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第26話:反省する父

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エレナが出て行ったのを確認し、ディアナは大きく息を吐いた。

そして奥の部屋を振り返り、そこにいた人物に声を掛ける。


「もう出てきてよろしいですわよ、ディルク様」


現れたのはこの家の主人である公爵ディルク。

しゅん。と落ち込んだ様子の父を見て、ジークハルトは事情を察した。


「なるほど…父上が家に入れてしまったのですね」

「そうよ。朝早く、しかも引っ越し当日に押しかけて来たあの非常識娘が門番と揉めているのを見て、この人が家にあげてしまったの。全く…仕事中の威厳は何処へ行ってしまったのかしら」

「すまない…カーティス宰相とは昔よく酒を飲んだ中だし、つい…」

「カーティス宰相は結婚式の晩も私をなかなか解放せず帰宅を遅らせたのですよ、親子揃って非常識なのでは?」


ぐうの音も出ないディルクは、項垂れるばかり。

シズリアは気の毒に思い、義父の肩を持つ。


「仕方ありませんわよ、お義父様はお優しい方ですから。わざわざ訪ねてくださったエレナ様を追い返すなんて、できなかったのですわ」


パァっと顔を輝かせたディルクに肘鉄を喰らわせるディアナ、その表情は呆れ返っている。


「ああ優しいシズリア、本当に良い娘を持てて嬉しいわ。この人の頭はお花畑なの、放っておいて良いのよ」


仲良し夫婦だと思っていたのに、なかなかに辛辣なディアナの発言にシズリアは驚いた。


「さ、非常識娘の事は忘れてお茶に致しましょう。たくさんお話をして、お昼になったらご飯を食べて。家族の時間を大切にしたいわ」


四人は茶室へ向かう。


「エレナ嬢が持ってきたお茶なんて、シズリアが飲む事はありませんからね」


にっこりと笑顔で言うディアナをちょっと怖いと思いつつ、シズリアは笑みを浮かべる。


「お気遣いありがとうございます、お義母様」


契約婚という後ろめたさから罪悪感はあるが、親を亡くしているシズリアにとって母のぬくもりは嬉しいものだ。

実母はごく普通の主婦だったけれど、ディアナと重ねて懐かしく感じるシズリア。

少し潤んでしまった目を見て、ディアナが眉を寄せる。


「シズリア…大丈夫よ、私は貴女の味方ですからね。虐められたらすぐに教えて頂戴、ただでは済まさないわ」


これでも昔はやんちゃしたのよ、と続くディアナの言葉に、ディルクが震えたように見えたのは気のせいか。

するとそこへ弟のエミルが帰ってきた。

今日は午前だけ学校があり、留守にしていたのだ。


「ただいま!お久しぶりです、義姉君」

「お帰りなさい、お久しぶりですわエミル様」

「エミルと呼び捨てにしてください、兄弟になったのですから」

「ありがとうございます、本日からよろしくお願い致しますね」


その後、エレナ騒動を聞いたエミルにまで叱られ、ディルクは昼食時になっても小さくなっていた。
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