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第一話
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彼の名は、久住翔。
神園学園高等部の進学科に通う一年生。
この町一番の大病院の院長を父に持ち、母も評判の良い精神科医。
成績優秀で将来有望、ルックスまで良い彼に熱視線を送る女子生徒多数。
しかし、声をかける勇者はいない…なぜなら。
「お待たせ、姫華」
放課後の校門。
下校していく生徒たちの視線を集めていた女子生徒へ手を振る翔。
振り向いた彼女の名は、神姫華。
翔の幼馴染であり、恋人だ。
「お疲れ様、翔」
「少し先生と話していたら遅くなってしまったよ、ごめん」
「構いませんわ」
腰まである髪をゆるく巻いて一つに結んでいる姫華もまた、男子生徒たち憧れの存在である美少女。
二人はお似合いの美男美女カップルなのだ。
「そうだ、今日は寄りたいところがありますの。ご一緒してくださる?」
「もちろんいいよ。じゃあ迎の車は無しかな?」
「ええ。歩いて帰ると伝えてありますわ」
大病院の跡取り息子である翔。
その恋人である姫華は、大手芸能プロダクション社長を父に持つお嬢様。
遠出した時に誘拐されたこともあるため、常に護衛のための監視がついている。
(…今日の護衛は佐々木さんチームか。いつもお疲れ様だな)
遠巻きに監視している人物達へチラリと視線を送る翔。
よく知られているこの街中で彼女に手を出すような命知らずは居ないはずだが、姫華の母親が心配して護衛を雇っているのだ。
「あまり遅くなると心配をかけてしまうね。行こうか」
「ええ」
二人はそっと手を繋ぎ、歩き出した。
「行きたいところってどこかな」
歩きながら尋ねる翔に、姫華はにこやかに答える。
「新しくできた、読書喫茶ですの」
「読書喫茶?」
「ええ、たくさんの本が読み放題の喫茶店ですって」
話しながら辿り着いたのは、一見するとごく普通の喫茶店。
しかし二階建てとなっており、大きめの店舗。
入ってみると、片側の壁一面が本棚になっている。
「なるほど、なかなかの書物数だね」
「2階もなんですって。面白そうな本があれば、今度のお休みにも来てみたいと思いましたの」
翔も姫華も読書家で、学ぶ事を好む。
二人は奥の席に座り、紅茶を注文するとそれぞれ本を選んだ。
「…」
「…」
そして流れる、静かな時間。
全く会話する事なく本に集中している。
そうして1時間ほど経ちお互いに本を読み終えると、視線を合わせて頷き合い立ち上がった。
「どうだった?」
「静かで好ましい空間だと思いましたわ。本の種類もよろしいかと」
「そうだね、僕も好きな本が置いてあって好感が持てたよ」
店を出てから会話をする二人は、また来ようと話しながら帰路に着く。
「そうだ、先日父が新しい本を手に入れてくれたんだ。姫華が読みたがっていた、間山事件を担当した解剖医の自叙伝」
「まあ!ぜひ読ませていただきたいですわ」
「僕ももう少しで読み終わるから、明日持ってくるね」
「楽しみにしておりますわ」
何やら物騒な事件の会話で盛り上がる二人。
しばらく解剖学についてなどを語り合っていると、姫華の家に着いた。
「じゃあまた明日」
「ええ、付き合ってくださってありがとう」
翔が姫華を家まで送り、解散する。
それがお決まりの帰宅コース。
「姫華」
彼女の名を呼び、頬に手を添える翔。
「翔さん」
彼の名を呼び、小さな笑みを浮かべながら目を閉じる姫華。
触れ合うのは、それだけ。
「いつか別れが来るとしたら」
「それは、どちらかが死に招かれた時」
「「その時までは、共に」」
これは、ほぼ毎日行われる二人の儀式。
別れ際の口付けも抱擁も、二人には必要ないのだ。
翔と姫華の間にあるのは、恋心ではない。
