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第27話:初めてのお買い物
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引っ越しは無事に終わり、ひとまずディルクとディアナは別宅へ向かった。
一週間後に王城へ行き、正式に公爵の地位をジークハルトが継ぐことになる。
エミルとの同居や初対面の使用人らに気を遣いつつも、シズリアはなんとか過ごせていた。
この世界に来て九ヶ月、ほとんど出歩いていないシズリア。
せっかく貴族街に越して来たのだからということで、初めて城下町での買い物へ出かけることに。
キリアと護衛のベンジャミンと共に、御者ツェーザルが運転する馬車に乗り街へ。
「わー、近くで見るとやっぱり凄いわね、街並みも立派!」
いつもサッと通り過ぎるだけだったので、あまりじっくり見たことがなかった。
キョロキョロし過ぎると田舎者丸出しになってしまうので、馬車の中からコッソリ見るシズリア。
「うふふ、シズリア様ってば書庫に篭ってばかりなんですもの。お買い物も殆どなさらないですし、今日はなんでもお好きなものを買って帰りましょうね」
給料も貯まってきた、この世界で初めての散財をするつもりでシズリアの心は踊っていた。
「でも何を買おうかしら?お洋服もアクセサリーも興味ないし…そもそもジークハルト様が贈ってくださるし。まずは本!と思ったけど、それ以外が浮かばないわ」
趣味、読書。以上!
長年仕事詰めで、贅沢とも遊びとも無縁だったシズリアはお金の使い方が思い浮かばない。
ジークハルトの名を出した事でキリアの目が一瞬鋭くなったが、彼を責めたところでシズリアが庇う事が分かりきっているため何も言わず。
「置物などはいかがでしょうか?シズリア様はお部屋を飾ることもなさらないから物が少ないですし。ま、そんなのジークハルト様に払って貰えばいいと思いますけどね!」
やはり我慢できずに嫌味を含めるキリアに、シズリアは笑うしかない。
契約婚でも子作りが必要だと説明し、なんとか口出しはしない約束をしてくれたけれど。
(契約を気に入らないのは相変わらずね…しょうがないのかな)
自分のことを思って怒ってくれているのだから、シズリアとしてもあまり言いたくない。
「シズリア様、お店に着きましたよ」
目的の本屋に到着したことをツェーザルが告げる。
王都で最も大きな本屋だという建物は、外観もお洒落でシズリアのイメージとは違った。
「本屋さんまで素敵なのね…」
歴史の本などは屋敷にも山ほどあるため、シズリアは流行りものを買ってみることにした。
この世界ではあまり本に絵を使う事はないようで、文字ばかりの本が並んでいる。
その中から、食べ歩き記録や有名だという冒険家の手記、そして最近人気だという恋愛小説などを手に取る。
一緒に見ていたキリアが一冊の本を手に肩を震わせて笑っているのが気になり声を掛けたが、一度読んでからお貸ししますねと言われて隠されてしまった。
(何かしら??)
それはジークハルトとシズリアをモデルにした恋愛小説で、噂話に妄想を加えたシロモノ。
後でそれを読まされたジークハルトが頭を抱える事になるのだが、今それを予想できているのはキリアだけだった。
一週間後に王城へ行き、正式に公爵の地位をジークハルトが継ぐことになる。
エミルとの同居や初対面の使用人らに気を遣いつつも、シズリアはなんとか過ごせていた。
この世界に来て九ヶ月、ほとんど出歩いていないシズリア。
せっかく貴族街に越して来たのだからということで、初めて城下町での買い物へ出かけることに。
キリアと護衛のベンジャミンと共に、御者ツェーザルが運転する馬車に乗り街へ。
「わー、近くで見るとやっぱり凄いわね、街並みも立派!」
いつもサッと通り過ぎるだけだったので、あまりじっくり見たことがなかった。
キョロキョロし過ぎると田舎者丸出しになってしまうので、馬車の中からコッソリ見るシズリア。
「うふふ、シズリア様ってば書庫に篭ってばかりなんですもの。お買い物も殆どなさらないですし、今日はなんでもお好きなものを買って帰りましょうね」
給料も貯まってきた、この世界で初めての散財をするつもりでシズリアの心は踊っていた。
「でも何を買おうかしら?お洋服もアクセサリーも興味ないし…そもそもジークハルト様が贈ってくださるし。まずは本!と思ったけど、それ以外が浮かばないわ」
趣味、読書。以上!
長年仕事詰めで、贅沢とも遊びとも無縁だったシズリアはお金の使い方が思い浮かばない。
ジークハルトの名を出した事でキリアの目が一瞬鋭くなったが、彼を責めたところでシズリアが庇う事が分かりきっているため何も言わず。
「置物などはいかがでしょうか?シズリア様はお部屋を飾ることもなさらないから物が少ないですし。ま、そんなのジークハルト様に払って貰えばいいと思いますけどね!」
やはり我慢できずに嫌味を含めるキリアに、シズリアは笑うしかない。
契約婚でも子作りが必要だと説明し、なんとか口出しはしない約束をしてくれたけれど。
(契約を気に入らないのは相変わらずね…しょうがないのかな)
自分のことを思って怒ってくれているのだから、シズリアとしてもあまり言いたくない。
「シズリア様、お店に着きましたよ」
目的の本屋に到着したことをツェーザルが告げる。
王都で最も大きな本屋だという建物は、外観もお洒落でシズリアのイメージとは違った。
「本屋さんまで素敵なのね…」
歴史の本などは屋敷にも山ほどあるため、シズリアは流行りものを買ってみることにした。
この世界ではあまり本に絵を使う事はないようで、文字ばかりの本が並んでいる。
その中から、食べ歩き記録や有名だという冒険家の手記、そして最近人気だという恋愛小説などを手に取る。
一緒に見ていたキリアが一冊の本を手に肩を震わせて笑っているのが気になり声を掛けたが、一度読んでからお貸ししますねと言われて隠されてしまった。
(何かしら??)
それはジークハルトとシズリアをモデルにした恋愛小説で、噂話に妄想を加えたシロモノ。
後でそれを読まされたジークハルトが頭を抱える事になるのだが、今それを予想できているのはキリアだけだった。
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