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第4話:顔合わせ
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ジークハルトの両親への顔合わせ当日。
下品にならないように着飾ったシズリアは、緊張の面持ちで馬車に揺られていた。
普段ジークハルトは別宅で暮らしており、両親は王都の貴族街で暮らしているらしい。
「緊張しているのか」
「当然です、彼氏とかいたことないんですよ!」
亡き両親にはボーイフレンドの一人すら紹介できなかったのだから、相手の親に会うなど人生初体験だ。
「生娘であることは間違いなさそうだな」
突然生々しい単語を口にされ、シズリアは赤面する。
「ちょっ、今そういうこと言わないでくださいよ!気が散るじゃないですか!」
シズリアに怒られ、ジークハルトは肩を掠めた。
そして二人を乗せた馬車は王都に入り、貴族街へ。
「着いたな」
馬車のドアが開き、先にジークハルトが降りる。
その手を借りて降りたシズリアは、別宅よりもさらに立派な屋敷を見上げて息を飲んだ。
(うわー、すっご!)
お口あんぐり、とはならないように引き締めていたが、変な顔になってしまっている。
ジークハルトは肩を震わせて笑いを堪え、シズリアをエスコートした。
「おかえりなさいませ、ジークハルト様」
ズラリと並んだ使用人達に出迎えられ屋敷へ足を踏み入れると、きっちりとネクタイを結んだ男性が歩み出る。
「おかえりなさいませ坊ちゃま、旦那様と奥様がお待ちです」
「ああ、久しぶりだなセバスチャン」
セバスチャンが先導する形で階段を登り、案内された部屋へ。
「ジークハルト!よく帰ったな、ああ彼女がシズリア嬢か、よく来たね!」
出迎えてくれたのは、少し白髪混じりの金髪碧眼で体格の良い男性。
写真を見せてもらっていたためこの人が父であると知っていたシズリア、スカートの裾を摘んで優雅に礼をする。
「お初にお目にかかります、ディルク・ランカスター公爵」
「硬くならずに、さあ座りなさいな。お顔をよく見せて頂戴」
笑顔で迎えてくれた女性、彼女は母親のディアナ。
そしてもう一人。
「初めまして、僕はエミルです!」
ジークハルトの弟、エミル16歳。
年が離れていて可愛がってきたと聞いている。
どうやら家族達は、ジークハルトがようやく身を固める気になった!と歓迎ムードのようだ。
三人とも笑顔で迎えてくれた。
「いやはや、ついにジークハルトが女性を連れてくるとはな!」
「本当に、頑固な子だから上手く付き合えないんじゃないかと心配していたのよ」
貴族社会では子供のうちに婚約が内定することがほとんどで、28にもなって全くそんな話がなかったジークハルトは問題ありなのではないかと心配されていたらしい。
「自由を許してやりたい親心と、このままでは悪い噂が立つのではないかという不安。寿命が縮むかと思ったぞ」
そう話す両親は心から喜んでいる様子で、シズリアは少々心が痛んだ。
(ごめんなさい、愛し合っているなんて大嘘です…)
顔に出すことは許されない契約婚、シズリアは鍛え抜いた営業スマイルを貼り付ける。
「シズリア・ルペスと申します。このように歓迎していただけてとても嬉しいです、至らぬ身でございますが、どうぞよろしくお願いいたします」
用意していたセリフをスラスラ言い終えたシズリアがジークハルトを見上げると、満足げにニヤリと笑っていた。
下品にならないように着飾ったシズリアは、緊張の面持ちで馬車に揺られていた。
普段ジークハルトは別宅で暮らしており、両親は王都の貴族街で暮らしているらしい。
「緊張しているのか」
「当然です、彼氏とかいたことないんですよ!」
亡き両親にはボーイフレンドの一人すら紹介できなかったのだから、相手の親に会うなど人生初体験だ。
「生娘であることは間違いなさそうだな」
突然生々しい単語を口にされ、シズリアは赤面する。
「ちょっ、今そういうこと言わないでくださいよ!気が散るじゃないですか!」
シズリアに怒られ、ジークハルトは肩を掠めた。
そして二人を乗せた馬車は王都に入り、貴族街へ。
「着いたな」
馬車のドアが開き、先にジークハルトが降りる。
その手を借りて降りたシズリアは、別宅よりもさらに立派な屋敷を見上げて息を飲んだ。
(うわー、すっご!)
お口あんぐり、とはならないように引き締めていたが、変な顔になってしまっている。
ジークハルトは肩を震わせて笑いを堪え、シズリアをエスコートした。
「おかえりなさいませ、ジークハルト様」
ズラリと並んだ使用人達に出迎えられ屋敷へ足を踏み入れると、きっちりとネクタイを結んだ男性が歩み出る。
「おかえりなさいませ坊ちゃま、旦那様と奥様がお待ちです」
「ああ、久しぶりだなセバスチャン」
セバスチャンが先導する形で階段を登り、案内された部屋へ。
「ジークハルト!よく帰ったな、ああ彼女がシズリア嬢か、よく来たね!」
出迎えてくれたのは、少し白髪混じりの金髪碧眼で体格の良い男性。
写真を見せてもらっていたためこの人が父であると知っていたシズリア、スカートの裾を摘んで優雅に礼をする。
「お初にお目にかかります、ディルク・ランカスター公爵」
「硬くならずに、さあ座りなさいな。お顔をよく見せて頂戴」
笑顔で迎えてくれた女性、彼女は母親のディアナ。
そしてもう一人。
「初めまして、僕はエミルです!」
ジークハルトの弟、エミル16歳。
年が離れていて可愛がってきたと聞いている。
どうやら家族達は、ジークハルトがようやく身を固める気になった!と歓迎ムードのようだ。
三人とも笑顔で迎えてくれた。
「いやはや、ついにジークハルトが女性を連れてくるとはな!」
「本当に、頑固な子だから上手く付き合えないんじゃないかと心配していたのよ」
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「自由を許してやりたい親心と、このままでは悪い噂が立つのではないかという不安。寿命が縮むかと思ったぞ」
そう話す両親は心から喜んでいる様子で、シズリアは少々心が痛んだ。
(ごめんなさい、愛し合っているなんて大嘘です…)
顔に出すことは許されない契約婚、シズリアは鍛え抜いた営業スマイルを貼り付ける。
「シズリア・ルペスと申します。このように歓迎していただけてとても嬉しいです、至らぬ身でございますが、どうぞよろしくお願いいたします」
用意していたセリフをスラスラ言い終えたシズリアがジークハルトを見上げると、満足げにニヤリと笑っていた。
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