誰よりも理解しあっている二人は、将来を誓い合った恋人同志。
神園学園高等部の進学科に通う一年生。
この町一番の大病院の院長を父に持ち、母も評判の良い精神科医。
成績優秀で将来有望、ルックスまで良い彼に熱視線を送る女子生徒多数。
しかし、声をかける勇者はいない…なぜなら。
「お待たせ、姫華」
放課後の校門。
下校していく生徒たちの視線を集めていた女子生徒へ手を振る翔。
振り向いた彼女の名は、神姫華。
翔の幼馴染であり、恋人だ。
「お疲れ様、翔」
「少し先生と話していたら遅くなってしまったよ、ごめん」
「構いませんわ」
腰まである髪をゆるく巻いて一つに結んでいる姫華もまた、男子生徒たち憧れの存在である美少女。
二人はお似合いの美男美女カップルなのだ。
「そうだ、今日は寄りたいところがありますの。ご一緒してくださる?」
「もちろんいいよ。じゃあ迎の車は無しかな?」
「ええ。歩いて帰ると伝えてありますわ」
大病院の跡取り息子である翔。
その恋人である姫華は、大手芸能プロダクション社長を父に持つお嬢様。
遠出した時に誘拐されたこともあるため、常に護衛のための監視がついている。
(…今日の護衛は佐々木さんチームか。いつもお疲れ様だな)
遠巻きに監視している人物達へチラリと視線を送る翔。
よく知られているこの街中で彼女に手を出すような命知らずは居ないはずだが、姫華の母親が心配して護衛を雇っているのだ。
「あまり遅くなると心配をかけてしまうね。行こうか」
「ええ」
二人はそっと手を繋ぎ、歩き出した。
「行きたいところってどこかな」
歩きながら尋ねる翔に、姫華はにこやかに答える。
「新しくできた、読書喫茶ですの」
「読書喫茶?」
「ええ、たくさんの本が読み放題の喫茶店ですって」
話しながら辿り着いたのは、一見するとごく普通の喫茶店。
しかし二階建てとなっており、大きめの店舗。
入ってみると、片側の壁一面が本棚になっている。
「なるほど、なかなかの書物数だね」
「2階もなんですって。面白そうな本があれば、今度のお休みにも来てみたいと思いましたの」
翔も姫華も読書家で、学ぶ事を好む。
二人は奥の席に座り、紅茶を注文するとそれぞれ本を選んだ。
「…」
「…」
そして流れる、静かな時間。
全く会話する事なく本に集中している。
そうして1時間ほど経ちお互いに本を読み終えると、視線を合わせて頷き合い立ち上がった。
「どうだった?」
「静かで好ましい空間だと思いましたわ。本の種類もよろしいかと」
「そうだね、僕も好きな本が置いてあって好感が持てたよ」
店を出てから会話をする二人は、また来ようと話しながら帰路に着く。
「そうだ、先日父が新しい本を手に入れてくれたんだ。姫華が読みたがっていた、間山事件を担当した解剖医の自叙伝」
「まあ!ぜひ読ませていただきたいですわ」
「僕ももう少しで読み終わるから、明日持ってくるね」
「楽しみにしておりますわ」
何やら物騒な事件の会話で盛り上がる二人。
しばらく解剖学についてなどを語り合っていると、姫華の家に着いた。
「じゃあまた明日」
「ええ、付き合ってくださってありがとう」
翔が姫華を家まで送り、解散する。
それがお決まりの帰宅コース。
「姫華」
彼女の名を呼び、頬に手を添える翔。
「翔さん」
彼の名を呼び、小さな笑みを浮かべながら目を閉じる姫華。
触れ合うのは、それだけ。
「いつか別れが来るとしたら」
「それは、どちらかが死に招かれた時」
「「その時までは、共に」」
これは、ほぼ毎日行われる二人の儀式。
別れ際の口付けも抱擁も、二人には必要ないのだ。
翔と姫華の間にあるのは、恋心ではない。
誰よりも理解しあっている二人は、将来を誓い合った恋人同志。
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