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第19話:初夜
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宰相が参加し国王からの祝辞も届き、盛大に行われた二人の結婚式は無事に終わった。
深夜まで来客への挨拶が続き、軽く酒も振る舞われてヘトヘトのシズリア。
しかし結婚初日は二人で過ごした方がいいと言われ、疲労が色濃く出ている体に鞭打って身を清める。
そして侍女らに香油を塗り込まれ、うつらうつらしながら寝室で待っているとジークハルトが入ってきた。
「…まだ起きていたか」
「はい、あと少しで立ったまま寝そうでしたけど」
「遅くなってすまなかったな、カーチェス宰相に捕まってしまった」
娘エレナから色々と聞いているらしく、宰相は式の後だというのにジークハルトをなかなか解放しなかったらしい。
「全員下がってくれ、今日はもう休んでいい」
侍女らを下がらせるジークハルト。
キリアは何か言いたげに振り向いたが、言葉を飲み込み出て行った。
ジークハルトはかなり疲れた顔をしながらも小さく笑い、寝台に腰掛けシズリアを手招く。
「…あの、その」
するのだろうか。
目で問うシズリアに、ジークハルトは深くため息をついた。
「俺も疲れているから今すぐにでも寝たいが、両親からは急かされているからな。嫌なら後日改めてもいいが」
「いえ…契約ですので構いません」
契約には子作りのための夫婦生活も含まれている、事務的な行為は覚悟の上。
シズリアはジークハルトの隣に腰を下ろす。
「…すまないな」
ジークハルトは小声で謝り、シズリアの服に手を滑り込ませていく。
シズリアは男性経験が全く無い。
学生時代は少女漫画のような展開を夢見た事もあるが、異世界に飛ばされたと気づいた時、全てを捨てる覚悟をしたのだ。
業務の一つとして割り切って受け入れるつもりだったが、それでも男の手の感触に体が強張ってしまう。
「っ…!」
「…怖いか」
優しい声色にシズリアが目を開けると、いつのまにか服を脱いでいたジークハルトの姿が目に入った。
「あ、あの、緊張してしまって…すみません気にしないでください」
普段剣を握るジークハルトの手は皮が厚くなっていてごわついている。
しかしシズリアに触れるその手はとても優しくて。
恋人ではないから甘い愛の言葉などは無かったし、口付けもないけれど。
最悪の場合乱暴に扱われることすら覚悟していたシズリアは、初めての行為が思いやりのあるものでホッと息を吐く。
痛みを堪え無意識に流れた涙を拭うジークハルトの手の感触に安心し、シズリアは意識を手放したのであった。
「すまない…ありがとう、シズリア」
ジークハルトの囁きは、すでに眠りに落ちたシズリアに届かない---そして朝を迎える。
深夜まで来客への挨拶が続き、軽く酒も振る舞われてヘトヘトのシズリア。
しかし結婚初日は二人で過ごした方がいいと言われ、疲労が色濃く出ている体に鞭打って身を清める。
そして侍女らに香油を塗り込まれ、うつらうつらしながら寝室で待っているとジークハルトが入ってきた。
「…まだ起きていたか」
「はい、あと少しで立ったまま寝そうでしたけど」
「遅くなってすまなかったな、カーチェス宰相に捕まってしまった」
娘エレナから色々と聞いているらしく、宰相は式の後だというのにジークハルトをなかなか解放しなかったらしい。
「全員下がってくれ、今日はもう休んでいい」
侍女らを下がらせるジークハルト。
キリアは何か言いたげに振り向いたが、言葉を飲み込み出て行った。
ジークハルトはかなり疲れた顔をしながらも小さく笑い、寝台に腰掛けシズリアを手招く。
「…あの、その」
するのだろうか。
目で問うシズリアに、ジークハルトは深くため息をついた。
「俺も疲れているから今すぐにでも寝たいが、両親からは急かされているからな。嫌なら後日改めてもいいが」
「いえ…契約ですので構いません」
契約には子作りのための夫婦生活も含まれている、事務的な行為は覚悟の上。
シズリアはジークハルトの隣に腰を下ろす。
「…すまないな」
ジークハルトは小声で謝り、シズリアの服に手を滑り込ませていく。
シズリアは男性経験が全く無い。
学生時代は少女漫画のような展開を夢見た事もあるが、異世界に飛ばされたと気づいた時、全てを捨てる覚悟をしたのだ。
業務の一つとして割り切って受け入れるつもりだったが、それでも男の手の感触に体が強張ってしまう。
「っ…!」
「…怖いか」
優しい声色にシズリアが目を開けると、いつのまにか服を脱いでいたジークハルトの姿が目に入った。
「あ、あの、緊張してしまって…すみません気にしないでください」
普段剣を握るジークハルトの手は皮が厚くなっていてごわついている。
しかしシズリアに触れるその手はとても優しくて。
恋人ではないから甘い愛の言葉などは無かったし、口付けもないけれど。
最悪の場合乱暴に扱われることすら覚悟していたシズリアは、初めての行為が思いやりのあるものでホッと息を吐く。
痛みを堪え無意識に流れた涙を拭うジークハルトの手の感触に安心し、シズリアは意識を手放したのであった。
「すまない…ありがとう、シズリア」
ジークハルトの囁きは、すでに眠りに落ちたシズリアに届かない---そして朝を迎える。
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