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第17話:どっちが悪者?
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ジークハルトへの秘めたる思いを明かすエレナ。
「幼い頃から憧れておりましたわ。ずっとお父様の影に隠れて見ていることしか出来ませんでしたけれど…」
「それは…気づかなかったな」
本当はその視線に気づいていたけれど、応じるつもりがなかったため無視していたのだが。
「想いを伝える勇気が無かったんですもの、気づいていただけなくて当然ですわ」
「ならなぜ、今そのような話を?」
「今なら…振られる事が確実ですから」
涙を浮かべるエレナの姿は、健気な少女そのもの。
他の令嬢達も涙を浮かべてエレナを労っている。
(…そりゃあ、この人達からしたら悪者は私よね。突然現れてみんなの憧れの人を射止めたことになるんだから)
シズリアは複雑な気持ちになり言葉を失ってしまった。
ここにいる令嬢達は皆エレナの味方なのだろう、非難の目がシズリアに突き刺さる。
(俯いちゃ駄目、でも真っ直ぐ見るのもおかしい気がする…どうするのが正しいのかな)
婚約者として正しい対応が分からない。
指示を仰ごうとジークハルトを見上げると、彼は無表情でエレナを見ていた。
しかしシズリアの視線に気づき、手を重ねて薄く微笑む。
「どうやら直接の報告はしないほうが良かったようだな、早めに帰ったほうが良さそうだ」
シズリアの手を握ったままジークハルトが言うと、エレナは目を見開いた。
「そんな、いらしたばかりなのに…私の事はどうぞお気になさらず、ゆっくりしていってください」
「そうもいくまい。たとえ過去の事でも、わざわざ辛い想いをする必要もないだろう」
エレナは過去の思いとは言っていない、それをわかっていてジークハルトは過去と言ったのだ。
そしてシズリアに立ち上がるよう促し、上着を羽織る。
「お待ちくださいジークハルト様、私は…」
「まだ何か?」
追い縋るエレナに冷たい目を向けるジークハルト。
その手はシズリアを離していない。
「…いえ、余計なお話をしてしまい申し訳ございませんでした、またいらしてくださいませ」
悲しげに目を伏せるエレナに背を向け、ジークハルトとシズリアはその場を後にした。
チラリと振り返ると、令嬢達に慰められ泣いているエレナ…その目はシズリアを睨んでいる。
(うーん、余計に敵視されちゃったみたい)
諦めさせるどころか火に油を注いでしまったようだ。
帰りの馬車の中で、シズリアはジークハルトに不安を告げる。
「大丈夫だったのでしょうか、余計に怒らせてしまったようです」
「…面倒臭い女だ。今更想いを告げる健気な女、悲恋の乙女気取りか。鬱陶しい」
ジークハルトは心配はしていないようで辛辣だ。
「今後も接触してくるだろうな、何かあればすぐに報告しろ。万が一に備えて護衛も増やす」
「はい…」
彼女らの目を思い出し、珍しくシズリアは落ち込んでいた。
元気がない様子のシズリア、その顔をジークハルトが覗き込む。
「どうした、不安か」
「…なんだか私の方が悪者みたいで。騙してるし、いきなり現れた得体の知れない女に取られたって思ったら、そりゃあ面白くないだろうなって」
きっとエレナは何度もアピールしていたはずだ、それをジークハルトは無視し続けた。
そこへ突然やってきた見知らぬ女と婚約だなんて、納得できないだろう。
だがジークハルトからすれば、そういう女から逃げる為にシズリアを雇ったのだ。
「お前は役目を果たす事だけ考えろ。安全を含めて生活は保証する、それと引き換えに俺の女を演じる約束のはずだ」
それが契約。
シズリアは頷くしかなかった。
「幼い頃から憧れておりましたわ。ずっとお父様の影に隠れて見ていることしか出来ませんでしたけれど…」
「それは…気づかなかったな」
本当はその視線に気づいていたけれど、応じるつもりがなかったため無視していたのだが。
「想いを伝える勇気が無かったんですもの、気づいていただけなくて当然ですわ」
「ならなぜ、今そのような話を?」
「今なら…振られる事が確実ですから」
涙を浮かべるエレナの姿は、健気な少女そのもの。
他の令嬢達も涙を浮かべてエレナを労っている。
(…そりゃあ、この人達からしたら悪者は私よね。突然現れてみんなの憧れの人を射止めたことになるんだから)
シズリアは複雑な気持ちになり言葉を失ってしまった。
ここにいる令嬢達は皆エレナの味方なのだろう、非難の目がシズリアに突き刺さる。
(俯いちゃ駄目、でも真っ直ぐ見るのもおかしい気がする…どうするのが正しいのかな)
婚約者として正しい対応が分からない。
指示を仰ごうとジークハルトを見上げると、彼は無表情でエレナを見ていた。
しかしシズリアの視線に気づき、手を重ねて薄く微笑む。
「どうやら直接の報告はしないほうが良かったようだな、早めに帰ったほうが良さそうだ」
シズリアの手を握ったままジークハルトが言うと、エレナは目を見開いた。
「そんな、いらしたばかりなのに…私の事はどうぞお気になさらず、ゆっくりしていってください」
「そうもいくまい。たとえ過去の事でも、わざわざ辛い想いをする必要もないだろう」
エレナは過去の思いとは言っていない、それをわかっていてジークハルトは過去と言ったのだ。
そしてシズリアに立ち上がるよう促し、上着を羽織る。
「お待ちくださいジークハルト様、私は…」
「まだ何か?」
追い縋るエレナに冷たい目を向けるジークハルト。
その手はシズリアを離していない。
「…いえ、余計なお話をしてしまい申し訳ございませんでした、またいらしてくださいませ」
悲しげに目を伏せるエレナに背を向け、ジークハルトとシズリアはその場を後にした。
チラリと振り返ると、令嬢達に慰められ泣いているエレナ…その目はシズリアを睨んでいる。
(うーん、余計に敵視されちゃったみたい)
諦めさせるどころか火に油を注いでしまったようだ。
帰りの馬車の中で、シズリアはジークハルトに不安を告げる。
「大丈夫だったのでしょうか、余計に怒らせてしまったようです」
「…面倒臭い女だ。今更想いを告げる健気な女、悲恋の乙女気取りか。鬱陶しい」
ジークハルトは心配はしていないようで辛辣だ。
「今後も接触してくるだろうな、何かあればすぐに報告しろ。万が一に備えて護衛も増やす」
「はい…」
彼女らの目を思い出し、珍しくシズリアは落ち込んでいた。
元気がない様子のシズリア、その顔をジークハルトが覗き込む。
「どうした、不安か」
「…なんだか私の方が悪者みたいで。騙してるし、いきなり現れた得体の知れない女に取られたって思ったら、そりゃあ面白くないだろうなって」
きっとエレナは何度もアピールしていたはずだ、それをジークハルトは無視し続けた。
そこへ突然やってきた見知らぬ女と婚約だなんて、納得できないだろう。
だがジークハルトからすれば、そういう女から逃げる為にシズリアを雇ったのだ。
「お前は役目を果たす事だけ考えろ。安全を含めて生活は保証する、それと引き換えに俺の女を演じる約束のはずだ」
それが契約。
シズリアは頷くしかなかった。
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