上 下
22 / 83

第22話:引っ越し準備やお勉強

しおりを挟む
ジークハルトの父ディルクが引退するというのは本気だったらしく、二ヶ月後には別宅に移り済むから入れ替わってくれという連絡が来た。

弟エミルは卒業するまで本宅で同居。

ジークハルトとシズリアの間に子供ができてから両親は旅行に行くつもりらしい。


「全く、こんなに早く公爵を継ぐつもりなどなかったのに」


仕事の引き継ぎなど仕事が忙しくなり、ジークハルトは不機嫌だ。

屋敷内も、結婚式を挙げたばかりだというのに引越しの準備をすることになったためバタバタしている。

シズリアは公爵夫人となる前に、更なる知識を頭に叩き込むため書庫に篭っていた。


「みんな忙しいでしょう、私の事は気にしなくて良いからね。水とパンでも置いておいてくれたら勝手に食べるから」

「そんなわけにいきません!お食事の時間までに地下室を片付けてきますから、お勉強も程々になさってくださいね!」


キリアに度々叱られつつも書物に目を通すシズリア。

王家に関する歴史書の中に、気になる部分を見つけた。


(第27代王妃アヤカ・ルーンは旅の踊り子で、黒い髪と瞳を持っていた…え、この大陸で珍しいのよね?)


三代前の王妃だというその人は、シズリアと同じ日本人に近い容姿だったのだろうか。

他の王族の姿絵は保管されているのに、アヤカという人物のものだけが無いことも気になる。


(まさか異世界人…なんてあるわけないか。そんな簡単にファンタジーな事起きないよね)


気にはなったが、その人物はすでに亡くなっている。

ひ孫に当たる現国王なら知っているかもしれないが、確かめようが無い。


(早くに退位し隠居生活を送った、か…人目を避けてるって勘繰りすぎかしら)


王族貴族に黒髪はいない、さぞ目立っただろう…現国王もその血が流れているとは思えないほどはっきりとした金髪だ。


(んー、気になり出すとモヤモヤする!確かめられないから余計に!)


しばらく悶々としたが、他の書物を調べてもそれ以外の情報は見つけられず。

諦めたシズリアは読み終わった本から順に箱詰めしていき、本宅と別宅の荷物は少しずつ入れ替わっていった。

現在働いている使用人は全員連れて行く予定で、両親は必要な人数だけ連れて移り住むことになる。

引っ越しが完了すれば会ったことのない本宅の使用人が混ざることになるため、シズリアの過去や契約がバレないように気を引き締めなければいけなくなる。

シズリアは改めて教会の知識やこの世界について学び直す。

かつてこの世界には、スキルと呼ばれる能力があり人々は神託を受け職業を決めていた。

しかし徐々に神グラシアからの神託が下りなくなり、スキルを持たずに生まれる者が増えていき、いまでは失われてしまったらしい。


(ふむふむ、大昔はもっとファンタジーな感じでゲームっぽい要素があったのね)


魔物も長年現れていなかったのだが、数十年前から復活し被害が出ている。


(幸いにも大型の魔物は出現しておらず、警備隊や騎士団で対応中っと)


好んで討伐に向かうジークハルトは変わり者扱いされているのだが、本人は人間相手より本気を出せて楽しんでいた。


(神が死んだ説もあるけど神殿は認めていない、か)


当然といえば当然だろう、しかし誰も神に会えないため確かめようがない。

世界は神が造ったとされており、世界が滅んでいないのだから神は生きている、というのが神殿側の主張だ。

ややこしい歴史を頭に詰め込んでいくシズリアであった。

---------------------

※色々と解説をぶち込んですみません。
他の作品と同じ世界ということにしてしまった都合上、矛盾が出てしまうので。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

愛を知らない「頭巾被り」の令嬢は最強の騎士、「氷の辺境伯」に溺愛される

守次 奏
恋愛
「わたしは、このお方に出会えて、初めてこの世に産まれることができた」  貴族の間では忌み子の象徴である赤銅色の髪を持って生まれてきた少女、リリアーヌは常に家族から、妹であるマリアンヌからすらも蔑まれ、その髪を隠すように頭巾を被って生きてきた。  そんなリリアーヌは十五歳を迎えた折に、辺境領を収める「氷の辺境伯」「血まみれ辺境伯」の二つ名で呼ばれる、スターク・フォン・ピースレイヤーの元に嫁がされてしまう。  厄介払いのような結婚だったが、それは幸せという言葉を知らない、「頭巾被り」のリリアーヌの運命を変える、そして世界の運命をも揺るがしていく出会いの始まりに過ぎなかった。  これは、一人の少女が生まれた意味を探すために駆け抜けた日々の記録であり、とある幸せな夫婦の物語である。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」様にも短編という形で掲載しています。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

処理中です...