなに買って良いのかしら…お屋敷も元々素敵だし、私が変えてしまうとみんなに悪い気がするわ」


本宅に住み込みで働いている使用人達は、白を基調とした清潔感のあるインテリアで統一してくれている。

派手なものを好まないジークハルトは気に入っている様子だし、下手に弄れば不満を持つかもしれない。


「あら。奥様の好みに合わせるくらいの心の広さが無いようでは公爵など務まりませんわ」


ジークハルトに気をつかうシズリアを見て、キリアが口を尖らせた。

シズリアは小さく笑い、枕元に置く時計を買うことに。

木彫りの時計はリスがどんぐりを拾いにきているデザインで可愛らしい。


「一つでよろしいのですか?」

「今日はこれだけにするわ。でも素敵なお店ね、また時間がある日に来てみたいわ」


心からそう思い微笑むシズリアに、店主も嬉しそうだった。

そろそろ帰ろうかと馬車に戻ると、通路から声が。


「あら、シズリア様」


声がした方を向くと、そこにはエレナがいた。


(うげっ、エレナ嬢!?なんでここに)


予想外の遭遇に顔が強張ってしまったが、シズリアはなんとか笑顔を向ける。


「まあ、エレナ様。ご機嫌よう、街中で会うとは思いませんでしたわ」

わたくしも驚きましたわ。先程ジークハルト様お勧めの本を買う為に本屋へ立ち寄ったのですけれど、シズリア様がいらしていたと伺いまして。お散歩がてらこちらへ来てみましたの」

(わざわざ自分で本を買いに?)


不審な目を向けるわけにいかず、笑顔を保ちながら警戒するシズリア。


「シズリア様はお一人でお買い物ですの?」

「ええ。これから王都での生活になりますから、自分の目で見ておきたいと思いまして」


エレナはふんわりとした笑みで、


「そうですわ、この近くに美味しい紅茶を頂けるお店がありますの。ご一緒にいかがでしょうか?」


シズリアを誘ってきた。


「今から、ですか…」


困惑するシズリアに、エレナは表情を曇らせる。


「あら、お忙しいですか?そうですわよね、わたくしったら…親しくなれたらなんて思ってしまって」


申し訳なさそうにしながらも、被害者オーラを出すエレナ。

ここで断れば、きっと取り巻き達に愚痴をこぼし可哀想な令嬢扱いして貰うのだろう。

そしてシズリアの事は冷たい女だと噂されるに違いない。


「…まだ時間はありますから、ご一緒させていただきますわ」


シズリアは誘いに乗ることにした。
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