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第24話:ジークハルト目線〜初夜とその後〜
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ついに式当日を迎え、出会った頃とは見違えるほど美しくなったシズリアに驚かされた。
「馬子にも衣装…って通じますかね」
知らない言葉だったため意味を聞いたら、どんな人間でも身なりを整えればマシに見えるという一種の悪口だという。
「そんなことはない、お前は綺麗だよ。よく似合っている」
本心でそう言ったのだが、お世辞だと思ったらしく軽く流されてしまった。
今夜は共に過ごすのだ、そう考えると落ち着かなくなってくる。
なるべく考えないように過ごし、気づけば夜になっていた。
帰ろうとしたら、まだ話がしたいと伯爵に声をかけられ。
疲れている様子のシズリアを先に帰らせたら、カーチェス宰相にも捕まった。
娘が失恋したと泣いていたとかグダグダ言ってきて煩かったな…
ようやく帰宅し急いで湯浴みしシズリアの部屋に行くと、彼女はまだ起きて待っていてくれた。
本当に男を知らぬ身だったようで、少し触れただけでも震える姿を見て心苦しかったが。
痛みを堪えて受け入れるシズリアを可愛いと思ってしまった。
契約だと割り切っている様子だが、辛くないはずはない。
そう思って朝になってから顔を見に行こうとしたら、休みを取らせたはずのキリアが居て怒鳴られた。
「どういうことですか!まさかシズリア様と…」
一夜を共にしたことを怒っているらしい。
「どうもこうも、夫婦になったのだから手を出して何が悪い」
「何が悪い、ですって?好きになったという事?」
「…契約の内だ」
契約婚だと知っているから驚いたのだろうが、何故キリアが怒るのかが分からない。
「最低!!見損ないました!!」
平手打ちしようと振り上げてきた手を咄嗟に掴む。
言い合っているとシズリアが起きてきてしまった、顔を合わせるのが気まずくなり俺は逃げるようにその場を後にした。
あの日からキリアはずっと怒っていて、指示を出せば従うが全く口を聞かない。
頑固な女だからな…それに、最低な男だという自覚はある。
断れない状況のシズリアに契約を持ちかけて縛り付けているのだから。
義務で子作りするなんていうのも間違いなのだろう…分かっている。
分かっているんだ…俺は自分がこれ以上面倒になりたくなくて逃げ道を作っただけ。
結婚すれば女除けになると思ったし、子供ができれば両親も安心するだろう。
俺はただ、楽になりたかったんだ。
そのためにシズリアを利用している、それだけだ…
彼女が笑顔の下で俺をどう思っているのか。
俺は知らない---
「馬子にも衣装…って通じますかね」
知らない言葉だったため意味を聞いたら、どんな人間でも身なりを整えればマシに見えるという一種の悪口だという。
「そんなことはない、お前は綺麗だよ。よく似合っている」
本心でそう言ったのだが、お世辞だと思ったらしく軽く流されてしまった。
今夜は共に過ごすのだ、そう考えると落ち着かなくなってくる。
なるべく考えないように過ごし、気づけば夜になっていた。
帰ろうとしたら、まだ話がしたいと伯爵に声をかけられ。
疲れている様子のシズリアを先に帰らせたら、カーチェス宰相にも捕まった。
娘が失恋したと泣いていたとかグダグダ言ってきて煩かったな…
ようやく帰宅し急いで湯浴みしシズリアの部屋に行くと、彼女はまだ起きて待っていてくれた。
本当に男を知らぬ身だったようで、少し触れただけでも震える姿を見て心苦しかったが。
痛みを堪えて受け入れるシズリアを可愛いと思ってしまった。
契約だと割り切っている様子だが、辛くないはずはない。
そう思って朝になってから顔を見に行こうとしたら、休みを取らせたはずのキリアが居て怒鳴られた。
「どういうことですか!まさかシズリア様と…」
一夜を共にしたことを怒っているらしい。
「どうもこうも、夫婦になったのだから手を出して何が悪い」
「何が悪い、ですって?好きになったという事?」
「…契約の内だ」
契約婚だと知っているから驚いたのだろうが、何故キリアが怒るのかが分からない。
「最低!!見損ないました!!」
平手打ちしようと振り上げてきた手を咄嗟に掴む。
言い合っているとシズリアが起きてきてしまった、顔を合わせるのが気まずくなり俺は逃げるようにその場を後にした。
あの日からキリアはずっと怒っていて、指示を出せば従うが全く口を聞かない。
頑固な女だからな…それに、最低な男だという自覚はある。
断れない状況のシズリアに契約を持ちかけて縛り付けているのだから。
義務で子作りするなんていうのも間違いなのだろう…分かっている。
分かっているんだ…俺は自分がこれ以上面倒になりたくなくて逃げ道を作っただけ。
結婚すれば女除けになると思ったし、子供ができれば両親も安心するだろう。
俺はただ、楽になりたかったんだ。
そのためにシズリアを利用している、それだけだ…
彼女が笑顔の下で俺をどう思っているのか。
俺は知らない---
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